第十話 大男

ノックの相手は大男だった。俺はびっくりして尻もちをついてしまった。


?「すまんすまん!!驚かせてしまったな。あんたが信だな。俺は怪しいもんじゃないぞ、初めましてだな、ソルタ―てもんだ。坊主に聞いてるかい。」


この男、威圧感が半端ないわりに凄くいい人そうだ。女神が言っていた特殊部隊の隊長だな。


信「あぁ、すみません。初めまして信です。特殊部隊の隊長さんですよね?」


ソルタ―「そうだ。お前さん、随分とひょろひょろじゃないか!がはは。しかしまぁえらい任務を背負ったもんだな。よろしくな、まぁ何でも聞いてくれや。そんでだな、任務のついでに近かったんで寄ってみたんだ。今日の晩教会の前で信の歓迎会をやることになってな、来てくれや。アイクの坊主も来るからよ。」


そういうとがはがはと笑いながら帰っていった。俺の歓迎会か、結構人も集まるんだろうか?俺は夕方、タバコとスマホを手に取り街へ向かった。


信「これが俺の歓迎会か?祭りじゃないか!すごい人だし、よく集まったな。」


教会の前の広場にはたくさんの人が集まっていて、そこにはアイクとソルタ―もいた。


アイク「信さん!こっちだよ、ようこそこの世界へ、ようこそこの街へ!」


アイクが向こうから手を振っている。恥ずかしいが嬉しかった。


ソルター「来たか信。みんな歓迎してるぞ!詳しいことまで話さんでいいが、お前さんの地球の話とかしてやってくれ。」


そうか、シュバルツの件以外はみんな知っているんだったな。ソルタ―は大きな声でみんなに呼びかけた。


ソルター「おぉーい!信が来たぞ!はるばる地球からやってきよった!いい奴だからな、みんな信に乾杯だ!」


そういうと一斉に乾杯の声が広がった。


信「皆さんありがとう!これからこの街でお世話になります。」


アイク「盛り上がって来たね。今日は楽しんでよ、明日から特殊部隊に配属が決まったからね。俺が一応信の保護者になったから手続きは済ませておいたよ。」


信「仕事が早いな。面倒かけるね、ありがとう。」


いよいよ明日から本格的に異世界ライフが始まるのか、楽しみなようで不安しかないかも。ソルタ―に改めて挨拶しておこう。


信「明日からお世話になります。よろしくお願いします。」


ソルタ―「おぉ!よろしくな。厳しくいくが、そう改まらんでいいぞ、兄貴だとでも思ってくれや。がはは。」


なんと、俺にこんなに力強い兄貴ができてしまった。


?「信さんですよね!初めまして、ルーナと申します。この街でバーをしています!」


めちゃくちゃかわいい子が話しかけてくれた!こんなにかわいい子がいるのかぁ。


信「よろしく!ルーナさん、もしかしてこのお酒も提供してくれてるの?」


ルーナ「はい!今日は信さんの歓迎会ということで、ソルタ―さんに頼まれまして。たっくさん飲んでくださいね!この街にお酒を提供しているのは私の店だけなんですよ。いつでもお店に来てくださいね。」


こんなかわいい子の店なんて毎日でも通ってしまいそうだ。俺はふと彼女の頭に目が行った。猫耳が付いている!なんと、獣人か⁉ファンタジーだ!


信「ねぇ、ルーナさんの頭の耳、もしかして獣人なの?俺の世界にはいなくて、初めて見たよ。」


ルーナ「はい、私は猫族です。地球には存在しないんですよね。この世界には、人間の他に数種類の獣人が存在しています!猫、オオカミ、ワニ、鳥族が主ですね、この街にもそれぞれ住んでいますよ。みんな人間とほぼ変わらない見た目をしています!」


信「そうなんだ。もしよかったら一緒に写真撮ってもいいかな?向こうの友達に送りたいんだ。」


ルーナ「写真ってなんですか?」


そうか、カメラがこの世界には存在しないんだな。なんて説明しようか・・・。


信「んー、鏡のようなもので、それに写ったものを保存しておけるんだ。」


俺は実際に自撮りして見せた。


ルーナ「わぁ!凄いです!信さんがこの中に!これは魔法ですか?」


信「いや、俺は知っての通り地球人だし、地球に魔法は存在しない。その代わりに技術が進歩しているからね、これも人の手で作られた機械だよ。」


別に俺が作ったわけでもないが、なんだか得意げになってしまう。魔法でできることは、地球でも技術で再現できるよな、そう考えると凄い。魔法が使えるようになればもっと発展するだろう。


ルーナ「不思議ですね。撮りましょう!写真してみたいです!」


俺はルーナと写真を撮ってあきらに送り付けた。


信「ありがとう。地球の友達に自慢できるよ。」


ソルタ―「おいおい、さっそくナンパか!がはは。それなんだ?おぉ!こりゃぁ凄い、ワシもそれをしてくれ!」


皆が集まってきたから、全員で写真を撮った。


ソルタ―「すげえ!おいこれ、ワシにもくれ!」


この世界にコピーとか出来るところなんかないよな。あぁ、魔法で何とかなるか?


信「この街の人で、物を複製できる人っていないか?俺のこれ、スマホっていう地球人が作った機械なんだが、大量に作れば皆に配れる。」


ソルター「あぁ、街に一人いる。でもな、複製する魔法はいろいろと制約があるんだわ。ほら、なんでも複製できちまうと商売になんねぇだろ!がはは。」


確かにそうだな。お金も複製できたらえらいことだ。


???「僕を呼んだかい?初めまして信君。僕は複製の魔法が使えるよ、ミナトです、よろしくね。」


ソルター「おぉ!噂をすればミナトじゃないか!がはは。信、こいつに色々聞いてみろ。」


信「初めまして。ミナトさん、これ複製できますか?」


ミナト「うん。この魔法は食べ物や硬貨系、生き物以外に使えるんだ。ただ国の許可が必要だからね。明日にでも一緒に王都に行こうか。」


話を聞くと、この星はとても小さくて、一つの星に一つの国しかないらしい。半分が魔女の住む森と海。残りにメイサー国があって、数十の街に分かれている。この街が王都に一番近いらしい。壮大で夢見た世界は、想像以上に狭かった。










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地球滅亡の危機なのにのんびり異世界ライフ満喫している場合じゃない ろみみん @romiosan

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