第19話 捕獲
その日の終わりに王城内をもう少し片付けするようにとヤムに言われて一人では時間がかかるので次の日はクレメンスとジュエルに頼む事にした。
ヤムに師事することになったのを伝え、王城の片付けを手伝ってもらうようにお願いしたところ二人はこころよく引き受けてくれた。
昼前までは片付けを三人で行い食事の後はリナの訓練に二人も付き合った。
ジュエルとクレメンスは交代でグリマーが移動するたびに台座に戻した。
時々抱きかかえると嫌がる場合もあったが概ねおとなしく訓練には支障はなかった。
三人が王城で訓練にいそしんでる間、彼等の村に一体のドゥームが襲撃にやってきていた。
「アル。皆を森に。
ゼナ。網の準備はいいか?」
青年隊のリーダーのギイナは二人に声をかけた。
「ああ。いつでも来い。」
ドゥームが一体だけというのは珍しい事でさらにこのドゥームはリマ湖でクレメンスが怪我を負わされた奴と同じ種類であった。
今までドゥームに襲われる事はあっても捕らえたことはない。
何故一体のドゥームだけが村にやってきたのか。
ドゥームの生態は謎に包まれている。
奴等と対等に戦って行くためにドゥームを生け捕りにして調べようとギイナが言い出したのである。
計画は予定通り決行された。
ドゥームは草食で人々の作った作物を求めてやってくる。
そして作物を食べた後に何故か虐殺を行う。
理由は分からない。
捕獲しようとギイナが提案したのはドゥームの弱点が見つからないか、あるいは虐殺を行う理由が分からないかと考えているようだ。
村の端の小屋に作物を積み上げておき青年隊の数人が小屋の見える位置に待機した。
「来たぞ。」
一体のドゥームが村の端の小屋に入った。
ドゥームはズタ袋をその強力な腕を使って引き裂き中の作物にかぶりついた。
「今だ。」
ギイナのかけ声で小屋の外に待機していた仲間たちが一斉にピーンと張っていた綱を切った。
すると小屋の天井に取り付けてあった網が落ちてきてドゥームの頭上からすっぽり包んだ。
網で覆っていてもドゥームの力は強く逃れようと暴れるため押さえについた6人のうち2人が負傷したがなんとか捕獲は成功したようだ。
さて、リナの方は一日中グリマーを台座に座らせてじっとさせる訓練を続けていた。
日が傾き始めた頃ヤムが様子を見に来た。
「どうじゃ、上手く行ったか?」
その途端グリマーが台座から飛び降りた。
「なんじゃ。からっきしかい。
もうすぐ日が暮れる。
今日はもう帰るんだな。」
三人は王城を後にした。
「できるようになるのかしら。」
「信じよう。」
「まだ、二日目だろ。」
クレメンスとジュエルはそれぞれ一言ずつ励ましの言葉を添えた。
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