Mission1-1 リーベルラント防空戦
鳴り響く警報と、慌ただしく駆け回る人々で騒がしいハンガー内でシエルは離陸の準備を進めていた
訓練用のセンサーや記録装置などの装備を外し、実弾兵装へと換装する
装備したのは全て対空兵装、首都が攻撃されている以上敵地上戦力が出てくることは考えるべきだが、確定している訳ではないことと、使用するヴァルキリーフレーム "VFC-27SM"とシエルの得意なことを考えれば、この選択が1番適切と言えるだろう
「これ!貴女の機関砲!」
武装を取り付けていた整備士が、最後にシエルの愛銃であるGSh-13-1機関砲を運んでくる
シエルは機関砲を受け取ると、背中のメインユニット横に装着されたヘリカル構造のドラムマガジンからベルトリンクを引き出し機関砲下の挿入口に装着、コッキングレバーを引いて最初の一発をチャンバーに装填する
「準備ができたなら直ぐに管制官に指示を仰いで!僚機を待ってる暇はない!滑走路が潰される前に一機でも多く飛んだほうがいい!」
「了解」
整備士が安全位置まで離れたことを確認してから、ジェネレーターとエンジンを始動を開始する
圧力をかける事で二酸化炭素を消費し、酸素を生成しながら自己増殖するという性質を持ったフェアリアム鉱石
それを触媒とし、ジェネレーターで生み出されたフェアリアム粒子と酸素をエンジンに送り、そこでまた圧縮、空気と反応させることでさらに自己増殖を促し、体積を急激に増加させ推進力を生み出す
しばらくして十分な出力を確保したことを確認すると、整備士に始動用の電源ケーブルを取り外してもらい、管制塔に周波数を合わせて離陸準備が整ったことを報告する
「タワーこちらドルフィン5、タキシング準備完了、2番ハンガー内にて待機している」
《タワー了解、ハンガーを出て滑走路へ迎え、シーヴァルチャー4とステラ1が君の後ろに続く》
「了解」
管制官からの指示を受けてハンガーから出る
目の前の滑走路からはちょうど他のヴァルキリーたちが飛び立っていく
その様子を眺めながら滑走路へ向かっていると、後ろから管制官の言っていた2人のヴァルキリーが後ろへ並んだ
一人はリーベルラントの所属を示すRRのテイルコードが入っているが、もう1人は海軍機であるVFF/A-18Eを使用しているため、空母機動部隊の所属なのがわかった
海軍機は式典に参加する予定だった、辺りを見回せば他にも海軍機がちらほらと目に入る
《タワーよりドルフィン5、そのまま滑走路へ侵入し、待機せよ》
管制官の指示通り、滑走路へと侵入しシエルが真ん中、他2人がそれぞれ左右の斜め後ろに並ぶ形で待機
横を見れば、爆撃を受ける首都が見える
煙は都市全域に広がり、状況が刻一刻と悪くなっているのがよくわかった
あそこにいる家族は大丈夫だろうか
今直ぐにでも離陸して首都へと向かいたい気持ちを抑え、離陸許可が出るまでフレームの動作確認を行う
エルロン
フラップ
ラダー
エアブレーキ
スロットルの応答
火器管制システム
フェアリアム制波装置
最後にシステムの自己診断プログラムを走らせ、オールグリーンと帰ってきたタイミングで管制官から離陸許可が出た
《ドルフィン5、離陸を許可する、シーヴァルチャー4及びステラ1はドルフィン5に追従して離陸、離陸後は高度1万2000フィートまで上昇、ホールディングエリアへ向かえ、以後は空中管制機からの指示を受けよ》
制波装置を起動
ジェネレーターに溜まり続けるフェアリアム粒子を用いて、風圧と敵弾から身を守るシールドを形成する
後ろの二人に合図を送ると同時にスロットルを全開、エンジン内のフェアリアム粒子に点火、アフターバーナーを起動
パーキングブレーキリリース
生み出された莫大な推力に背中を押され、どんどん速度を上げて行く
滑走開始から数秒で離陸に必要な速度に達すると、揚力という見えざる手により、シエルは重力から解き放たれる
ある程度高度を上げたら足の裏のギアを収納し、ギアユニットがふくらはぎ裏に移動する
次に脚を後ろに伸ばして、その脚にエンジンユニットを接続することで飛行姿勢へと移行
さらに高度を上げ、ホールディングエリアで待機するヴァルキリー達と合流した
緊急で空に上がったこともあり、シエルのように部隊全員が揃ったところは少なく、編隊を組むことなくそれぞれぶつからないようバラバラに飛んでいる
現在交戦域では哨戒中だった首都近辺の部隊と、陸軍の高射砲部隊、港に停泊中だった第八艦隊が対空戦闘を行っていることもあり、指示を待たずに交戦域に向かっていったヴァルキリーも何人かいたが、多勢に無勢、すぐにシグナルの発信を停止した
《こちら空中管制機オウルアイ、防空任務に上がった各機へ告ぐ、状況が混乱しているためこれより臨時編成を行う、個別に指示に従え》
そこに到着したAWACSがバラバラだった部隊の再編を始める、もちろん武装や使用機材、個々の所属や能力を考慮してる余裕はないため、ほとんどは近くにいたからぐらいの理由で組まされる
出来上がった部隊は、初対面となるヴァルキリーとの連携に不安を覚えつつも、すぐに進路を首都へ向け迎撃に向かっていった
《ドルフィン5、君はミーティア隊に入れ、これからのコールサインはミーティア6だ》
AWACSからミーティア隊の位置情報と識別データが送られてくる
配置先は顔見知りである訓練中一緒に飛んでいたアスタ大尉の部隊だということに、シエルはひとまず安心する
結局式典用のコールサインは使わなかったなと思いながら、指示通りにデルタを組むミーティア隊と合流して1番後ろに並んだ
コールサイン上は6番機だが、シエルを含めて集まったのは4機だけ
テイルコードを見ると、ミーティア2とハイライトされた人物は元からミーティアの所属で、ミーティア5とハイライトされているもう1人は別の部隊の所属らしい
《なるほど、お前なら心強い、エレナはシエルの後ろについてエレメントを組め》
《了解〜、噂は聞いてるよ、よろしくね〜》
柔らかい雰囲気のエレナと呼ばれたミーティア5が、こちらに手を振ってくる
それに小さく手を振り返すことで応える
《おっ、意外とノリがいい、噂も当てにならないね》
エレナが驚いたような顔をする
カトレアも言っていたが一体どんな噂が流されているのか、シエルは今更ながらすこし気になってきていた
《私語は慎め、ミーティア隊の交戦を許可する、目標は首都上空の敵性航空機》
《了解、やるぞお前ら》
AWACSから交戦許可が下りると、すぐに体をひっくり返して急降下に入った隊長機に追従する
《シエル、お前は好きに動いていい、それがお前には1番やりやすいだろ》
「了解」
自由に動いていいと言われたシエルは、編隊から離れると住宅街へ向けて飛んでいく真っ白な爆撃機の方へ進路を取る
護衛機が2機ついているが、無視して爆撃機をロックオン
「FOX3」
発射コールと同時にウェポンリリース
爆撃機はチャフをばら撒くが意味を成さず、ミサイルが胴体に突き刺さり爆発、中の爆弾にも誘爆して爆撃機は木っ端微塵に吹き飛んだ
《ナイスキル!》
「護衛機接近、右をやる」
エレナからの称賛を聞き流し、やっと動き始めた護衛機を狙う
接近するシエルに気づいた護衛機は、反転してヘッドオンで迎え撃つ形を取った
機関砲の射程に入る直前、一瞬のRWR警告がすぐにミサイルアラートに切り替わる
チャフをばら撒きつつ、バレルロール
速度が乗っていなかったミサイルは、シエルの動きに追従しきれずに外れた
そのままバレルロールの機動をしながらピッチの角度を上げ、無理矢理敵機を射線に捉える
相手が回避機動を取るが、もう遅い
もう一機はエレナが絡んでいるため援護もない
トリガー
機関砲弾はシールドを貫通し、翼を喰い荒らす
片翼を失った敵機はすぐに安定を失い、錐揉み状態に陥った
そのまま誰もいない公園へ墜ちたのを確認すると、エレナの方を見る
向こうも終わったらしく黒煙を噴きながら墜ちていく敵機が見えた
旋回しているエレナ機には特に異常は見られない
《シエル!》
安堵したのも束の間、エレナの緊迫した声でフレアを出しながら急降下、失った速度を稼ぎつつ回避機動
身体のすぐ横を白煙が通り過ぎて行き、地上で爆発を起こす
白煙が来た方へ振り返ると、2機の敵機がこっちに向かって降下してくるのが見えた
自身が回避した流れ弾で、市街地になるべく被害を出さないよう、近くにあった川の水面スレスレを飛行する
外れた赤い色の曳光弾が近くの水面に着弾しては、小さな水柱を作る
今はまだ、着弾した方向とマズルフラッシュに合わせて回避機動を取れているが、銃撃の度に精度が上がってきている、エレナが援護のためにこちらに向かってきているが、いつまでもこうしていられない
カウンターメジャーの類をありったけ焚きつつ、急上昇を行う
急に上昇を始め、しかもアフターバーナーを使わず速度を落としていくシエルに、敵機は血迷ったかと思いながら追撃をかけ、その距離を縮めていく
「ここ」
敵機がシエルを捉える直前に、スロットルを完全に閉じ、フラップを格納、少しロールしつつ右いっぱいにラダーを動かし、機首をめいっぱい上げて空気を全身で絡め取り一気に失速
一瞬で反転して敵機と正対する
目に入ったのは突然のことに驚いている敵の顔
「さよなら」
メインユニット左側に取り付けられたケースからブレードを取り出し、一瞬で加熱された刃を振り下ろす
シエルの刃に対して、今持っている中で1番頑丈な機関砲を盾がわりに突き出すが、それごと頭から股にかけて溶断される
その光景と勢いそのままにこちらに斬りかかろうとするシエルに怖気ついた敵機は、上昇をやめて離脱する
「逃がさない」
ブレードを格納して追撃に入る
立場が逆転して今度は水面スレスレを飛ぶ敵機を追いかける
撃たれまいと左右に機体を振っているが、方向転換を開始した直後、慣性で動きが鈍くなる瞬間を狙って発砲
砲弾は命中し主翼を穴だらけにする
翼としての役目を果たさなくなった主翼はただの重りとなり、それに引っ張られ水面に激突した敵機は、そのまま水面を水切り石のように跳ね、最後に爆発した
《スプラッシュ4…、噂以上じゃん…本当にルーキー?》
隣に並んだエレナが、信じられないといった様子でこちらを見る
噂をあてにしてるのかしてないのかどっちなのか
「空を飛びたいから、努力した」
とりあえずそう答えた時、無線から隊長の声が聞こえてきた
《お前ら聞こえるか?悪いが港の上空まで来てくれ!数が多すぎて対応しきれん!》
港のある方へ目を向けると大量のミサイルの噴煙と飛行機雲、そして爆煙が見える
《どうやら全体的に押されてるみたいだね、どこもかしこも増援要請してる》
戦術マップを開くと、確かに味方の数は目に見えて減っている
この住宅街エリアはそもそも敵がそこまでいないこともあって押し返したが、中心街と港湾エリアが特に旗色が悪い
無線に耳を傾けると、あまり聴きたくない情報が聞こえてくる
被弾しただとか、部隊員が1人も見当たらないだとか
空だけではなく、陸地も大変な状況らしい
市街地では避難する民間人で大混乱、海では港湾から脱出しようとする艦隊が足止めを受けている
高射砲部隊に至っては基地に展開している部隊以外文字通り全滅したらしい
《どうする?》
「とりあえず隊長の援護に」
《了解、追従する》
高度を上げつつエレナと港へ向かうことにする
市街地には仕事に出た自分の親と学校で学ぶ妹が取り残されているかもしれない
しかし、この戦争は多分これからも続く
それなら、空母の脱出を優先した方がいい
雲の上を抜けたタイミングで港の真上に到着する
下では艦隊による対空戦闘と同時に戦闘機による制空戦が行われており、凄まじい量の白煙が次々と生まれていく
《すごい弾幕、誤射されそう》
「いこう」
レーダーの反応から味方の残存機はミーティアの2機と他の隊の4機の計6機
ただ敵機はその3倍はいる
とはいえそれで逃げ出す選択肢もなく、機体を背面にして急降下、味方の後ろについていた敵機に機関砲を撃ち込み引き離す
《!、ありがとう助かったよ!》
《来たなシエル!シェルカーとスピアは離脱して編隊を組み直せ、それまではこっちで抑える!》
《わかった、ミーティア以外の残存機はシェルカー2のところに集まれ!再編成だ!》
助けた味方機が離脱していく、それを追撃しようとする敵機にミサイルを撃って牽制、回避のために体勢を崩したところをエレナがすかさず機関砲で仕留める
《ど〜お?私も結構やるでしょ》
「うん」
実際エレナの実力は高く、軍内でも割と有名な部類である
これはエレナが古参のベテラン兵であるが故だが、他人に興味がないシエルはそんなことは知らない
《イチャつくなら後にしろよ、お前らは艦隊に取り付く攻撃機をやれ、艦隊のデータリンクもあれば余裕だろ?》
「了解」
湾口付近で対空戦闘を続ける艦隊の方へ向かう
港から湾口に至るまでに多数の艦艇が炎上、戦闘不能になっている
幸いにも、湾の水深が浅いおかげで沈没ではなく着底したことで、脱出できた乗組員は多い
「こちらミーティア6、下の艦隊へ、ミーティア5と共に直掩につく」
《ミーティア6!こちら防空駆逐艦『フォールムーン』、無理やり突破するから艦隊前方から来る奴らをお願い!》
「わかった」
《こちら電子支援艦『バンドル』、上空の友軍機へ、本艦はデータリンクによる支援を行っています、活用してください》
《オウルアイよりミーティア6及びミーティア5へ、電子支援の範囲をレーダーに表示した、その範囲内にいれば電子支援艦の並列処理によりミサイル及びレーダーの性能が向上する》
レーダー上に電子支援艦を中心に青いエリアが表示される
この中にいれば電子支援が有効らしく、ECMによりノイズの走っていたレーダーが見違えたようにクリアになる
《前方から2機!低空で侵入して来る!》
「FOX3」
海面スレスレを飛びECMを焚きながら突っ込んでくる2機を、影響が無効化されたレーダーで捉え、マルチロックで攻撃
放たれた2発のミサイルはレーダーではなく支援艦のレーザー誘導により、チャフに騙されることなく正確に目標へ突っ込んだ
《6機目!これでエースだよシエル》
「まだ来る」
軍内でも保有者がかなり少ないACE in a dayの称号と100年振りのエースの誕生にエレナが喜ぶが、シエルは特に意に介さず次の敵機へ向かっていく
攻撃機が2グループと、その護衛機が4機ついて来るが
《テメェらの相手はこっちだ!》
護衛機のグループに隊長とミーティア2が突っ込んでいく
すれ違い様に1機ずつ墜としたことで、残りの護衛機も隊長達の相手を余儀なくされる
《私は左のグループをやるね、FOX1!》
エレナが左のグループに攻撃し始めたと同時にシエルもブレードを展開しつつ右のグループへ突っ込む
敵機が回避行動に入るが逃さない
エンジンユニットのロックを解除し、脚から外すことで推力の向きを自由に動かせるようにする
そしてジェネレータに蓄積されたフェアリアムを消費し、一瞬で推力を爆発的に向上させるブーストを使うことで、敵に向かって一気に加速
全身に襲いかかる負荷に耐えつつ、敵機に肉薄して主翼を切り落とした
そのままロールして、通り過ぎようとする敵機に発砲
尾翼を吹き飛ばされた敵機は海面へと叩きつけられる
ブーストは本来地上戦用のものであり、応用の幅が広い反面、一歩間違えれば自身がバラバラに吹き飛ぶ危険な行為
誰もやらない、というかやるなと言われている機動故に、敵機は何の抵抗もアクションも起こせなかった
《わーお》
アスタが感心したような声を出す
失速した機体を立て直す為、再びブーストで無理やり加速、姿勢を立て直した
《とんでもない無茶するね〜、見てるこっちがヒヤヒヤするよ》
もう片方のグループを片付けたエレナが心配そうな様子でシエルの隣に戻ってくる
そういうエレナも、本来機械が行うセミアクティブミサイルの誘導を、自分自身で誘導することで、本来一発ずつ誘導しなければならないミサイルを二発同時に命中させるという芸当を行なっていた
この技はヴァルキリーフレームの複雑なシステムに介入するうえに、ミサイルの航法制御を全て自身で行わなければならず、ミサイルを正しく飛ばすには精神に相応の負荷を要求する
現在でも技能として存在はするものの、2発同時は並の人間がやれば脳を焼き切られ廃人になりかねない離れ業である
《第八艦隊、ミーティアが道を開いた、この隙に離脱せよ》
《全艦最大戦速!ミーティアが開けた穴が塞がれる前に行くよ!》
AWACSが前方が手薄になったことを伝えると、艦隊は一気に増速し港からの離脱を図る
《多少の被弾に構うな!湾を抜ければ対空戦闘に全力を出せる!》
《イージスの役目を果たせ!、敵弾の間に入ってでも空母を守るんだ!》
港湾から、5隻の艦が離脱していく
今まで市街地への被害を懸念して、制限がかかっていた火器も周りに建物がなくなり全力で動き出す
数多の対空機関砲の弾幕により、ミサイルどころか敵機すら近づけなくなっていた
《こちら第八艦隊旗艦「グレイゴースト」艦長、リリィ・ワーグナー、生き残った艦へおめでとう、そして活路を開いてくれた上空の友軍に感謝を》
《こちらシェルカー1、再編成が終わった、ここからの艦隊護衛は私たちが引き継ぐ、私たちの家を守ってくれてありがとう、ミーティア》
《どういたしまして、礼はうまい酒で頼むぞ!特にシエルには特別高いやつな!》
《はははっ!わかった、用意しとくよ!》
戻ってきたシェルカー隊に護衛を引き継ぎ、離れていく艦隊を見守る
どうやら追撃はないようだ、艦隊の対空ミサイルが近づいてくる敵機ではなく、いまだに交戦が続く市街地へ向かっていく
《全くどっからあんなに湧いてきたんだか…敵の所属はなんだ?グラン連合の連中か?》
隊長が心底うんざりしたようにつぶやく
グラン連合は100年ほど前にシエル達の暮らす国、ユニリアと戦争した国家
しかしとある事件により現在はアダプターへの対処だけで手一杯な小国だとシエルは記憶している
《オウルアイ、敵の情報はなんかないのか》
《今やっと上からの回答が来たところだところだ》
《そりゃちょうどいい、とっとと発表してくれ》
《ああ、オウルアイより全機に告ぐ、敵勢力の所属が判明した、現在交戦中の勢力はアンヘルだ》
《なんだって?》
海の向こう側、ユーラシア大陸全てを手中に収める国、アンヘル
神に仕える者を自称する国で、頭に光る輪っか、ハイロゥがある天使種を中心として、数段階の階級があると言われる宗教国家
一昔前、ユーラシアのほぼ全域を手中に収めた為、アンヘルの現状を伝える国がなくなり、音沙汰がなくなっていたが
《でも、あいつらの機体の塗装は白でもハイロゥがなかったよ?》
《ストーク3の言う通りだよ、ハイロゥがないなら天使種…つまりアンヘルの兵じゃない》
他のヴァルキリー達からも困惑の声が上がる
アンヘルにおいて、天使種以外は教徒という身分になる
教徒だけなら聞こえはいいが、その実態は労働力としての奴隷と言っていいだろう
その為軍を高潔なものとするアンヘル軍には、天使種以外は所属できなかったはず
《アンヘルがユーラシアを制圧してから何か変わったのかもしれんが、宣戦布告をしてきたのはアンヘルというのは間違いない》
《宣戦布告をしたならハイロゥを隠す理由もない、てことはコイツらはアンヘルに消された国の奴らか?》
《その可能性が高いだろうね〜、大国を潰すのに少しでも戦力が欲しかったのかも》
《待てよ、てことはつまり》
「本隊が…ひかえてる」
真っ黒な海の方を見る
今戦っている敵はまだ先遣隊である
それは押さえ込むだけでも精一杯なユニリア軍にとって、あまりにも残酷な事実であった
群翼のヴァルキリー スフィラ @Sufira
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。群翼のヴァルキリーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます