第18話 山から来る

友人のCから聞いた話である。

Cの家は山の麓にある。

Cは小学校時代、ある現象に怯えていた。それは、家の裏山から夜になると何かがやって来て、Cが当時寝室として使っていた仏間の周りの庭を這うのだという。仏間には障子があり、その外側は廊下と庭に続く窓があるのだが、その気配はいつも窓の外を何周もするのだ。

「ほんっとに気持ち悪くてさぁ。」

寝ようにも外から気味の悪い気配がする。そして何よりも、時折窓にベタッという音とともに何かが張り付くような音がする。

恐ろしくて寝るどころではなかったという。

Cの家は古い平屋建てであり、部屋数は少ない。本当に耐えられない日は両親の部屋や祖母の部屋で寝ることもあったが、祖母も両親もこの話を信じてくれず、結局は仏間に戻されてしまう。

「でも、もっと嫌なのはね、匂いよ。」

Cが言うには、大雨が降った後などにそれはよく現れたそうだが、特に夜通し雨が降り続いた日に現れた場合、次の日の朝必ずと言って良いほど仏間に面した庭で、魚の腐ったような匂いがするのだという。

結局その現象は、Cの家の裏山が土砂崩れを起こし、山に作られていた古い墓地が潰れるまで続いた。

その墓地は別にCの家族や先祖のものでもない、裏山に昔廃寺があった時のものだそうだ。

今でも正体はわからないが、山の廃寺にあった墓地と何か関係があるのだろうか。

Cは家を出ているが、帰省時は必ず仏間ではなく、リビングで寝る事にしているという。

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耳怪談 聞き集め怪談集 ゑん @jgmtgmgt1m

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