5.テストの御褒美(これからも……
//SE ノックの音。
扉が開く。
「やっほー。来たよ」
「うん。今日、成績表貰った」
//SE 光が鞄を置き、近くのマットに座る音。
「それで、ね」
「約束したと思うんだけど……『お願い一つ聞いてね』って」
「……あの話なんだけど……ごめんね。私……私…………」//やや落ち込んだ声。
//SE エアコンの音が響く。
顔を伏せた光。
「フッフッフッ……」//勢いよく、顔を上げる。
「見よー! この輝かしい成績表をっ! 学年順位――過去最高の3位! 誰がどう見ても、これは『良い順位』!!」
「――え? 『インチキだ! 反則に過ぎる』?」
「ふ~ん。そんなこと言うんだぁ。私は、貴方に習ったことを忠実に再現したんだけどぉぉ? お願い、聞いてもらうから、ね♪」
//SE 立ち上がり、光が貴方の傍へ。
成績表を手渡すや、ベッドに飛び込む。
「ふふふ~♪」
「私はやれば出来る子なんだぁ」
「担任の先生にも『今の成績なら推薦は問題ない』って言われてるしね。あ、今晩、ママとパパにも伝えるつもりだから、よろしく」
「え? 『本当にいいのか』?」
「…………む~」
//SE 上半身を起こし、光がクッションを抱きしめる。
不満そうな声。
「どーして、そんなこと言うのっ」
「私は……2年間だけでも、貴方と一緒の大学に通いたいよ?」
「貴方はそうじゃないの?」
「…………む~。『私の可能性』とか言ってぇ」
「ね、こっち来て」
「い・い・か・ら!」
//SE 椅子が動く音。
貴方もベッドに腰かけると、光がにじり寄って来る。
「はい、そこに寝転んでください」
「貴方に拒否する権利はありません」
//SE 衣擦れの音。
光が貴方を覗き込む形に。
「えへへ……こうやって膝枕するの久しぶりだね」
「あのね、貴方が私のことを大切にしてくれてるのは嬉しい。とっても、とっても嬉しいんだよ?」
「でもね」
「私は、貴方と一緒がいい」//耳元で囁く感じで。
「前にも言ったと思うけど、私は女にしては背が高いし、容姿もこうだから……女子高だと目立つんだと思う」
「……貴方は普段の私しか知らないから、あんまり信じてくれないけど、学校だと、本当にしっかり者で通ってるんだよ?」
「だけど」
//SE 光が貴方の髪を優しく撫でる。
「やっぱり……ちょっとだけ…………ほんのちょっとだけ疲れちゃいもするんだー。勿論、楽しいし、あの子達のことも大好きなんだけどね」
「私は貴方と同じ大学に行く。もう決めたから。幾ら、貴方に言われてももう変えない。私が、案外と頑固なこと、貴方が一番知ってるでしょ?」
「はい、終わり! 交代してー」
//SE 光が寝転がる。
もぞもぞと動き、貴方の膝に頭を載せる。
「えへへ♪」
「考えてみると、小っちゃい頃から、貴方にはこうして膝枕してもらってる気がするね」
「――え? 『小さな頃はしないと泣いて大変だった』??」
「そ、そんなことないもんっ! え、冤罪だよっ!」
「……もう」
//SE 光が手を伸ばし、貴方の頬に触れる。
甘えた声。
「意地悪な貴方のことは嫌ーい」
「こういう時、『王子様、よろしいんですか?』なんて言ってくる貴方のことも嫌ーい」
「――……お願い、聞いてくれる?」
「あのね、耳を貸して」
「私と、これからも……ずっと仲良しでいてください」//囁き声で。
「む! どーして、笑うのぉぉ? わ、私は真剣なのっ!」
「……ただでさえ、貴方は変に脇が甘いっていうか、うちの学校の子達に見つかったら、絶対大変なのに。はぁ……私の苦労も知らないでぇ」//ぶつぶつと小声で。
「と・に・か・く!」
//SE 光が貴方を引っ張り、隣へ倒す。
間近に悪戯めいた少女の笑み。
「お願い、絶対聞いてもらうからね?」
「え? 『それだけでいいの。実質お願いないようなものだけど』??」
「え、え、ええ」
「ち、ちょっと……ちょっと、待ってっ! 考えるからっ!!」
「えーっと……えっと。買い物は、一緒に行ってる。料理は――休日は、少なくとも一回は一緒。この前は、お泊りもしたし、勉強も教えてもらってる」
「カ、カウントしないでっ! 意地悪禁止っ!!」
//SE 真剣に考え込む光へ貴方が手を伸ばす。
そして。
「――ふぇ?」//光の呆けた声。
「い、今……わ、私の頬に…………キ、キス……………」
「う~! うう~!! ううう~!!!」//至近距離で光が、貴方の胸をポカポカ。
「……ど、どうして、いきなり、そういうことするのぉ!? こ、こういうのは、も、もっと、その……雰囲気を! 嫌じゃなかったけど。……けどっ」//恥ずかしさ半分、不満半分。
//SE もぞもぞと光が動き、貴方の胸に頭をくっつける。
甘え切った囁き声。
「――今度は、不意打ちしないで、ね?」
「優しい貴方が大好きです。これからもどうかよろしく」
学校では王子様。だけど、貴方の前では女の子になりたい幼馴染の話 七野りく @yukinagi
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