Chapter 4
「ドラ、クマ……?」
「ナニソレ、ドラゴンと熊、訳してドラクマとか?」
「ドラゴン、熊?」
「こういうの、
「ええと、確かドラゴンは世界の神話においてはモンスターの王で、熊は北米においては百獣の王、だったはず……だけど」
「グレイシスよ、勇者たちに見せてやるがいい」
「はい! 勇者様、これが【ドラクマ】です」
グレイシス王女が、司祭の一人から差し出されたものを掲げる。
目にした瞬間、それが持つ美しさに、クラスメイトのみならず司祭たちも嘆息した。
ドラゴンでも、熊でもなかった。
「なにこれ」
「綺麗……!」
【ドラクマ】は、宝石だった。
赤ん坊の握りこぶしくらいある、静謐な輝きのルビー色の宝石だ。
「これが、【ドラクマ】?」
「え、あるじゃん。わたしたち、帰れるじゃん」
「正確に言えば、これはそのうちの一つ。【ドラクマ】は、全部で6つある。そなたたちには、残りの5つを集めてもらい、魔王を倒してもらいたいのだ」
この状況を、
今の自分は、びっくりするくらい落ち着いている。
「
去年の親戚の集まりで、親戚の
「そうじゃなきゃ、
「
「悪い悪い、褒め言葉のつもりだったんだけど。そういえば、今回行くのはウクライナだっけ。大丈夫か?」
「定期的に連絡くれるから、多分、大丈夫だと思います」
ちょっと特殊すぎる職業の人が父親なせいか、八千穂は小さい頃から妙に敏いところがあった。
なんていうか、「やばいわー、これ絶対良くないわー」っていうシチュエーションにものすごく敏感なのだ。
今がまさにそうだ。小学生の時に友達のお母さんに誘われて、変な宗教の集会に連れて行かれそうになった時に味わった気持ち悪さに似ている。
もし、ここが異世界じゃなかったら、その時みたくトイレに行くふりをして逃げていたところだ。
「はっきり言って、これ、ものすごくやばいんじゃ……」
しかし、そう思っているのはどうやら
「質問、よろしいですか?」
りん、と――空気を震わす美麗な声が響く。
見れば、それまで沈黙を守っていた
「その【ドラクマ】とやらを集めて、魔王を倒せば、わたしたちは元の世界に帰れるのですよね?」
「うむ、そうだ」
「買いかぶりではありませんか?」
物怖じしない口調で紡がれたその一言に、どよめきが走る。
「流石、
「どういう意味だ?」
「そのままの意味です。わたしたちは、ただの学生。勇者様、などという素晴らしい称号を賜る身分の者では決してありません」
「司祭長ハーヅよ」
「御意に」
王様が、
その代わり、司祭が一人、進み出る。
「王に代わり、ここから先はこの司祭長ハーヅがお答えしましょう。では、早速ですが皆様、「ステータス・オープン」と唱えてみてください」
「ステータス・オープン」
そう唱えると、目の前にRPG的な青く光るボードが現れた。
「きゃっ!?」
「えええええええ!?」
「なにこれ、すごい!」
「キター! テンプレ、キター!」
「……へぇ」
「ふぅん……」
ついて行けない様子の
トップカースト3人は、見ても対して興味なさそうな感じだ。
皆、それぞれの反応を示す中、
「……えー、なにこれ、やばくない?」
【種族】人間は、当然分かる。八千穂はエイリアンじゃないし。
【HP】はヒットポイントだから体力、【MP】はマジックポイントだから魔力。あとは、【攻撃力】、【防御力】、【精神態勢】――単語の後ろには、いいんだか悪いんだか不明な数字がずらずらずらずら。
問題は、この後だ。
ファンタジーのご定番こと、【スキル】。
「気配隠蔽、気配察知、危険察知、言語理解、トラップ解除……ダンジョンとか行ったら便利かも。え……変装? って何? 音声偽造? 鑑定、アイテム創造および偽造……偽造!? 偽物作ってどうすんの? 縄抜け、錠前破り、暗号解読、操縦!? な、なにこのスキル!?」
極めつけは、【職業】。
これらの異常な【スキル】を持つ、その【職業】の名は。
「……ナニコレ」
どらくまっ! 追放された怪盗少女は、ガンマンとサムライから溺愛され中です 企鵝モチヲ @motiwo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。どらくまっ! 追放された怪盗少女は、ガンマンとサムライから溺愛され中ですの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます