第9話:胸を張って、異世界を語ろう
野村泰紀さんの「多元宇宙論集中講義」を読んで、衝撃を受けました。
現在の物理学では、「
色々な種類の宇宙が、たくさんあるということですね。
あまりのショックに、短編を1つ書いて、応募したほどでした。
本話では、この「多元宇宙」に、どんなふうに創作意欲を刺激されたのかを、語りたいと思います。
■「多元宇宙論集中講義」の要点
まずは野村氏の著作から、私なりの解釈で、要点を紹介します。
①宇宙の加速膨張により、「真空エネルギーはある!」と判明
いわゆる「ビッグバン」で宇宙は膨張しています。
普通に考えると膨張のスピードは次第に遅くなりそうなもの。
物質エネルギー(重力)に引っ張られるからです。
ところが、膨張するスピードは、逆に速くなっていたのです(加速膨張の発見)。
物質エネルギーだけでは、この加速は説明できない。
それで、物質の他に、真空もエネルギーを持っているんだ、ということになりました。これが「真空エネルギー」です。
②エネルギー密度が一致するという奇跡
物質と真空の2つのエネルギーが宇宙にあるわけですが、両者の密度が一致していないと、宇宙は一気に膨張して吹き飛ぶか、収縮して潰れてしまいます。
でも、エネルギー密度って、すごく小さいんです。
そんな極小の数字同士が、都合よく一致するのは、奇跡のような出来事。
そのメカニズムが、どうにも説明がつきませんでした。
③実は、色々な種類の宇宙がたくさんある。
エネルギー密度を一致させるような、謎のメカニズムがあるのではなくて、
実は、色々な種類の宇宙がたくさん生まれているのです。
その中の、ちょうどいい具合に数字が一致した宇宙に、たまたま、私たちが住んでいるだけなんだ!
というのが、「多元宇宙論」なのだそうです。ほほぅ!
■超弦理論(superstring theory)
多元宇宙論を支える根拠の一つが、超弦理論です。
宇宙の基本単位は、点(素粒子)ではなく、ひものようなもの、と考える理論。
超ひも理論とも言われます。
個人的には、超「ひも」よりも、超「弦」の方が、響きが好きです。
超弦理論は、「相対性理論」と「量子論」を橋渡しする理論として、期待されています。
理論物理の世界では、「相対性理論」と「量子論」が二大巨頭なわけですが、「両雄並び立たず」で、この2つ、実は相性が悪い。
相対性理論は、天体の現象を説明できますが、ミクロな世界を説明できない。
逆に量子論は、ミクロな世界を説明できますが、我々が住む世界や、天体の現象は、説明できません。
で、ミクロから天体まで、両方を説明できる理論として期待されているのが、超弦理論なのです。
ところが、超弦理論の計算をすると、解が無数に出てきます。
今まで、それは変だなぁと思われていたのですが、「宇宙が色々ある」と考えたら、逆にすっきりしたのです。
解が複数あるのは、宇宙が一つじゃないことを表しているのだと。
■「胸を張って、異世界を語ろう」
色々な種類の宇宙があるわけですから、今の世界では無理なことが、やすやす出来る世界だって、ありそうです!
例えば、光の速度が全然違って、遠い星々にもあっさり到達出来る世界。
そうした、物理的な限界を取っ払うことが、出来そう。
物理的な特性は同じで、歴史だけが違うような世界も、考えられますね。
これまでも、異世界の物語はたくさんありましたが、根拠薄弱といいますか、想像の域を出なかった。
でも理論物理学で「あるらしい」と言われると、俄然、リアリティが増します。
これからは、「胸を張って、異世界を語ろう」と思いました。
■泡のように生まれる宇宙
宇宙は、泡のように次々と生まれているらしいです(インフレーション理論)。
そうすると・・・
この辺りから想像の世界に入っていくのですが、
水面に浮かぶ泡のように、そうした宇宙と宇宙がくっついて、一つになることも、あるのでは?
どちらの宇宙にもヒトが住んでいたら、どうなるんだろう?
世界が、何かに侵食されるように見えるのか?
ヒトとヒトの間で、コミュニケーションは可能なのか?
そんな想像を膨らませた結果、それが一つの物語となり、「さなコン」(小さなSFコンテスト)への応募と繋がりました。
宇宙が重なり合い、侵食される時、それは自然現象です。
だれか悪役がいて、それをやっつけたら終わる、ということはない。
そんな時、ヒトはどうすれば良いのか。
物語として、ちゃんとした解を、まだ見つけられていません。
なので、多元宇宙論は引き続き、わたしの創作意欲を、刺激し続けているのです。
創作への刺激、感想、その他の雑文 蒼井シフト @jiantailang
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