第8話

 趙国の南半分を、楚軍がとっちゃったよ。

 とりあえず、北上はしない。王翦に進軍停止を命令する。


 これ以上攻めると、北から李牧りぼくが来る。

 李牧も今や、爺さんだ。年取ってるから、下の年代に任せよう。

 あ~、司馬尚しばしょうもいるんだった。扈輒こちょうもいるよね。危ない、危ない。

 趙国は、これ以上攻めない方がいいか。

 邯鄲が近くなったけど、これ以上攻めなければ、反撃を食らうこともないだろう。


関係が悪化したら、最悪、廉頗将軍を使うかな。祖国になるけど、滅ぼしてくれるだろう。


 韓国と魏国は、大人しくなった。秦国が、なにやらきな臭い。

 咸陽奪取を、狙ってんのかね?

 まあ、疲弊したら、滅ぼしちゃおう。



 中華全土が、膠着状態になって、数年が過ぎた。

 楚国は、考烈王が突然逝去した。


 さ~て、お家騒動だな。

 嫡子がいないので、弟たちの中から選ぶことになる。

 俺の推しは、もちろん昌文君だ。


「こんな時のために、長年内政を学ばせて来たんだし。昌文君で良くね?」


 俺の考えを口にすると、重臣全員が首を縦に振った。

 もう宰相である、俺こと春信君に、逆らう人はいなくなっていたな~。表立ってだけど。

 水面下で動いているのは、知ってんだよ。泳がせているだけなんだ。

 俺には、優秀な食客がいるんだよね。密偵をあぶり出して、公開処刑もしているし、動きはないかな? 処されたくないよね。


 楚国の重臣で俺に頭を下げない人は、いなくなったな~。

 戦争では負けなし。

 内政も充実させている。

 俺の抱えている食客も怖いだろうしね。

 他国も、俺を恐れてか、楚国に攻め込むことはくなった。


「戦国四君って言ったら、リアルタイムで、これくらい評価されたいよね~」


 史記の春信君とは、大分違って来たぞ!





 考烈王の葬儀を盛大に行う。ちなみに、本来であれば、俺はここで殺されることになる。李園はいないけど、敵対勢力は多い。

 でも、今俺は警護兵を多大に引き連れている。食客の朱英の言葉を重用して、俺の身辺は護衛兵で溢れているのだ。


 無事葬儀が、終わった。

 俺は……、暗殺されることはなかった。


 王様が死亡すると、他国が攻め込んで来るのが、戦国の世の常だ。

 国境の守備隊に確認するけど、何処も攻めて来なかった。

 うん。楚国の強さが、他国に伝わってるよね。



 今日は、昌文君が即位する日だ。

 新楚王誕生の日。王命は後から決めよう。


「春信君……、そちを褒め称える言葉が見つからんたい。【年老いて、益々壮んなるべし】とは、そちのことたい。戦国時代最高の宰相は、そちたい」


 おう? 評価が180度、変わってんじゃん。つうか、ことわざが、変わってるよね。

 とりあえず、決断は即決だったし、落ち度はなかったよね?

 もう初老かもしんないけど、キレッキレの判断下してるよね?

 細かい失敗は、大きな成功に覆い隠されるので、歴史書には書かれないはずだ。



 司馬遷は、俺のことなんて書くのかな?

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【当断不断】と言われたくない~春申君は即断即決します~ 信仙夜祭 @tomi1070

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