1章1話 穂を揺らす小麦畑の日常
ゲーラス歴 583年09月03日
ノルジス・イグレットは、その日三度目のため息をついた。
理由は机の上に広げられた村の外れにある風車の修復工事の計画書だ。かれこれ3時間難しい顔をしながらにらめっこをしている。
「いずれ領主の立場を継ぐのだから、これくらいはできるようになりなさい。」
父のテオドルンに言い渡され渋々書類に手を付けたが遅々として進んでいない。
窓の外は雲一つない快晴で心地よい秋の風が流れていた。
こんなに天気が良いのだから、いい加減外に出て日課の剣の修練をしたい気分だった。
テオドルンはイーリス王国東部にあるファーティル領の領主だ。
領主と言っても実際にはだだっ広い小麦畑しかない村のちょっと偉い村長さんくらいなもので、ファーティル領の東側のノスジス達が住むオスト村を中心に点在するいくつかの田舎の村々の管理を任されている程度のものだ。家も他の領主が住むような立派な豪邸ではなく、唯一村の中で2階建ての少し大きいくらいのものであった。。
その領主の仕事を継ぐことになる長男のノルジスは、もうすぐ13歳になるという事もあり後継者としての自覚を持たせるため初の仕事を父から与えられたわけだが、突然与えられた仕事に正直まったく微塵もやる気は沸いて来ず何かを書きかけてはやめることを繰り返していた。
「父さんも酷い人だ。じっと座って仕事ができるような性格じゃないことも知ってるくせに。」
父への恨み言をつぶやきながら、四度目のため息をつき体を机に伏した。
ふと壁にかかった時計に目をやると、振り子の時計が書類仕事に何時間も従事していたことを教えてくれた。
経過した時間と裏腹に遅々として進まないやりかけの仕事に嫌気がさしたノルジスはペンとインク片付けると、おもむろに壁に立てかけてあった練習用の木製剣を掴み廊下に飛び出した。
そのまま一階に続く階段を駆け下り廊下をまっすぐ進み玄関に向かう。
机に向かっている時とは打って変わって軽い足取りで走り抜けるはずだったが、残念ながら玄関手前で右手から出て来る男に阻止された。
その男は浅黒い肌で使用人として身なりは整えながらも髪は猛獣の様なボサボサ頭で右目には眼帯をしている。
「坊ちゃん、これからどこへお出かけで?」
「や、やぁローウェン。今日はもう書類仕事はおしまいにして剣術の修行をしに行くところなんだ。」
「ダーメだ、今日は旦那様に仕事を言い渡されているだろ。」
ローウェンはこの家に住み込みで働く執事でテオドルンに仕えている。どうやら彼は父に釘を刺されているらしく、どいてはくれないようだ。
背の高いローウェンからは通り抜ける隙が見当たらなかった。
腕を組み仁王立ちする姿はまるで城門を守護する騎士のごとく堅牢だった。
「いやぁー俺も少しは息抜きしないと。効率の良い仕事ってのは適度に休憩を取ってこそで」
「ダメなものはダメだ。」
言い終わる間もなく却下されてしまった。取り付く島もないとはこのことだ。
「頼むよ、俺が半日も机に向かって仕事なんてできるわけないだろう。」
「俺は坊ちゃんが仕事を終えるまで外に出すなと言われている。遊びに行きたければ仕事を終わらせるか、旦那様に直接許可をもらうことだな。」
ローウェンは父であるテオドルンの忠実な右腕だ。こうなった以上王国随一の魔術師が最大級の爆発魔術をぶつけたとしてもこの場に立ちふさがり続けるだろう。
しかし、いい加減紙とペンから剣に持ち変えたい気分だ。
どうにかして、この場を切り抜ける方法がないか思案していると、一つ良いアイディアが浮かんだ。
――そうだ、この間教えてもらった”アレ”を試してみよう。
ふと、村はずれに住む引退した老練騎士に教わったテクニックが脳裏に浮かんだ。、
あまり褒められたものではないが、せっかくなので試してみる事にした。
「はぁー…わかったよ降参だ…。じゃあ、仕事が終わるまで、こいつは預かっててくれ。」
口元のにやけを悟られないように大きくうなだれながら、わざとらしくため息をついて腰から外した木製剣をローウェンに手渡す。もちろん両手で受け取るように横向きにして。
「良い心がけだ。ノルジス坊ちゃんのご成長には旦那様もさぞお喜びになられるでしょう。」
ローウェンは、その風貌に似合わない仰々しい物言いで宝剣でも扱うかのごとく得物を受け取る。
その所作を横目で見ながら、じっくりと機をうかがい、一度きりのチャンスを見定める。
そしてローウェンの視界から剣とノルジスの姿が一直線に並びノルジスの姿を覆い隠すタイミングを待った。
―—ここだ!
ノルジスは好機と判断するや否や、思い切りローウェンが取り上げた剣をローウェンの頭上に向かって蹴り上げた。
「なっ?!」
不意をつかれたローウェンは片方しかない目を丸くしながら言葉にならない声を上げる。
一方、剣の方はゆっくりとローウェンの頭上を放物線を描いて飛び越えていった。
すかさず蹴り上げた勢いを保ったまま、ローウェンの死角となる右手側を姿勢を低くしてローウェンの足元を走り抜けた。
「こらぁ!待てガキンチョ!」
ローウェンは即座に頭上の剣よりも傍を走り抜けるノルジスに意識を切り替え、腕を掴もうとするが。しかし、その手はわずかに遅れ虚空を掴むだけで勢い余り盛大にずっこけた。
わずかな空中遊覧を楽しんだ剣と合流すると、ノルジスはすかさず玄関を押し開き全速力で庭へと飛び出した。
背後でローウェンが戻ってこいと怒鳴っているが、もちろん戻るつもりはない。
「ごめーん!帰ったらちゃんと仕事するからー!」
一応テオドルンに怒られるであろうローウェンに謝罪はしながらも、言葉とは裏腹に楽しみを隠しきれないノルジスは、栗色の髪をなびかせながら軽い足取りで村のはずれまで走っていった。
テオドルンは二階の書斎で階下の騒ぎを聞きながら状況を察知した。
元気いっぱいな息子は、いつものように剣術の修行のため外に出かけたのだろう。
やれやれ、と独り言をつぶやきながら目の前の書類から目を離し目頭をそっと抑えた。
ほどなくして書斎のドアが二回ノックされる。
「開いている。」
そう答えると、ばつの悪そうな表情をしたローウェンが姿を現した。
「旦那様、申し訳ありません。ノルジス坊ちゃんが…」
「わかっている。」
テオドルンは手元の仕事を一度置き椅子の背もたれに体重を預けた。
「まったく元気なのは良い事だが、自分の立場というのをもう少し理解してもらいたいものだ。建国記念パーティーも控えているというのに、もう少し立ち振る舞いはどうにかならんものか…。」
「坊ちゃんは頭よりも体が先に動くって質ですからね。まるで若い頃のセルア様を見ているようですよ。」
「父親としては少しくらい俺に似て欲しい所ではあるがな。最近は輪をかけて活発だ。そのうち魔獣やらならず者やらを退治にでも行きそうなくらいだ。」
ローウェンはテオドルンの言葉に少しニヤけてみせた。
「その点は旦那様に似ているのでは?王国内屈指の荒くれものを一網打尽にして捕らえてしまう程ですから。」
テオドルンはローウェンのおどけた態度に思わず表情が緩んだ。
「懐かしい話だな。10年以上も前になるか。」
壁に目をやると、当時から使っていた杖やガントレットなど魔導具が並びかけられていた。
「いやぁ、あの時の旦那様の勇猛っぷりと来たらすごかった。百人近くいる山賊団をばったばったとのしちまって、挙句にはどんな屈強な冒険者でも手が出なかった頭領までひっ捕らえちまうんだから。」
「その山賊の頭領も今では片田舎領主の執事になんかに納まって、ずいぶん大人しくなったじゃないか。」
机に頬杖を前のめりになりながら、おどけた様子のローウェンを茶化した。
「ははは、なぁに身の程を知っただけですよ。それに獰猛さならあの頃と何ら変わっていませんよ?」
ローウェンはフンフンと唸りながら両手で剣を振るう動作をして見せた。
その姿はかつて山賊のアジトで対峙した時の姿を想起するが、今目の前にいるのは敵対するならず者ではなく信頼できる従者である。
ここ数年は大きな争いというものもなく実に平和になったものだ。
テオドルンは息子や従者、家の中でせわしなく働く使用人の姿などを思い浮かべ目を細めた。
◇
村のはずれにはカールという老人が住んでいる。
いつもは畑仕事の傍ら、村の子供たちに剣術を教えてくれる優しい老人だ。
カールはいつものように家の敷地内にある大きな切り株に腰かけて、生徒が道具の準備をしていたり屋根の上でサボったりしている様子を上機嫌に眺めていた。
村のはずれにある、カールの家は自宅こそ簡素な作りであるがその敷地はなかなかの広さで、木製の柵で囲われた庭では何人もの子供たちが広々と剣術の修練を行うことができるほどだ。
「先生こんにちは!」
「やぁノルジス、こんにちは。」
いつもより遅れて入って来たノルジスに向かってカールはいつものようにゆっくり手を振る。
「おせーぞノルジス、さっさと準備手伝えー。」
ノルジスが勢いよく柵を飛び越え敷地に入ると、突如頭上から声が聞こえ見上げると、短い赤毛の少年が偉そうに腕組みをしながら見下ろしていた。
「なんだよフランツ、またサボってんのか。」
フランツは腕っぷしが強く、近所の子供たちの中でリーダー格の存在だ。人を顎で使うのがうまく、いつもあーだこーだと偉そうに指示を飛ばしている。
気に食わないやつではあるが、ノルジスにとっては何かとウマが合う友の一人だ。
「お前もそこで威張ってないで手伝え。」
「へへ、俺さまは監督役だからいいんだ。」
「なーにが監督役だよ。」
いつもの調子で偉そうな態度でサボっているフランツを尻目に物置に向かうと、中からもう一人の友人が姿を現した。
「やぁノルジス、今日は遅かったね。」
「よおエルマー、俺も手伝うよ。」
金髪で1つ年下のこの少年は大人しい性格をしているが、よく気が利く性格で今日も率先して稽古の準備を一人で文句も言わずに進めている。
二人とも自分を領主の息子として敬ったり疎んだりする様な態度はせず、対等な友人として接してくれるかけがえのない存在だ。
いつものように武具やら木人やらを運び修行場の準備に取り掛かる。
「ローウェンに捕まっちゃってさー抜け出すのに一苦労だったよ。それにしても今日は人が少ないな。」
「もうすぐ建国記念日だからね。村でもお祝いするから、その準備でみんな忙しいのかもね。ノルジスは今年も王都まで行くんだよね。」
「うん、今年も父さんの付き添いで王宮のパーティーに参加するんだ。」
「いいなー、今年もまた王女様にお会いするんでしょうらやましいなー。」
王女の名前が出た瞬間、思わず表情が緩み、つい準備をする手が止まってしまう。
「あ、会うって言っても挨拶してちょっと話すくらいだけどな!同い年だからメルリッタ様も話しやすいんだろ!」
「へぇーすごいなー、ぼくも一度王女様に会ってみたいな。」
「よかったら父さんに話して一緒に連れて行ってもらえ、いて!」
そんな話をしていると突然後頭部に何かがぶつかった。
「ほら手が止まってるぞ。締りのない顔してないでとっとと終わらせろよ。」
フランツは木剣を拾い上げると意地の悪そうな笑みでこちらを見ていた。
「てめぇ何すんだ!てか、サボってないでお前がやれ!」
「へいへい。王女様に夢中なお坊ちゃんの代わりに俺がやっといてあげますよー。」
二つの意味で顔を赤くしながら、しかめっ面で残りの道具を持ち上げ運んだ。
「後で絶対にぶっとばす…!」
武具やら木人やらを運び出して備えつけると、簡素な修練場が完成した。
本物の兵士が使うような立派なものではないが、子供にとっては十分な設備だ。
準備が終わると切株に座っていた白髪で真っ白な頭と髭をたくわえたしたカール爺さんが腰を上げて剣術修行開始の号令を飛ばす。
「それじゃあ始めるぞちびっこ達。今日も怪我なく楽しく、な。」
こうして緩い感じで剣術修行は始まる。
修行は素振りから始まり、ノルマは100回だ。
それが終わると木人への打ち込みをし、生徒同士の打ち合いを交代で行う。
先ほどの仕返しとばかりに、カールには一本取ってやり見事勝利を掴んだ。
そして最後に交代でカール爺さんとの演習試合を行うのだが、なんの変哲もない農夫の見た目をしていながらこれがなかなか強く、何度挑んでも未だに一本も取れない。
しかも代わる代わる生徒の相手をしても汗一つかく様子がなかった。
最近になって筋力はある程度勝負できるレベルになってきたが、身のこなしやテクニックではまったく太刀打ちできず今日も悔しい思いをさせられるばかりだった。
自分の番が終わりエルマーと交代しながら、よろよろと息を切らせフランツの横で家の壁にもたれかかった。
「はぁー相変わらず強すぎるあの爺さん。」
「そりゃ伊達に元王宮騎士団のエリートしてないからな。現役時代はその中でも上位三人に数えられる程だったらしいぞ。」
「すごい人だとは思ってたけど、そこまでの超エリートだったとは…。」
「しかも、騎士団長候補とまで言われたらしくて、空きがあれば確実に騎士団長に選ばれてたって。王都じゃイーリスの再来とまで言われてたらしい。」
「建国の英雄イーリスかそりゃすごいな。そこまで言われるって最早無敵じゃん。でも、そんなにすごい人がなんでこんな片田舎の端っこで畑なんか耕してんだろう。」
「何でも昔から土いじりが好きで引退したらここに移り住みたかったらしいな。そんで引退したら息子を王都に残して奥さんと一緒に引っ越したとか。」
「へぇー…、というかお前はなんでそんな事まで知ってるんだよ。」
「色々情報筋があるからな、このフランツ様に知らないことはない!」
フランツは得意げに親指を立てる。少し憎たらしい感じもするが、こういう情報通なところは素直にすごいと思えるところだ。
そうこう話している間にカールの巧みな剣さばきによってエルマーは足をもつれさせて三度目の転倒をするところだった。
実際、剣術の腕に関して言えば、この村の子供どころか国中探してもカールに敵う人はいないだろう。また、剣術だけでなく相手の動きを読んだり剣術以外のちょっとしたテクニックも一流レベルだ。
ちなみに、屋敷を抜け出す際にローウェンに使った技もカールから教わったものを応用したもので、相手の持ち物で視界が遮り奇襲を仕掛けるものだ。
他にも背丈の差が大きい相手の崩し方や、リーチが長い相手の懐に入る方法、自分が武器を持っていない時の動き方など様々な状況で使えるテクニックを教えてくれる。
正直騎士団ではなくならず者や暗殺者が使うのではないかと疑問に感じる物まであるが、なんだか怖いので追及はしないでいる。
修行が一区切りつき談笑していると、不意に遠くから自分を呼ぶ少女の声が聞こえた。
「あれ、ノルジスじゃん。何でこんな所にいるの?」
声がする方へ目を向けると見知った浅黒い肌の少女が荷物を担いでこちらに向かって来るのが見えた。
「げぇ、ロウェナ……!」
前髪を髪飾りで止めセミショートの髪を風になびかせながら近づいて来るのは、ローウェンの娘のロウェナだった。
ノルジスより二年早く生まれた15歳の彼女は小さい頃から父親に、将来は領主となったノルジスの従者として働くように言われ育った。しかし、実際は年上なのをいいことにいつも姉貴面をして口うるさく世話を焼く厄介な存在だった。
仕事をサボって出てきた事を知られれば確実に家まで引きずられて帰ることになるだろう。
「あ!ロウェナねーちゃんこんにちは!」
「ロウェナさんこんにちは。」
「こんにちはー二人とも。あ、カールさんもこんにちはー。」
友人二人はロウェナを見るや否や嬉しそうに声をかけ、カール爺さんの方も目を細めて手を振っている。
ロウェナは村でも人気者だ。パッチリとした目をしていて比較的美人だし、ローウェンに言いつけられた仕事の他にも村の人の手伝いをしたり子供たちの世話を焼いたりしている。
器用で何でもそつなくこなし背中に背負った弓の扱いに関してはファーティル地方随一くらいの腕はあると言われている。
ロウェナは傍までやって来ると怪訝そうな顔をこちらに向けた。
「ノルジス、今日はテオドルン様の仕事を手伝うから屋敷からは出ないって親父から聞いてたけど、何でここにいるの?」
「ち、ちょっと気分転換に出かけてただけだよ!ローウェンにはちゃんと許可もらってるし、そろそろ帰ろうかと思ってたところだから。」
まだ家に帰りたくはないためその場を取り繕う嘘を並べてみるが、背後では三人のギャラリーがニヤニヤとこちらを眺めている事に気づき慌てて、やめろとアイコンタクトをする。
しかし、案の定その様子を見て状況を察したロウェナはニヤリとした表情で腰に両手を当てた。
「ははーん、さてはまた抜け出してきたなぁ?ほらさっさと帰って仕事に戻らなきゃだめだよ!」
ロウェナは剣を取り上げようと手を伸ばした。その姿は平和な村に突如現れた邪悪な侵略者を連想させた。
「うわ、やめろ!バカ!離せ!」
「ほらほら観念しなさいってば!」
単純な力では負けてはいないのだが、ロウェナは力の緩急や引いたり押したりとフェイント器用に使い剣を取り上げようとしてくる。
このままでは負けて取り上げられてしまい何とかしなければと必死の抵抗をしながら打開策を思案していると、ふとローウェンに対して行ったあの方法が思い浮かんだ。
「わかった!わかったから一回手を放してくれ!」
「ふむ、わかればよろしいのだよ。」
得意げに笑うロウェナに対して、ノルジスは観念したフリをして腰から剣を外しゆっくりと横向きに差し出す。
―—ふふ、また隙をついて逃げてやろう
目論見を悟られないよう、大きくため息をつき顔を下に向けながらロウェナの様子を横目で伺った。
―—今だ!
ノルジスは先ほどと全く同じタイミングでロウェナが持つ剣を蹴り上げようと前傾姿勢を取った。
「おっと。」
しかし、蹴り上げた足は剣には命中せずに空を切ってしまった。
「あれ?」
ロウェナはノルジスが動く事を察知して蹴り上げる瞬間に半歩程身をかわし奇襲を避けた。
呆気にとられながらバランスを崩し、すぐさま体制を立て直そうとするが、ロウェナをそれを見越して足を引っかけ右腕を掴んできた。
「まったく油断も隙もない。悪いけどアンタのやんちゃっぷりは小さい頃から知ってるんだからね。その程度の悪戯もう見飽きたよ。」
ロウェナは勝ち誇った表情でノルジスを制圧し抑えつけた。ノルジスは腕を背部で固められ全く動きが取れなくなり眉をひそめた。
「さすがにノルジスもロウェナ姉ちゃんの前には形無しだな。」
「はははご愁傷様。」
「笑ってないで助けろー!」
こんなやり取りも友人二人に取ってはいつもの事であり、楽しそうに観覧するだけだった。
助けてくれないとはなんて薄情な友人だろうとノルジスは友人たちを恨んだ。
「じゃあカールさん、ノルジスは持って帰りますねー!」
「ああ構わんよ、気を付けて帰るんだよ。」
「はーい。」
ロウェナは元気よく挨拶すると、ノルジスを引きずりながらイグレット家邸宅へ向かっていった。
「いててて!わかった帰るから!自分で歩けるから引きずるな!」
この後、帰宅したノルジスがテオドルンとローウェンにこってりお説教をくらったことは言うまでもない。
イーリス王国記 あったかい肉 @agid0411
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