第365話 ダンジョンに行きたくて震える
1月4日。
新ダンジョン出現に伴う旧ダンジョン消滅の恐れの為に閉鎖されていた各支部のダンジョンだが、今日から開放されることとなる。
今朝のニュースでは、ほぼ全ての新ダンジョンが発見されたと言っていた。
冬海さんが緊張した様子で朝の生放送に出てたね。
(前まではこういう仕事は全部桑島さんがやってたけど、これからは分担していくんだろうね)
しかし新ダンジョンに関してはいいニュースばかりではない。
例の外国人による新ダンジョンへの侵入ね。
捕まったのは全国で3件だけだったらしい。
銃やら麻薬やらが出てきて、思ったより大事になっていた。
これも朝からやっていて、水木の父親がインタビューを受けている様子が流れていた。
自宅に『新しいダンジョンゲート』ができて娘が危ない目に遭った、と。
それと『新しいダンジョンゲート』ができた土地の権利についても色々と。
先祖代々の土地をいきなり寄こせって言われも困るって人もいるし、新しく支部なんかができたら治安が悪くなるとかなんとか。
まあこれはB級ライセンスって軽犯罪者向けのライセンスとダンジョンの噂があるからしょうがないけどね。
あとは自衛隊が出入りしたり、近くに基地みたいなのができると他国からの攻撃とかテロの対象になるとかね。
(ダンジョンの中は外の天候とか地震とも無縁だから、逆に避難所になりそうなものだけどね)
そんなこんなでダンジョンの用地交渉は進んでいないのだとか。
音かには値段を釣り上げるためにゴネている人もいるのだろう。
そういう質問をされて冬海さんは四苦八苦していた。
幸いなことに水木の家の件に関して俺や総司が関わっていると言うニュースは流れていないし、ネットでも何も言われてない。
ネットだと犯人を捕まえたのは仮面のヒーローと言うことになっているらしい。
(仮面とか、そんな奴おらんじゃろう……)
いや、最初からあんなことが起こるのがわかっていたら俺も仮面を用意して、警察が来る前に去るとかできたのにね。
あの女神がちゃんと教えてくれないからさ……。
次にこんなことが起こっていいように、忍者コスチュームでも用意しておけばいいだろうか?
『忍者春影』のデビューは近いかもしれない。
(あ、俺の二つ名はそれがいいかな?)
新ダンジョンに関して国内では落ち着きそうだが、海外はそうでもない。
土地交渉では日本以上に問題になっていて、その所有権をめぐって死人が出ているくらいだ。
それ以上に深刻な事態に陥っているのがアメリカである。
今回新たに増えたダンジョンの数は僅かに10個。
しかもその10個はいずれもハワイやアラスカなどの飛び地である。
元々アメリカの中央部にはダンジョンが存在しない。
これはダンジョンの中で核実験を行ったことが原因で、かなりの広範囲に渡って『ダンジョンゲート』が失われているからだ。
そのため、軍が占有しているダンジョンを除けば、東海岸と西海岸にいくつか残っている程度。
そこに冒険者が集中している状態なので、そもそも今回は消えたダンジョンがないのだとか。
消えたダンジョンの数が0なのでアメリカ本土では増えた数も0という訳だ。
まあ4年前は他国の工作員やマフィアなんかに『ダンジョンゲート』を押さえられて、本土だけで言ったらマイナスだったらしい。
(その時よりはマシなんじゃないかな?)
今回はその核実験で消えたダンジョンが復活するんじゃないかって噂があったけど、そんなことなかったね。
世界中のネットは新ダンジョンの話で持ち切りだけど、アメリカは乗り遅れている状態だ。
日本はでは新ダンジョンの調査は今日から始まるけど、海外ではすでに入れる国も多い。
入れる、と言うか、日本みたいに冒険者協会が十全に機能してる国の方が少ない。
買い取りと殺人など事件の取り締まりしかしていない国も多い。
兎に角すでに動画サイトは新ダンジョンの動画で溢れている。
その中でも話題なのが遠くに大きな木が見えるダンジョンである。
遠くに、と言うのはダンジョンの見えない壁の向こうだ。
それ以上進めない先に、景色としてだけ存在する大きな木。
(大きな木……)
どれぐらい大きいかと言えば目算で1000メートル以上。
それだけ大きい気と言えば世界樹なんじゃないかって騒ぎになっている。
それが世界各地の新ダンジョンで目撃されている。
現在攻略が速いところでも、出ているのは精々20階層まで。
しかし1階層から見えるその大きな木よりも11階層から先の方が明らかに距離が近くなっているんだとか。
これが30階を超える階層になったら、ダンジョンの壁の内側に来るのではと話題だ。
世界樹と言えばその葉っぱには回復効果があるのがあるのがファンタジーでは定番である。
あるいは死者蘇生の霊薬の材料であったり、万能薬を作れたり……。
夢は広がる。
(まあ俺は新ダンジョンには行けないんだけどね)
という訳でやってきましたマイホーム。
千葉支部です。
今は9時の開放を待つ人の列に並んでいる。
ただ見た限り、今日からダンジョンっていう冒険者の姿は見えない。
みんな1階層にあるお店の店員さんだと思う。
一週間くらいお店を開けてからね。
今日から再開できるかな?
「ねえ、ニュースで沙織の家のことやってたけど、霞さんに何か言われた?」
その店員さんたちに交じって俺と相川がいる。
総司はまだ風邪でダウン中。
相川は着替えやら、一週間分の荷物を置いたら総司の見舞いに行くらしい。
「いや、特には何も。昨日の電話でも何も言われなかったな」
クラスメイトを助けに新ダンジョンに入ったことは知っているはずだが、無茶はしないでくださいと言われただけだ。
まあダンジョン内なら俺が後れを取る訳がないと言う信頼ですね。
「本当に?ニュース見てるはずよね?逆に怖いんだけど……。あ、噂をすれば!」
ちょうど霞さんがダンジョンから出てた。
「では今から千葉支部のダンジョンを開放します!皆さん慌てずに順番を守って入場してください!」
毎日電話してたけど、実際に会うのは4日ぶりかな?
そして千葉のダンジョンに入るのは一週間ぶり。
奥にはもっと行ってないよね。
2ヶ月は先に進んでないと思う。
ヒャッハー、ダンジョンだー。
冒険者ダンジョン出たらただの人 木村雷 @raikimura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。冒険者ダンジョン出たらただの人の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます