第27話

 自分の席に着き、腕時計を前に置く。携帯電話の電源をオフにする。



 ー試験開始ー



 試験はあっという間だった。僕の全部を試験に注げた。よれよれになりながら家に帰る。



 家に帰ると服をぬぎ、布団の中に入って眠りに眠った。起きると幻聴が聞こえてくるのでずっと眠っていた。まるで熊の冬眠みたいに。



 そうこう眠り続けているうちに世の中が動いていたのだろう。ある日、祖母がどたどたと部屋に入ってきた。

「蒼、大学から結果が来たみたいだよ」

 そうして封筒とはさみを渡された。

「開けてみんさい」

 開けてみると、そこには合格の文字とともに、入学手続きの用紙が入っていた。

「受かっていたよ」

 その場で僕は男泣きにうえーんと泣きに泣いた。



 大学時代は楽しかった。レポート作成もプレゼン発表作業も何もかも楽しかった。夏休み柳田国男全集を借りては読みまくっていた。

 そして、大学を卒業後、会社に就職しながら小説を書き人生を写し取るという夢を追い続けていた。その節20何年。統合失調症を抱えて思うのは、

「障害を抱えて社会に必要とされなくても必要とされないからこそ芸術を作ればいいのだ」

 と。

 蒼はそうして今日も小説とイラストを作り続けるのだった。


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―幻影夢々中伝(げんえいむむちゅうでん)―統合失調症と発達障害を患った青年が一冊の本を読み、芸術に目覚めたが芸術の作り方がわからなくて大学に行き、勉強し、芸術家になるまで 澄ノ字 蒼 @kotatumikan9853

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