ダンジョンwithおこたじいさん~甘露な冷凍みかんに誘われて~

夢月みつき

第1話「勝男転生す」

ある秋の昼下がりの日、私はひき逃げをされ、交通事故で死んだ。

私が、最後に私が見た光景は、深緑色の葉が、舞い散る街路樹だった。

それが、私。猪俣勝男いのまたかつお(73)の人生の終焉であり、始まりだったのだ。



――ああ、死ぬ前に冷凍みかんが食べたかった――



私の体は、ふわふわと異空間に浮かんでいた。それは、束の間だったと思う。

どこからか、女性の声がする。

『猪俣勝男、貴方はこれから、自由に生きるのです。おこたになって』


「なんだ?おこたって…意味が解らない。」

『さあ、転生なさい。おこたじいさんよ』


白き光に照らされ、私が目を覚ますと。そこは、どこかの建物の中らしく

コンクリートの床にレンガ塀で囲まれた部屋だった。

「ここは、どこだ?私は死んだはずじゃ。」

しかし、何とも体が軽い。老人の体のわりにはだ。

とりあえず、私は自分の姿を見て、みようと鏡を探した。


すると、目の前に宙に浮く、鏡が現れたのだ。

目の前には、こたつが映っている。

「何だ、これは…。これが、今の私なのか?」

女性の声が言っていた。“おこた”って日本のこたつの事だったのか。


「なんと、こたつになってしまうとは…。これからどうすれば」

それにしても、暑い。この時期にこたつなんて。

私は、とりあえずこたつ布団を取ると、身軽になって涼しくなった。

「ああ、暑い。かき氷食べたいな。」


私は、そう思った。すると、目の前にかき氷機が現れた。

「おお、凄い」

どうやら、私が念じると物が出せるらしい。

まだ、どんな物が出せるのかは不明だか…。

その瞬間、頭の中に声が響いて来た。


(助けてくれー)

(もう駄目だわ)


どこからか、助けを求める声がする。

それは、どこなのか。どこにいるんだ!知りたい!

そう、私が念じると瞬時に私は瞬間移動をした。


次の瞬間には、私は二人の青年と少女の目の前にいた。

二人は、モンスターとの戦いで消耗しており、傷ついて倒れている。

そして、その周りには今にも青年達を喰い殺さんとモンスター達が群がっている。

私は、モンスター達を一瞬にして蹴散らし、二人を介抱した。


「おい、しっかりしろ!」

私は、二人に声を掛けた。

しかし、二人は動けずうめいている。

私は、とっさに思いついた。



「そうだ。このかき氷を食べさせてみよう!」

私は、かき氷機でいちごのかき氷を作り、私が前世に、好物だった冷凍みかんを添えて二人に食べさせてみた。


すると、二人の体が淡く光って傷も全回復し、青年と少女は起き上がった。

「あんたは何なんだ?モンスターか」

青年が聞いて来た。


「私は、モンスターではない。おこたじいさんと言う者だ。」

少女が問う。

「貴方が私達を助けてくれたのですか?」

「ああ、そうだ。このかき氷でな。さあ、食べなさい。元気になるから」

私はそう言うと、青年と少女にかき氷を勧めた。


青年と少女は、かき氷を美味しそうに食べて元気を取り戻した。


「ありがとう。俺は、勇者レックス」

「私は魔法使いのマーサよ。ありがとうございます。」


「「よろしく。おこたじいさん。」」

レックスとマーサは、私に感謝して塔を出て行った。


「しかし、おこたじいさんとはなぁ…。欲を言えば、生身の体で若い方が良かった。」

私は溜め息を吐き、部屋に戻った。

私が何となく、テレビを観終わり、電源を消すとテレビに映っていたのは、白い髪の青年の姿だった。


「つっ…!いわゆる世間で言う。チートと言うモノか?これは……。」

どうやら、私は生身の青年の姿になれたらしい。しかも、無駄にイケメン、イケボ。

しかし、気を抜くとまた、おこたじいさんに戻ってしまうらしく。


その日から、私は二つの姿を生かして、ダンジョンに来る冒険者達を助けることにした。

しばらくして、レックスとマーサが再び、ダンジョンを訪れた。


あれ以来、私とかき氷。冷凍みかん添えが忘れられなかったらしい。

私達は、かき氷を食べながら談話をした。




-終わり-


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「ダンジョンwith-ウィズ-おこたじいさん~甘露な冷凍みかんに誘われて~」登場人物紹介


1. おこたじいさん(猪俣勝男-いのまた・かつお)

散歩中に交通事故で亡くなり、異世界のダンジョンになぜか、生きたこたつとして転生してしまった。

73歳のおじいさん。ダンジョンで困っている。冒険者達を助けるのがつとめだと思っている。

ダンジョン中をテレポーテーションしてパトロールしている。

おこたで休むとHPとMPが全回復する。冷凍みかんを出してくれる。

夏は、おこたではなく、冷凍みかん添えのかき氷屋をしている。

元は、作者が学生の頃に考えたキャラ。雑誌にはがきが掲載されている。



2. 勇者レックス

ダンジョンで困っている所へおこたじいさんに助けられる。

冷凍みかんが好き。



3. 女魔法使いマーサ

ダンジョンで困っている所へおこたじいさんに助けられる。

いちごのかき氷が好き。

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最後までお読みいただきありがとうございます。

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