後編 ヤバい村の宴と怯える竜

 私は魔物が闊歩する森の中にある村で生まれ育った。


 昔は私の髪や瞳は『悪魔』と呼ばれ、迫害されたらしいがそれは私が生まれるずっと前の話で、私は髪や瞳の事で何かを言われた事は無い。


 優しい両親と村に来る魔物から身を守る特訓をして、

 村の子と一緒に村人が倒した魔物の解体を手伝って、

 魔物を1人で倒した日には両親と友達、皆がお祝いをしてくれた。


 私は、この村が大切で大好きだ。


 だから、村の為に、両親と友達の為に


「契約をすべて破棄しろ」

「ゥゥ、します。破棄しますー!!!」


 竜をネットとロープで拘束し、身動きを取れなくした後、唐辛子スプレーと轟音を出す魔道具、棒で撲る、をひたすら竜に味わってもらった。


 1度気絶してしまったりと思ったよりも時間が掛かってしまったが、やっと竜が折れてくれた。


「じゃあ早く契約破棄して」

「します!…でも拘束を解いてもらえると……」

「え?」

「なんでもないです!」


 何か言ったようだが聞こえなかったので聞き返したら、元気に返事をして竜が魔法を使い契約の破棄を始めた。


 竜が何かを呟き、魔法の光が洞窟を満たすのを見ながら思う。


 これから先、村は生贄を出す必要がなくなる。

 村の人が暗い顔をする事がなくなる。

 生贄の子とその家族、友人が大切な人と離れる辛さがなくなる。

 それは、きっと村にとって嬉しい事だろう。竜にはやり過ぎたなぁ、とは思うがまぁこれまで喰らってきた生贄の分まで今日苦しんだ、と言うことでいいだろう。


「~~村との契約を断ち切り、契約の内容すべてを破棄する!」


 魔法を使っていた竜の一言で一際強い光が満ちて微かにガラスの砕けるような音がした。


「…あの、契約解けました」

「そう」


 無事に契約が解けたようだ。なんだか、体が軽くなって気分が楽になったような気がする。村の人も契約破棄の影響を感じていたりするのかな。


「あっ、これで帰っても良いですよね!拘束、外してもらえますよね!」


 竜の言葉について考える。

 竜のお願いを聞き入れて、拘束を外したらほぼ必ず逃げるだろう。それは困る。空高くに逃げたら私では追えない。


「そのお願いは聞けない」

「なっ、何故だ!あ、いえ、何故でしょうか」

「拘束を外したら逃げるでしょう。それと、村の人の前で『契約はすべて破棄した』と宣言してほしい」


 きっと体が軽くなった私のように、村でも気付いた人はいるだろう。でも、宣言させた方が皆が安心できるはずだ。

「契約を破棄した」と宣言できるのは本当に破棄した場合だけ、嘘では言えない。竜がハッキリと宣言すればそれだけで契約破棄が行われた証拠になる。


「はい!わかりました!」

「変な事は考えないでね。絶対に」

「もも、勿論です!」


 一応竜に釘を刺して洞窟を出る。


 洞窟を出たら、村の人に渡された閃光弾を使う。色が三色あり、赤は危険、黄色が助けを求む、青が村に帰る。今回使った色は青、パーン!と日が傾いた空に青色の閃光弾が射ち上がり、村のみんなに無事村に帰れる事を知らせた。


 ズルズルッ、ガンッ!


「痛ッ!グゥゥ…」


 そして私は竜の尾に結んだロープを持ち、竜を引きずりながら、足場の悪い村への道を歩いた。


「重い……」


 それにしても竜って重い。誰か来てもらうように言った方が良かったかな、とため息を吐く。


 竜は今まで運ぶのを手伝ったどの魔物よりも重かった。



 ◇◇◇



「あ!帰ってきた!おーい、ペリルー!」


 洞窟から竜を引きずり歩いて数時間。日が沈み、星空が輝く道中を歩き、やっと村に帰ってこれた。


「おかえりなさい!ペリル!」

「おかえり~」


 村の人全員が村の広場に集まって私を出迎えてくれた。次々に「おかえり!」と言われる。

 みんな、朝ここを出る時は今生の別れの如く泣いていたのが嘘のように笑顔だ。私も頬が緩んでいるのを感じる。


 ただ1つ気になった事を訊く。


「スーレン、みんなで武装してるけど、どうして?強い魔物でも来たの?」

「ペリルから帰ってこれるって連絡があったけど相手は竜でしょ?心配で村の全員で一応警戒をしていたんだよ!」


 お爺さんお婆さんから、歩き出したばかりの子供まで、みんなガチガチに武装していた。気になって訊いたが、理由を聞いて納得する。

 確かに忘れかけていたが、竜は最強の魔物だ。最強の威厳なんて一ミリも無くなってしまったが、世間では誰もが恐れ戦く魔物。それが竜なんだった。


「そうだったんだ。…あ、それでこれがその竜だよ」

「うん、わかるよ。村に着く前から大きな影がグングン近づくから分かってはいたよ。でもさぁ、そんな『今日はハンバーグね』みたいなノリで言うことじゃないよ。わかってる?竜だからね!」

「うん。竜って紹介したし、わかっているよ」

「言いたいところが伝わってない!」


 スーレンとワイワイ話す。暫く話していると、村人達を掻き分けて誰かがやって来た。


「ペリル!ああ、良かった!」

「お母さん!」


 人を掻き分けてきたお母さんは私を視界に納めた瞬間、私に抱きついた。暫くギューっと抱きしめたお母さんは肩に手をおきながら


「怪我はない?お昼はちゃんと食べた?服は少し汚れてしまったわね後で洗濯するから籠に入れて置いてね」


 息継ぎ1つせず、怒涛の勢いで話した。


「うん。大丈夫だよ。お昼ご飯美味しかったよ。わかった、服は忘れずに籠に入れるね」


 お母さんは焦ると焦るだけ口調が早くなる癖がある。よく噛まないな、と感心するほど早い日もあったから今日はまだ落ち着いているみたいだ。


「そう、ペリルおかえりなさい!」

「ただいま、お母さん」


 言いたい事を言って、少し落ち着きを取り戻したお母さんが『おかえりなさい』と言った。

 お母さんの眼に涙の跡があるのに気付いたが、見なかった事にして『ただいま』と返す。


「無事に帰って来た娘を見た反応がお昼と服の確認って…」

「ピクニックに行ったって勘違いしそうだ」

「娘もそれに平然と返すところ、母娘だなぁ」


 私とお母さんの周りに立っている村人達が「感動的な場面のはずなのに」と呆れた表情で何かを言っていた。


「……あの、私はどうすればいいのでしょうか…」

「あ。忘れてた」


 引き摺られ、岩やら木にぶつかり、「時間が掛かる」とショートカットの為に崖を飛び降り、気絶した竜がやっと目覚めてペリルはその存在を思い出した。


「あらあら、ペリル。お母さん、ネットでグルグル巻きにして運んだのね。どうして?」

「竜は飛べるから、飛ばれたらどうしようと思って…」

「そうねぇ。確かに翼を折るのは大変そうだし、ネットなら確実ね。それにちゃんとネットがほどけないように、留め具で固定したのね。偉いわ」


 よしよし、とペリルを撫で、母親に撫でられたペリルは気持ち良さそうに笑う。

 その光景に微笑ましい顔をする村人。

 ネットでぐるぐる巻きの竜を見た反応にしては、絶対におかしい光景に唖然あぜんとする竜。


「竜殿、ペリルを喰わずこの村に来たということは契約を破棄したのですか?」


 そして突如現れて竜に質問したお爺さん。


「ギィャァァ!!」


 竜は驚きで跳び跳ねた。



 ◇◇◇



「お初にお目にかかります。儂は村の村長をしている者です。村長とお呼び下さい」


 ガタガタと震える竜に向かって、お爺さん改め村長は礼をして自己紹介をした。


「わ、我、いや、私は竜だ」

「そうですか、して竜殿。契約は一体どうなったのですか?」

「あ、ああ。それは…」


 ニコニコと柔和な笑顔を浮かべ、穏やかな声で訊く村長。緊張の面持ちをしているが警戒心は相当無くなってきた村人。

 全員が武装をしているが、ペリル化け物も遠くにいてすぐにはこれない。

 その状況に気が付いた竜は光明を見いだした。


「それは流石にこの体制で言うのもアレですし、ネットとロープをほどいてもらってから言いましょう」

「ああ、申し訳ない。すっかり忘れていました。何分もうジジイになってしまったもので。…誰か、ほどく作業を手伝ってはくれないか」

「おう!村長、手伝うぜ!」


 竜の言葉に村長は頷き、村人に声を掛けた。その声に集まった村人が竜に巻き付くネットと尾を縛っているロープをスルスルとほどいていく。


「……ふぅ。これで話して頂けますかな?」

「ああ。助かった村長よ。これで……フフフ、フハハ、ハーハッハッハ!」


 バサッ!と翼を広げ、暴風を起こしながら竜は空に飛び立った。眼下でペリルが見上げているが、洞窟とは比べ物にならない遥か上空にいる竜にロープもネットも唐辛子スプレーでさえ届きはしない。


「我は自由だ!このまま逃げれば…」

「ほぁー、高いですなぁ。竜殿」

「ギュルァ!?」


 ペリルに挑むなんて心はとっくに無くなっている竜はそのまま遠くへ飛んで逃げようとしたのだが、後ろから聞こえた声に驚き声を上げた。


「生まれてこのかたこんな高い場所には来たことがない。素晴らしいものですなぁ。どこまでも広がる星空に入ったようじゃ。ほっほっ」

「そ、そそそ、村長。なぜ?」

「それは勿論、竜殿が飛び立ったので乗ったのです。誰もが1度は憧れた『空を飛ぶ』と言う夢が叶って嬉しいですなぁ。して、体はほぐれましたか?早く降りなければ皆を待たせてしまいます」

「は、はい!勿論ですッ!!」


 のんびりと、地上にいたときとなんら変わらない声で話す村長に促され、竜は村に向かって急降下した。



 ◇◇◇



 急に空を飛んでいった竜が降りてきた。


「楽しかったですよ。竜殿。ありがとうございます。また、よろしければ乗せて下さいね」

「はい!こちらこそ、楽しんで頂けて良かったです!!」


 どうしてすぐに降りてきたのかと思ったが、村長が背中から降りてきて納得した。

 村長は未だ現役で、村に来る魔物を倒している。『体の節々が痛くて動きが鈍ってしまったなあ』と言っていたが、それでも強い。実際、模擬戦を竜の洞窟に行く前にしたのだが、私では勝てなかった。

 ……あれ?村長って竜よりも強い?


 そんな事よりも、ニッコニコの笑顔で礼を告げた村長に竜は背筋を伸ばして直角に頭を下げている。

 その姿は舎弟そのものと言える。


「急に竜が飛び立ったと思ったら、村長!なんで乗っているんですか!」

「すまない。空に飛ぶ竜を見たら嬉しくなってしまって、つい」

「『つい』じゃないんですよ!そんな面白い事なら誘ってくださいよ!」

「…は?」

「まったく父さ、じゃない…村長はいつもいつも……」


 そんな現役バリバリで元気いっぱいの村長に怒った声をして、実際は嫉妬の言葉を言っているのは村長の息子だ。


 楽しそうだったから。


 そんな理由で怒るなんて端から見ても、相当ズレている。そんなに竜の背中に乗るのは良い事なのかな。村の子供達も村長を羨ましそうに見ているし。


「まあまあ、それよりも契約を破棄したのかどうかを竜殿から聞かなければ」

「ああ、そうでしたね。……次こそは絶対、竜の背中に乗るんだ…!」


 どうしても竜に乗る夢を諦められない息子だったが、村長の言葉に渋々従った。

 騒ぎに集まった他の村人、スーレンとペリルのお母さん。竜を連れてきたペリル。


 その全員が見つめる先は竜。


 見つめられた竜は思った。


 自分を倒したペリル、竜を連れてきても動じない村人、ペリルのしたことを平然と受け止める母親、一瞬で背中に乗った村長、その村長に嫉妬した村長の息子。


 大概おかしい。


 他の村人もヤバい奴ばっかりなのだろうか。そう、恐怖を抱いた竜はストレスで倒れそうだった。


「さぁ、竜殿。教えて下さい。契約がどうなったのか」


 だが、倒れそうになっている竜を村長が許さない。やんわりと竜に話すように促した。


 その村長の優しい声ですら恐怖の対象になっている竜はガタガタと震えながら、それでも言わなければ、


 ペリル化け物村長化け物に殺される!


 と感じて、消えそうになった意識をかき集め、それを使って竜は全力で叫んで宣言した。


「あ、ああ、ァァァ!契約はすべて!破棄したァァァ!!!」


「おお!本当に、契約が無くなったのか!」

「やったな!婆さん!」

「ああ、生贄になった私の友も喜んでいるだろうさ…」


 竜の宣言を聴いた瞬間、村人はあちこちで喜びの声を上げる。


 生贄の問題はずっと村人達の間で問題視されていた。生贄以外は洞窟に近付く事すら不可能。生贄が攻撃する案もその昔に出た事があったが、生贄も武器や防具を装備して洞窟に行けない為、却下された。


 だが、今回は村長主導の下、村人と生贄の対象になっている少女、その親で話し考えた。

 そして1つの作戦を実行した。


 生贄の対象になっている少女、13人の内魔物を1人で倒した経験がある者、生贄として竜の下に向かってもいいと手を挙げた者、その2つの条件を満たした5名でバトルロワイヤルをした。武器、防具は持ち込めないので、棒か素手での格闘だった。


「勝者は……ペリル~!!」


 村に帰ってきて最初に話していたスーレンと一騎討ちをして、ガードをしているスーレンを正面から殴り倒してペリルが勝利した。


「我々、全員で選んだ護身グッズだ!少しでも、役立ててくれ」


 そして村人が『武器』又は『防具』に接触しないであろう道具を身繕い、ペリルに持たせ、ペリルは村人から貰った道具を持って洞窟に向かい、竜と対峙した。


「頑張ったわね、ペリル!」

「凄いよ!ペリル!」


 結果は知っての通り、ペリルは竜に勝ち、村は竜の契約から解放された。


「お母さん、スーレン、ありがとう!」


 生贄の少女は竜を倒して物語はめでたしめでたし。




 そうなればする事は1つ!


「宴じゃあーー!!」

「「「イエーイ!」」」


 ハイテンションの村長による音頭で宴が始まった。


 実は、ペリルが閃光弾を打ち上げたのを確認してすぐ、村人は宴の準備を始めていた。

 肉の調達をして、解体し、料理をして、綺麗に盛り付けた。

 大皿に飾られたが静かに鎮座している。


「あの魔物は……」

「おや!流石ですな、竜殿。知っておれらるのですか」

「そ、村長!まぁ…」

「ハッハッハ!宴や良い事があった日にはあれを食べるんですよ!美味しいですから」

「そうですか……」


(いやいや!冗談じゃない!アイツは確かに旨いが、狩るのが面倒な魔物なんだぞ!?それを、『良い事があったから』で狩ろうと思うか普通!)


 心の中で静かに絶叫する竜だが、この村で常識なんて物を気にしても意味はない。


 今回の宴の主役は、狩りは大変だが味は絶品。焼いても、煮ても、何でも美味しい。とろけるような食感でありながら旨味が口いっぱいに広がり、噛むたびに極上の肉汁が溢れる。それなのに、満足する一歩手前で消えてしまい、また次の一口を口に運んでしまう。子供から大人、老人までが楽しめる究極の肉。

 世界中で求める者が後を絶たない、そんな至極の肉なのだ。


 え?そこを聞きたいんじゃない?


 ……ああ。そっか、種族についてか。


 では改めて説明しよう。

 魔物の名前は『ルナティックブル』と言う名前で、見た目は赤毛の牛。ただし、体はでかく強靭でその上素早い。4足歩行も2足歩行もしてくるし、岩や木、なんでも正確に投げてくる。

 近付いたら魔法を使ってその場に固定されて突進か蹴りを受ける羽目になる。やっとのことで追い詰めたと思ったら仲間を呼び、円形に敵を囲いジリジリと体力が尽きるまで追い詰められる。竜ですら、油断すれば狩られる側になる。そんな面倒で強い魔物だ。

 その分美味しいが。


「さぁ、ペリルちゃん。いっぱい食べてね!」

「ありがとうございます!」

「そうさ!沢山狩ったからなあ!遠慮しなくていいぞ!」

「三体狩ったんだけど、一体はペリルのお母さんが単独で狩ってたよ」

「そうなんだ。凄いね、お母さん。私はまだルナティックブルを狩る勇気はないよ」

「あらあら、ペリルなら大丈夫よ。飛び上がって首を落とすだけだもの~」


 それだけで済んだらどんなに楽か、と聞こえた村人と竜は思う。


 ルナティックブルの頭上に飛ぶ行為はルナティックブルのエサとなる事と同義だ。何故なら、頭上に飛んだ瞬間から岩やら木やら手頃な魔物やらが飛び、着地をしようとしたら落下地点に先回りされ角に貫かれる。それらを全て避け、角に当たらないように首を落とす。それは、飛び上がるだけ、なんて言葉で成せる技ではない。


 本日の主役と言ってもいいペリルは、村人にひっきりなしに話し掛けられていたが、隙を付きコッソリと騒ぐ村人から離れた。


「ん~!この味、この味!美味しい!」


 離れた場所にちょうどいたのはスーレン。ペリルの友人で、どちらが竜に挑むのかで戦ったライバルだ。そのスーレンが美味しそうに食べているのはルナティックブルのお肉だ。なぜか真っ赤になっているけど。


「スーレン、それ美味しいの?大丈夫なの?」

「うん!ちょうどいいくらい!辛さの奥に感じる旨味!たまらないよ!グリムリーパー最高!」


 そう言ってまた美味しそうに食べる姿を見て、この趣味だけは理解できない。と思った。


 誰もいない宴の端で、竜と村長そしてその息子が話していた。


「竜殿、俺もどうか、どうか背中に乗せて下さい!」

「も、もも勿論です!!」

「オー。良かったのう。夢が叶うぞ」

「やった!父さん、竜に乗れる!」

「そうか、まぁ酒でも飲もう」

「ああ!父さん、注ぐよ」


 村長の息子が竜に直談判して、背中に乗る約束を得る為に。無事約束出来た息子は喜び、父親と酒を飲み始める。話しの種は勿論、竜の背中がどうだったかについてだ。


 あっちでも、こっちでも笑い声がして楽しい宴は騒がしく続く。


 そんな中、竜はコッソリとため息を吐いて思った。


(ああ、こんな事になるならこの村と契約なんてしなければ良かった)


 後悔先に立たず。遠い昔の行動を悔いても、状況は変わらない。


 渡されたルナティックブルの肉と、酒を見て少し考えた竜はグビグビと酒を飲み、ガブリと肉にかぶり付き宴を楽しむ事にした。

 こんな化け物に囲まれて、五体満足で生きている幸運に感謝しながら。


 その後、竜は暫く村に留まり約束通りに村長と村長の息子を乗せて空高く飛んだり、子供の遊びに付き合ったり荷運びを手伝ったりした後、村を離れた。

 竜はその後、1度も人間に接触する事なく人里離れた場所で静かに暮らしたらしい。


 村はといえば特に変わりなく日々が過ぎた。

 生き倒れていた者達を見つけて村に案内し、村に迎え入れたり。

 村の資源に目をつけたある国に戦争を仕掛けられたが、全てを返り討ちにしたり。

 森の奥に封じられた悪魔が解放されたが、村の子供達によってボコボコにされたり。

 ルナティックブルの数が減ってきたので繁殖するように試行錯誤したり。

 それくらいだ。

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生贄少女は悪しき竜を倒す 小春凪なな @koharunagi72

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