最終話「本物の愛と、偽物の愛の行く末」
─ 滝野家 ──
浩司と香織と真琴が朝ご飯を食べながらテレビを見ていると、ニュース番組が始まった。
「おはようございます。ニュースネイバーのお時間がやってまいりました。そんなところまで? そこまで言っていいの? で、お馴染みのニュースネイバー。それでは早速いきましょう! ──え〜、昨日の午前十一時頃、東京都✕✕区の県道で、トラックと乗用車の正面衝突事故が発生しました。トラックの運転手は軽い打撲程度で済みましたが、乗用車を運転していた八木勇夫さん(二十九歳)と、助手席に乗っていた八木綾音さん(二十五歳)は病院に搬送された後、死亡が確認されました。救急隊員の話によりますと搬送中は二人共まだ息があり、人の名前のような言葉を発していたそうですが、病院に到着して直ぐに息を引き取ったとの事です。──警察の検証によりますと、乗用車のブレーキとハンドルに細工が施されていたのではないかという判断から、悪意を持った第三者による犯行もあるとみて捜査を開始。この乗用車が契約する駐車場に設置されていた防犯カメラの映像から、八木勇夫さんが運転していた車に乗り込む人物を割り出しました。その人物とは、亡くなった八木勇夫さんが社長を務めるマチョキンホームの秘書、
浩司がテレビを切った。両手で顔を覆い俯いた後、ゆっくりと手を顔から離して口を開いた。
「まさか……だな。──忘れてたけど、綾音から電話があったんだったよ。会いたいって。──だからって、何かをしてあげれば良かったとは思わないけど、何が起こるか分からない世の中……だよな」
「ええ……。私も忘れてたけど、勇夫から電話があったの。話も聞かずに切ったんだけどね。──秘書の
二人は複雑な心境だった……。
「うん。──車に何か細工されてたって……あの人、秘書にも恨まれてたんだな。その二人に巻き込まれた綾音……。僕の気持ちの中ではあんな女もういいやって、強引に気持ちを切り替えてたんだ。だからか、事故のニュースを見てざまぁみろって思う自分がいる。こんなことを思うなんて、僕って冷たい人なのかな? ──産婦人科の前か……亡くなった人に対してどんな感情を持ってても、亡くなればみんな同じ仏様……。お花を買って手を合わせに行かないと」
「そんな、
そう言ってお腹を擦る香織。
❑ ❑ ❑
─ 通りすがりの老夫婦 ──
「婆さん、ここは確か……そうそう、八木さんのお家じゃったなぁ」
「ええお爺さん」
「表札が『
「ええお爺さん」
お爺さんは少し考えた。
「ふ〜。ということは、また夫婦関係にヒビが入って、別れてしもうた……という訳じゃな」
「ええお爺さん」
「だがしかし、今回はいつもとちと違うのぉ。角の家はそのままじゃ」
「ええお爺さん。──私……この間の町内会で、噂を聞いたんですよ。滝野夫妻と八木夫妻でお互いに夫と妻が入れ替わったらしいですよ。それで、八木家が出ていって、滝野家が残って、滝野の旦那さんと、八木の奥さんが一緒に暮らしているとか……」
お爺さんは少し考えた。
「ほ〜、なるほどのぉ。今迄とは少し様子が変わってきとる。じゃが、呪われた土地に変わりはない……か」
「ええお爺さん」
「儂らが若かった頃に、この住宅街が出来た。当時儂らが移り住んだ時に、あの角の家に住んどった……確か……美……そうそう、
お婆さんは空を見上げた。
「ええ、
「婆さんが言うと怖いのぉ。──そうじゃったな。
「──違いますよお爺さん。出て行った八木さんの旦那さんと、滝野さんの奥さんは事故で亡くなったそうですよ」
「な、なんと!! これは……やはり呪われとるのぉ……まだ続きそうじゃわい」
「違いますよ、お爺さん……。舞ちゃんが戻ってきたんです。今回で全てが終わりますよ……全てが……ね。──ふふっ」
❑ ❑ ❑
─ 隣に越して来た若い夫婦 ──
引っ越しも終わり正面の家から順に訪問し、ぐるりと回って隣の家までやってきた若い夫婦。
「後はこのお隣さんで終わりね」
「そうだな。ここの住宅街ってさ、結構年上の家族が多いんだな。もっと俺達みたいな若い夫婦が多いのかと思ってたよ」
年齢層の高い住宅街ではあるが、嫌な感じの家は無かったので二人はホッと胸を撫で下ろしていた。
「最後は俺がインターホンを押すよ」
「じゃあお願いね」
妻がそう言って引っ越しそばを夫に手渡し、夫が『滝野』と書かれた表札の家のインターホンを鳴らした。
ピンポーン♪
『は〜い、どちら様ですか?』
「あっ、す、すいません。隣に引っ越してきました
『あ〜、ちょっと待っててもらえます?』
「あ、はい」
インターホン越しにそう言われ待つ二人たが、妻が何かを言ったのかと思い声を掛ける夫。
「えっ? 何か言った?」
「えっ、私? ん〜ん、何も言ってないわよ」
いきなり夫に声を掛けられ、戸惑う妻が思った。
──何か言った? って……私、口も開いてなかったんだけど? 彼の空耳かな?
妻は、夫の言葉にそれほど気にすることもなく隣の家の人が出てくるのを待った。暫くすると、玄関のドアが開く。
❑ ❑ ❑
─ 滝野家 ──
ピンポーン♪
「こんな時間に誰かな?」
浩司が真琴と遊びながらインターホンがある方に目を向けていると。
「ほんと、誰かしら?」
香織が重いお腹を擦りながら、丁度インターホンの前にいたので応対した。
「は〜い、どちら様ですか?」
─『あっ、す、すいません。隣に引っ越してきました
「あ〜、ちょっと待っててもらえます?」
『あ、はい』
香織が浩司を見た。
「なんか、色々と思い出すなぁ。──出たくないような……でも、挨拶に来てくれた人を追い返す訳にはいかないよな」
「そうね。もう待っててって言っちゃったし……。浩司、一緒に行こ」
「うん」
三人で玄関まで行くと、浩司が真琴を抱っこしたまま玄関のドアを開けた。
「おっ? 若いなぁ。僕より若いんじゃないか?」
浩司の目の前に立っている若い夫婦。夫が奥に立っている香織の顔を見て固まっている。
ドンッ
「いてっ!」
夫が妻に背中を叩かれ我に返ったのか、浩司に挨拶を始めた。
「あの、隣に引っ越してきました……えっと、僕が
若い夫婦の挨拶が終わると、真琴を抱っこした浩司が振り返り香織を見て話し出した。
「僕、鳥肌が立ってるよ。このシチュエーションをこっち側で体験出来るなんて、驚きだ。──彼が香織に見惚れてたのも、僕が香織に見惚れてたのと同じ。そして、今僕が
香織が浩司に寄り添った。
「少し違うよ。今は私が後ろに立ってたでしょ? あの時は私がドアを開けたから。──今、私達は仲が良いし、私は浩司を絶対に離さないところも違うわ……」
「僕だって、絶対に香織を離さないさ」
若い夫婦が居てもお構いなしに、二人は熱い口づけを交わす。
浩司に抱かれている真琴が間近にいる二人に。
「パパもママもだいちゅき〜!!」
と言って、二人の頬にキスをした。
若い夫婦がその場のノリで「お〜!」と言って拍手をしながら妻が思った。
──仲が良いい夫婦だなぁ。私達もこの二人みたいな夫婦になれたらいいな。
夫も妻と同じタイミングで心で思う。
──美男美女って、こういうカップルを言うんだろうな。子供もいるのに、熱々なとこなんか見習わないと。
すると、妻が浩司と香織に声を発した。
「あの、お隣さんだし、家族ぐるみで仲良くなりたいと思ってるんですけど、今度一緒に食事でもしてもらえませんか?」
若い夫婦からのまさかの誘いに、浩司と香織が快諾する。
「よし、それじゃあ今度家で鉄板焼でもしようか!」
「そうね、このお腹じゃ動きにくいし。──あっ! 今赤ちゃんが動いたわ! この子もあなた達に来てって言ってるのかもね。それでもいいかしら?」
浩司と香織の提案に、若い夫婦がお互いを見合い頷くと、大きく返事をした。
「「お誘いありがとうございます!」」
〜 Fin 〜
如何でしたでしょうか?
面白った……まぁまぁかな?……。
何で結構ですので、コメントや応援、レビューを戴けると嬉しいです。
最後までお付き合い頂き
ありがとうございました!!
隣人〜その愛は本物ですか?〜 ライト @yujichan
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