第6話 華麗なスターの情報網

「さて……運よくひとりはみつかったけど、他のメンバーの手掛かりがないからな……どうしたものか」

「そうだね」


 カースナチュルを鎮め、カットと別れた後、俺達はもう一度適当なお店に入り、呻る様に考える。


「手掛かりなら、『ある』けど?」

「え!?」


 俺とラビが頭を悩ませているとキッドは呆気らかんと答える。


「えっ!? 他の証持ちの仲間の居場所しってるの!?」


 ラビは飛び上がる様に席から立ち上がる。


「全員って訳じゃないけど、『三人』なら手掛かりはあるね」

「ほぼ全員じゃん!」


 キッドの返しにラビはさらに驚く。


「まあ、三人って言っても、確実に居場所が分かってるのは『二人』だけで、『一人は情報だけ』だね」

「え? どういうこと?」

「二人は『アラン』と『レッブル』の街に一人ずついて、一人の情報ってのは『空に浮かぶ街』に住むって情報だけなんだ」

「『アラン』と『レッブル』ってどこだっけ?」


 ラビが腕を組み首を傾げるとキッドが答える。


「『アラン』は武術が盛んな街でよくアクションスターやスタントマンを多く排出する街で、『レッブル』は様々な競技が盛んでいろんな競技場が立ち並ぶ街だね」

「へえー」


 思ったよりも多いい情報に感嘆としつつ、逆にウチの国王はマジでナニをやったいたのかと呆れてしまう。


「それで、『空に浮かぶ街』ってのはなんだ?」


 気を取り直して俺が聞くと、キッドは顎に手を当て考える仕草をして、少し呻る。


「どうした?」

「あ、すまない。 この情報は憶測でしかないから、はっきりとしたことじゃなくて、なんて言ったらいいか考えてたんだ」

「憶測でも構わないさ。 教えてくれ」

「まあ、そうだね。 情報は共有することに越したことはないね」


 そういうとキッドは言葉を続ける。


「『空に浮かぶ街』ってのは、『移動してる』とも云われてるし『姿が見えない』とも云われてるんだ」

「つまりは、都市伝説ってこと?」


 ラビの言葉にキッドは首を横に振る。


「いや、『情報は真実』だと思うよ」

「なんでそんなこと言い切れるんだ?」


 今度は俺が聞くと、ナニかを思い出す様な仕草をした後、口を開く。


「俺が情報を集めてる時に、本人かは分からないけど【そろそろ仲間が集う、仲間集えば、我が街に訪れよ 空に浮かぶ街で待つ】って、手紙が届いたんだ」

「!?」


 その衝撃的な内容に俺とラビは驚き、無意識に席から立ちあがる。


「それって、本物なの!?」

「その手紙は今持ってるのか!?」


 俺とラビは詰め寄り、キッドは俺達を嗜めながら答える。


「まあまあ、その手紙は『もうない』んだ」

「え?」

「『ペンギンになって、空に飛んでっちゃった』☆」

「はあああああああ!?」

「ペンギンって飛べるの!?」

 

 いや、ツッコムとこそこかよ! なんて心の中で言いつつ、話を続ける。


「しつこいようで申し訳ないが、なんでそれが本物だって確証できたんだ? ただのイタズラかもしれないだろう?」


 俺の言葉にラビは大きく頷き、それを確認したキッドは思い出す様にいう。


「『紫の宝石の証がペンギンにあったんだ』」

「え!?」


 『証』という言葉に俺とラビは目を見開いて驚く。


「あくまで憶測でしかないけど、あれはたぶん、『スキル』だね」

「『スキル』?」

「『ペンギンを飛ばすスキル』ってこと?」

「いやー……ないとも言い切れないけど、たぶん、『伝達系』、『操作系』、『創造系』……それか、それ以外のナニか……または、『全部』かもしれないね」

「煮え切らないな」


 なんとも云えないキッドの考察になってない考察に俺はため息を付く。


「まあ、しょうがないよ。 だって、わかんないんだし」

「……そうだけど」


 ラビの頭の悪い返しが的を得ていたので俺は言葉に詰まる。


「でも、スキルの『複数持ち』ってこともあるのかな?」

「まあ、珍しいけど、可能性はあるね。 見方によってはオレ達もスキルの『複数持ちに見える』からね」

「え?」


 キッドの言葉にラビは頭にハテナを浮かべ首を傾げる。


「オレのスキルのことは話しただろう?」

「え? うん。 弾を操る『鉄火弾マグナム』でしょ?」

「ああ、だけど、これも一応スキルに含まれてるだろ?」


 そういうとキッドは銃を右手にだす。


「オレの場合は大きく分けて、弾を『操作』、銃の『創造』、の細かいことを省くと一応、『二つのスキルを持ってる』ともいえるだろ?」

「ああ! たしかに!」


 ラビは手をポンと叩く。 キッドの言葉に続く様に俺も話を合わせる。


「ラビの場合は、基本は足の『身体強化』だけだけど、俺の場合は、ラビには劣るけど、『身体強化』の他にエネルギーを『付与するチカラ』の『二つともいえる』んだな」

「そう、だから、スキルは『ひとつ』だけど、スキルで『複数持ち』だとオレは考えるね」


 やっぱりこいつ結構頭回ってすごいやつだな……。 めちゃくちゃ頼もしいが、正直、くやしい……。 なんて思っていると、ラビが口を開く。


「それで、『最後の一人』の情報はみつからなかったの?」


 話が盛り上がって忘れていたが、そんなことをいっていたなと俺は思い出した。


「ああ、いろいろと沢山のコネを使って情報を集めてもらったんだけど、上手く情報が集まらなくてね」

「なんでかな?」

「相当な、田舎にいるとかか?」

「まあ、その可能性はあるだろうね。 だけど、その『最後の一人』を『先にみつけないといけない』とオレは思うね」

「そうなの?」

「ああ、そのメッセージを送ってきたやつの伝言が『仲間集えば、我が街訪れよ』だからな」

「なるほど、『全員集めてからきやがれってんでいてやんでい』ってことだね」

「そんな口調かは、分からないけどね」


 ラビの発言に軽くツッコミながら、キッドは話を戻す。


「まあ、物事は一気にじゃなくて、一つずつコツコツと進めるものさ。 だから、まずは、ここから一番近い街の『アラン』に行ってみようとオレは提案するね」

「そうだな、だが、今すぐにでも移動したいが、お前はそうもいかないな」

「え? なんで?」


 俺がキッドにいうと、ラビが首を傾げる。


「考えてみろよ。 こいつは『自称スターの本物のスター』だぞ。 そんなヤツが急にいなくなる訳にいかないだろう?」

「いい方が嫉妬混じってるよ」


 俺の言葉にラビはジト目を向ける。


「それなら問題ないよ。 活動休止の宣言はしてきたからね」


 キッドはまたしても呆気らかんと答える。


「どこまで『見据えてるんだ』……」

「云っただろう『なんとなく感じる』って」


 若干引き気味にいうと、キッドは「そんな警戒するなよ」と言わんばかりに笑いながらいう。


「もう、ワタルは警戒しすぎ、よし、じゃあ、準備が出来次第出発だね」


 そういうとラビは拳を前にだし、キッドも拳をだし当てる。 二人は俺の方を見て俺にもやる様に眼で訴えてくる。


「……はあ」


 俺はため息を吐くと、拳を前にだして二人の拳に当てる。


「一人目の英雄が仲間になったね!」

「頼りにしてるぜ☆」

「おう」


 なんだかんだ一人目が見つかって安心していた俺は軽く笑い返した。  

 


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