第20話 きっかけ

 次の日からリナの訓練の補助はクレメンスとジュエル一日交代で担当することになった。


 しかし、成果はいっこうにあがらず無為な事をしているだけではないかと感じ始めていた。


 訓練開始から4日目、何ら変化が現れない中リナはその日ヤムに不安な気持ちを話しに行った。


 「ねえ、どうしてもロムを台座にとどまらせることが出来なくて私にはそんな力なんか無いんじゃないかしら?」


 老人は木ノ実を食べながら話し出した。


 「出来ないと思ってあきらめるか?


 わしはかまわんよ。」


 「試したいことはあります。


 それと一度あなたの力を見せてください。」


 リナは魔法使いの力を目の当たりにしてないため心から信じることができていなかった。


 そういう気持は訓練に少なからず影響する。


 「やれやれ、めんどくさいのう。」


 そういいつつも水筒の水を一口飲むと洞窟から外へ出て王城へと向かった。


 王城に着くとヤムはリナにしがみついているグリマーを抱えて台座に移した。


 リナがいつもやっている場所に立ちグリマーに対した。


 グリマーは台座の上で立ったりリナの方やヤムの方を交互に見たりしたが台座からは降りなかった。


 結局四半日グリマーはじっとしていた。


 「どうじゃ。これくらいはできるようにならんと次には進めんぞ。」


 リナはヤムの魔法に感心した。


 「試したいのは魔法を私にかけてみてほしいの。」


 「なんじゃと。」


 するとリナは台座に歩み寄りグリマーを抱き上げて台座の上に腰かけた。


 「わしも人に向かって魔法を試したことはないぞ。


 どうなっても知らんぞ。」


 そう言うとあらためて老人はリナに対峙して念を発した。


 「身体に異変が起きたらちゃんと言うのだぞ。」


 ヤムの魔法を受けてしばらくは何の変化も起きなかったが台座から少し離れようとすると身体に少し熱を感じた。


 その熱は次第に強くなっていきやがて我慢できない熱さになったところでリナは声を上げた。


 「熱い。」


 そこでヤムは魔法を止めた。


 「ほれ、言わんこっちゃない。」


 「でも感じが分かったわ。


 訓練では意識してのぞめるわ。」


 「そうか。まあ、がんばんなさい。」


 ヤムが棲家に戻った後、リナは右手を右ひざにあてて念をこめた。


 まあ、元々人がもっている体温があるので念で熱が起きたかはよくわからない。


 ただ、ヤムの魔法で受けた熱はレベルが違う。


 リナは日中は王城で訓練し、夜は棲家で自分の身体に念を出す事を続けた。

 


 

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