第2話 命名
まだ12の僕は
最新鋭の設備が取り揃えられたこの
最奥の部屋の前に来ると柳原は僕に個人識別番号を入力させた。
「ここの
「有難う御座います、柳原さん。」
さてと。僕は早速、個人識別番号を入力した。個人識別番号には顔、指紋、さらには遺伝子まで記録されたこの番号。これを入力すると、何処からともなく機械の
約一分程度の
中には無数の硝子菅と護謨菅。歯車や大きな機械。どれも見た事の無い物であった。
「さあ、國友くん。中へ。」
柳原は僕の手を引いて鉄扉の中へ向かった。とても広い空間だ。歩く度にコッ、コッと音が響く。どれも怪しいものばかりで、僕は空襲とはまた違った恐怖を覚えた。
僕は部屋の隅にある大きな円柱状の水槽の前にやって来た。
硝子の中は液体で満たされ、ちょうど中央あたりに無数の細い護謨菅に繋がれた、何かがいる。柔らかな茶色の長髪をした、裸の少女であった。体を丸め、その液体の中でスヤスヤと眠っているようである。僕は驚いて、思わず赤面してしまった。
「うわっ?!何なのですか、彼女は?!」
柳原はそんな僕を見て少し笑みをこぼした。それは少し小馬鹿にしたような、どこか不快感を覚える笑みであった。
「國友くん、これこそが
僕は柳原と少しばかり遣り取りを交わしていると、彼女の視線に気がついた。
彼女はその瞳でじっと僕を観察している。何を考えているのか分からない表情は、少し人間らしく無く、少し奇妙に感じられる。
「柳原さん。この子に名前はあるのですか?」
僕はふと、柳原に
「これに名前はない。一応、個体識別番号は AL-12-000 と聞いている。」
同じ人のようなのに、名前がないのか。ならば僕が名付けよう。
AL12、、、ALIS。
そうだ、アリスとしよう。おそらく000は、初めて作成された個体という事。始祖のアリス、シソノアリス、、、。
「
僕は、思わずその名を口にした。僕は、硝子越しにその子に叫んだ。
「 AL-12-000 なんかじゃない。君は『
硝子の向こう側の
水瓶の少女 / フラスコのアリス Aris @urasuraimusan
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