歪んだ世界を煌々と照らす紅焔から、目が離せない!

忍の里で妹を殺されたくの一・紅は謀反を起こし、長に処刑された――はずが、なぜか別の人間の身体に転移していました。
目覚めたのは乾いた土地の匂いがする東洋風の世界。異国情緒漂うメディナ帝国で出会ったのは、獣人族のガルガ。この身体の持ち主であるアイヤのイケモフな年上の旦那様。

忍びの里からアラビアンな国へ転移するので、序盤は文化のギャップを楽しみながら物語に没入することができます。何より紅が転移したのは心臓に持病を持つ病弱令嬢、アイヤ。ルビーに魂が残る彼女へ身体を返そうと、まずは貧弱な肉体を改造するところから始まる脳筋の紅が愛おしい。ベッドの美しい天蓋で懸垂する唯一無二のヒロインですが、紅の根っこには妹を想う優しい気持ちがあります。彼女のまっすぐな優しさによって、メディナ帝国の暗部が明らかに。街に咲いた巨大な花・シュクフクから成る四百年に渡る歪な生態系がそこにはありました。

男尊女卑の忍の里で妹を殺された紅がメディナ帝国で目にしたのは、人間の女しかヒトと呼ばれない現実。男は地下へ押し込められ、非人道的な生活を送っています。その姿に産み子とされた妹を重ねた紅はこの国を変えようと奮起するのですが、そこに立ちはだかる大王妃サファイア。アイヤの姉にして、本作の絶対的な障害。このキャラが本当に濃ゆくて、強大で、凶悪で。だって実の妹であるアイヤの顔を焼いちゃうんですよ……。紅に無理難題を吹っ掛ける12話は必読です。

メディナ帝国の軍人で獣人族を率いるガルガや、その部下である梟族のオウル、狐族のフォクスなど、愉快なモフモフたちも勢ぞろい。そう、本作は上質なモフモフも楽しめます。個人的にはツンツン美少年オウルさんがツボです!人間の女性と比べて立場が弱い獣人族たちの奮闘も忘れてはならないポイントですね。


炎を宿した紅と優しさゆえに虐げられたアイヤ、そしてガルガが出会ったのは間違いなく運命です。紅はなぜアイヤに転移してきたのか。その答えに行き着いた時、きっと物語の世界は鮮烈に変わっていることでしょう。キュンだけではなく手に汗握るワクワク、そしてモフモフが楽しめる「世界を変える運命の恋」を、ぜひご堪能ください!

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