第5話
5話目。
それから7年の時がたった。
「また作ってきたのかよ。教科書に書いてある忍術じゃだめなのか?」
「だって非効率すぎるんだよ!」
竈太は握りこぶしほどある忍術録をもって森夜に精査を頼んでいた。あまりにも分厚い忍術録は、全て竈太が書いたものであり、この5年間の勉強の成果が出ていると言えよう。
「無駄な工程を挟まなきゃいけない忍術なんて使い勝手悪いでしょ!」
「そうは言ってもなぁ……確かにお前ほどのチャクラ操作が出来るなら、チャクラ誘導はいらないと思う。それは俺も同意する」
チャクラ誘導とは、チャクラ操作しなくとも忍術が使えるようになる技術のことを言う。例えば森夜の墨字なんかがそうだ。
竈太はその工程が必要ないため、忍術を使うとき毎回もどかしくてしょうがない。
そのため、忍術を自分で作っては森夜の所に持って行くのだ。登録がされていない忍術はたとえ作ったとしても使ってはいけないから。
「だがな、流石に多くないか? こんなに忍術作ったって殆ど使わないだろ」
森夜は飽きれながら渡された忍術録を指でつつく。毎度のことだから慣れてきているが、流石に飽きれてしまう。
「確かに使わないよ。それどころか、使えない、適正がな忍術の方が多いんじゃないかな?」
「はぁ? ならなんで作ってんだよ」
「こう…ね。頭が勝手に動いちゃうんだよね。無駄な工程って見ているだけで吐き気がするし」
特に教科書に書かれている忍術なんかは、見ているだけで目が潰れてしまうかと思った。
「それだけなら持ってくるなよ。どうせチャクラ操作なんて出来る奴はこの学校には居ないんだから」
「だけどさ、作ったなら使えるようにしたいでしょ」
「まあ、そうだよな……どうせならチャクラ誘導使った忍術作ってくれよ」
森夜はたまに忍術を作っているみたいだから、同じように作っている人の気持ちも理解してくれる。
「あ、それなら作ったよ。案外面白くて何個かあるんだよね。中でもお気に入りも出来たし!」
「あ゛、どれだ?」
想定外だったようで、変な声が出てる。笑うのを耐えながら渡された忍術録をめくり、お目当ての忍術を探し出す。多分200ページくらいあったはずなんだけど……
「あった!」
「どれだ……墨字 黒爆の術?」
「あらかじめ体に墨字を刻んでおけば、いつでも刻んだ部分を爆発させることが出来る術だよ! 理論さえ応用すれば、他の術にだって使えるから、拡張性が凄いんだよ!」
森夜が使っていた黒字のチャクラ誘導を使い、何か面白い忍術は作れないかと考えて作った。この忍術はあらかじめ体に、チャクラに反応する墨で文字を書いておくんだ。そして、使いたいなって思った時チャクラを込める事で発動する。
チャクラを込めるだけだから、印はいらずノータイムで発動する事が出来る優れモノだ。
しかし、改善しなきゃいけない弱点もあって、自分のチャクラだけじゃなく他の人のチャクラにも反応するから、誤作動する事がある。
「改善点はあるけど、いい忍術になったんじゃないかな!」
墨字 黒爆の術はチャクラを込める事で、その部分を爆発させることが出来るんだ。爆発は込めるチャクラ量によって規模が変わるから使いやすいが……爆発するのが墨字が書かれた場所なので爆発が大きいと普自爆する。
「いや、ダメじゃねぇか。自爆するだろ」
「そののおかげでチャクラの消費量は少なくなったし、某ヒーロー漫画みたいに爆発を武器に出来るよ!」
「墨字は何回も使えない」
「んー、チャクラ操作さえ出来れば出来るよ?」
「チャクラ操作が出来るのはお前だけだって言っているだろ。まあいい、忍術として機能するのは登録しておくから、早く授業に行け。もうすぐ始業だぞ、中学生初めての授業に遅刻するきか?」
「え、あ!」
時計を見るともうすぐ8時を回りそうだった。急いで職員室を出て教室へ向かうのだった。
★
地団駄のような音を立てながら廊下をつっ走っていた。そのせいで先生に怒られそうになるが、無視することで回避しギリギリチャイムが鳴る前に教室に入れた。
「セーフ!!」
しかし、まだ授業は始まっていないというのに、教室に先生がいた。
「何やってんだ? 時間には間に合っても廊下走ったらアウトなんだよ」
「え、ちょ! いただただ」
先生に頭を掴まれ握られてしまう。痛みで思わずチャクラを使ってしまいそうになるが、それは駄目だと思い直しやめる。
校内では先生の許可がないときはチャクラは使ってはいけない。忍術なんてもってのほかだ。
つまり、もしいまチャクラを使ってしまったら今よりもキツイお仕置きが待っているだろう。
流石にそれは嫌だ。
「イダダダダ!」
ちょっと掴むの長いんですけど!!
マジ痛いんだけど! 使って良いよね! 耐えられないんだけど!
あまりの痛さに、頭にチャクラを纏わせ強度を上げる。この5年間でチャクラ操作も訓練してきたから、この程度お茶の子さいさい!
「オイ? 何チャクラ使ってやがる」
「あ~、えっと……痛くて」
「痛くしているんだよ!」
先生は忍術を使い、チャクラ纏いを力技で突破しに来た。流石先生だけあって、忍術の熟練度は高く、竈太のチャクラ纏いの強度を軽く上回ってきた。
「なんで忍術使ってんの!! 校則違反でしょ!」
「先生だからいいんだよ。はぁ、まあいい……今回はこれ位で勘弁してやる。次からは廊下走るなよ」
「イッタぁ~」
「返事は!
「……はい」
先生は頭を生やしてくれた。ちょっと廊下走ったくらいでここまで怒らなくていいでしょ。ぶつかったら危ないって事は知っているけどさ、廊下には誰もいなかったし。
「なんだ、まだ握られたいか?」
「大丈夫です!!」
大丈夫でしょ、と思いながらももう一度あの痛みを喰らうのは嫌なので、ちゃんと返事をしておく。次からは忍術の申請する時間を改めないとなー。
少し不満を持ちながらも自分の席へ歩いて行く。席は窓際であり、風通しがよく気持ちがいい。
「また怒られてたね。今回はなにしたの?」
「ちょっと廊下走っただけ。めっちゃ頭痛かった」
「ははは、雷紋先生厳しいもんね」
「ほんとうにそう。暴力反対!って教育委員会に駆け込みたいよ」
「忍者学校だから無理だけどね」
話しかけてくれたのは隣の席の涼宮さん。小学の時から同じクラスになる事が多くて、よく話している。
「そう言えば今日の授業何だっけ? 何の用意もしてないんだけど」
「今日は技術測定の日だよ?」
「え、本当? クナイ持ってきてないんだけど」
昨日は森夜に渡す忍術録を作るのに忙しかったから、授業の準備はしてなかった。そのせいで何も持ってきてないのだ。
「持ってきてないのはクナイだけ? ないなら貸すよ」
「え、ありがとう! 恩に着るよ!」
「ははは、そんな恩に着るなんて……返してくれればいいから」
「絶対に返すよ」
辺境の地で生まれた僕は草臥れた技術を使い世界を穿つ 人形さん @midnightaaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。辺境の地で生まれた僕は草臥れた技術を使い世界を穿つの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます