第7話 華麗なスターの旅立ち
翌日
早いに越した事はないということで、次の日には旅立つ事になった俺達は街の門の前にやってきていた。
「キッド様ーーーさみしいですわーーー」
「うわあああんいかないでえええ」
「ちょっと! そこのあなた! 馴れ馴れしいわよ!」
スターの旅立ちということで騒ぎにならないはずがなく門の前には沢山のファンが押し寄せてきていた。
「そんな哀しまないでくれよ子ギツネちゃんたち☆ オレはみんなの為にこの世界を脅かす厄災を鎮めに行くんだぜ。 だから、笑顔で見送ってくれよ☆ キランッ☆」
華麗なスター様は、相変わらずのスタースマイルでファン達に囲まれていた。 そんな光景を門にもたれ掛かりながら俺は眺める。
「なんて顔してるの? 英雄がしていい嫉妬の顔じゃないよ」
「うるせえ」
そんなひどい顔をしていたのか、ラビに呆れられるがつい頭の悪い返しをしてしまう。
「これ以上見てたらアイツ嫌いになりそうだから先行ってるぞ」
「まったく……子供なんだから」
キッドのファンサービスが終わるまで耐えられそうになかった俺は先に行くと伝えるが、何故かラビも着いてくる。
「別にお前は後からアイツと来てもいいんだぞ」
「いや、いいよ。 キッドと二人で歩いてたらファンの嫉妬の目線が怖いし、それに、幼なじみの隣の方が安心するのは当然でしょ?」
「……そうか」
ラビの言葉にむず痒さを覚えながらも、少し嬉しいと思ってしまった。
「またせたね☆」
しばらくしてキッドは街の少し離れた岩場で待っていた俺達の所にきた。
「いや! おせーよ!」
「結構まったね」
間髪入れず、ついツッコんでしまったが、二時間近く待たされたので文句も言いたくなる。
「あはは、わるいね。 オレの旅立ちを記念したライブがつい盛り上がっちゃって☆」
そう、こいつは俺達をほったらかしてライブをはじめたのだ。 始めは一曲だけと銘打っていたが、アンコールにアンコールを繰り返し、挙句の果てにはパフォーマンスをしだしたのだ。
「早めに行動することに越したことはないって云ったのお前だろ!」
「さすがに待ちくたびれたし、お腹も吸いちゃったよ……」
「それは本当に悪い事をしたね。 街に戻ると、またややこしくなりそうだから、次の町で食事でもしようか」
キッドもさすがに申し訳ないと思っているのか、提案すると、ラビは目を輝かせて喜ぶ。
「いいね! じゃあ、早く行こうか!」
「……ああ」
喜ぶラビとは逆にキッドは浮かない顔をしていた。
「カットは来なかったのか?」
「!?」
俺の言葉にキッドはカラダをピクリと反応させる。
「あはは、なんでカットの名前がでてくるのかな?」
キッドは笑いながら誤魔化すが、誰から見ても嘘だと分かる。
「トモダチ、幼なじみと『ナニも云わずに別れる』なんて誰だっていやだろ?」
「……はは、そりゃバレるか」
俺の言葉にキッドは苦笑いをする。
「ああ、アイツは『永遠のライバル』でもあり、大切な『トモダチ』でもあるんだ。 だから、せめて行く前に『行ってくるぜ』の一言でも言いたくてね」
キッドの本音の言葉に俺は馴染みを感じつつ、岩場の横の草むらに眼を向ける。
「だそうだ、『お前はどうなんだ』?」
「え?」
草むらに声を掛けた俺に驚いた顔をしたキッドだったが、そこから出てきた人物にさらに眼を見開いて驚く。
「……! カット!」
カットはキッドを待っている間に俺達の前に現れ、ずっとキッドのライブをみて文句を言っていた。 そして、キッドがこっちにくると、「ちやほやされやがってーーー!!」と叫びながら、茂みに走っていったのだ。
「あっ、もどってきてたんだ」
ラビはカットが戻ってきてると思ってなかったのか驚く。
「…………」
「…………」
キッドは驚いた顔でカットを見つめる。 そんなキッドの前にカットは詰め寄る様に立つ。
「おい、キッドどういうことだ? この街を出るって?」
カットはキッドを睨みつけながらいうが、キッドは答えない。
「オレとの決着はまだついてねえだろ!!」
何故かめちゃくちゃ喧嘩腰なんだが?
「七割オレが勝ってるけど?」
「うるせえ! オレがお前に勝ち越すまで決着はついてねえのと同じだ!」
「いってることめちゃくちゃ……」
カットの言い分にさすがのラビも苦笑いをする。
「オレとの決着は死んでもつけてもらうぜ!」
カットは手を大きく振りかぶりキッドの前にだす。
「……! これは……」
差し出したモノを見てキッドは目を見開いて驚く。
「……オレのスキルで作った『デッキ』だ」
「!」
驚くキッドにカットは言葉を続ける。
「死んでも戻ってこい、そして、オレとの決着をつけろ」
カットは手に持ったケースを強く握る。
「持ってけ」
「……」
「オレ様が作ったデッキだ。 これがあれば厄災なんてぶっ潰せるぜ。 ……だから」
カットは顔を逸らしながらいう。
「『がんばれよ』」
「…………! ああ」
キッドは強く答えるとカットからケースに入ったデッキを受け取った。
「後、それと、『これ』も持ってけ」
「?」
カットはキッドに一枚のカードを渡した。 しかし、そこには『なにも描かれてなかった』。
「これは?」
「
「
「ああ」
キッドの疑問にカットは答える。
「今は『なんの効果もないカード』だが、『切札カード』になるものだ」
「切札?」
「ああ、そのデッキもそうだが、生かすも殺すもお前の使い方しだいだぜ。 それが『切札』だ」
カットは最後にそう一言いうと背を向けて歩いていく。
「カット!」
去ろうとするカットをキッドが呼び止めるが、カットは止まらずに離れていく。
「楽しみに待ってな☆ 次に会う時はこのキッド・ザ・フォックスターの名が英雄として歴史に刻まれてるぜ☆」
キッドはスタースマイルをしてキメポーズを決める。 カットは振り向かずに離れていき、一瞬こちらに手だけを振り去っていった。
それを確認したキッドはカットの去っていった方向に背を向ける。
「さあ、キッド・ザ・フォックスターの冒険譚が幕を開けるぜ☆ よろしく頼むぜ☆ 英雄達☆」
キッドの言葉に俺とラビは頷き返す。
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神から厄災を倒す7人の英雄の1人に選ばれた俺が同じく選ばれた幼馴染と一緒に他の5人を探しに旅に出て共に世界を救いに行くそうです。 たぬきち @tanukitikaramemo
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