第21話 捕らわれのドゥーム
ドゥーム捕獲は村人にとっては恐怖と好奇心の入り混じった複雑な感覚をもたらした。
捕獲したドゥームはなわでしばられ丸太で作られた檻に入れられていた。
何人かで交代で見張りについて異変がないか監視した。
恐ろしさに進んでは見張りに付きたがらない青年隊の中でゼナは自ら見張りを志願した。
見張りは二人一組であたることになった。
ゼナと彼より少し年上のハッシュが見張りのペアとなった。
ゼナは小さな頃から生物を観察するのが好きだった。
ドゥームは怪物であり人々の恐怖の対象ではあったがゼナにとっては一つの生物であり観察したい物の一つでもあった。
彼がドゥームを目の当たりにしたのは今回が始めてである。
この生物の主食は草木だ。
見張りは森から草を取ってきては檻の中に棒を使って入れその後は長く伸びるドゥームの手に届かない位置に台座を置きそこに腰かけて交代が来るまでじっと様子を見ている。
それもかなり離れた所に。
だがゼナはドゥームの手が届かないギリギリのところまで近づいて観察した。
リーダーのギイナが様子を見に来た。
「おい。少し近すぎないか?」
ギイナが声をかけたがゼナは振り返りもせず返事をした。
「こいつの腕はそこに置いた石までしか届かない。
大丈夫だ。」
「そうか。
だが、気を付けて見張るようにな。
ハッシュ何か変わったことはないか?」
ドゥームに少し怯えながらハッシュは少し言葉につまりながら答えた。
「特に何も。
でも、この檻は大丈夫なんでしょうか?」
と、不安を口にした。
「心配するな。
この檻から逃れられる生き物はいやしないさ。」
そう言うとギイナは小屋を出て行った。
ゼナがこのドゥームを観察し始めて数日たった頃彼はあることに気がついた。
このドゥームは全身が草のツルでできているようで顔らしい部分に目と口のようなものがある。
動いているからこの怪物を認識できるものの森でじっとされていると見分けがつかない。
ゼナが気づいたのはエサを与える時に唸り声のようなものを発しているということだ。
「おい、こいつ何かしゃべってないか?」
そう言われてハッシュも少しいつもの位置より近づいて聞き耳を立てた。
「ただ唸っているだけじゃないのか?」
「そうかなあ。」
すると今度はドゥームがはっきりと聞こえるように言葉を発した。
「もっとくれ。」
リザードンと人の姫 @tamager
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。リザードンと人の姫の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます