第17話時代の変化

 

 最近、巷では「高貴なる令嬢の躍進」などという作品が流行っているようです。

 なんでも、その作品を書いた作家さんが王族との繋がりがあり、そこから王族をモデルにした話が次々と生まれているとかいないとか……。そんな作家いたかしら?


 家柄、血筋、才能。

 全てを併せ持った令嬢がアホな婚約者を持ったことで大変な苦労を強いられる話は読んでいて共感を覚えました。何処にでもアホな男はいるものです。若さ故というよりも本人の気質でアホを全力投球する男の話も読んでいて笑いを誘いました。地位の低い女性からのアプローチは色仕掛けや脅迫に近い強引さは現実なら思わず顔をしかめてしまうところでしょう。それをコミカルに書ききってしまう筆力には脱帽しますわ。

 一応、恋愛小説ですがついつい笑ってしまうのですから仕方ありません。

 まぁ、現実でやられるとドン引きですけどね(笑)


 どうやらペンネームで発表しているようで、誰が作者なのか判明できてないそうで……男性なのか女性なのかも分からないそうです。残念ですね。一度お会いしたいと思っていましたのに。





「案外、身近な存在かもしれませんよ?」


 そう囁いたのは長女でした。

 意味深な笑顔で微笑む娘の姿に首を傾げるしかありません。


 そんな存在いたかしら?と――


 そんな小説は若者たちのバイブルとして爆発的に売れているそうです。

 なんでも今後の貴族社会で生き抜く知恵、もしくは心得だとか……。


 普通に楽しむための物ですわよね?

 最近の若者についていけませんわ。



 この後、時代の変化と共に小説の人気ジャンルは変わっていくのですが、「高貴なる令嬢の躍進」は根強い人気を保ち続けていくことになります。そして多くの読者の心を掴み、続編を渇望されるようになるのはもう少し先のお話。


 更に月日が絶ち、それはシリーズ化を果たすほど人気を博していくことになるのですが、それはまた別のお話。

 今を生きる私達の知らない未来で、シンデレラストーリーにちょっとした変化がもたらされていたことをこの時の私は知る由もありませんでした。


 無邪気で虐げられる美しい身分の低い少女がヒロインではなく、陰謀渦巻く世界で切磋琢磨に自分を磨き上げ、どんな逆境に立たされても諦めることなく自分の信念を貫き通す強くしなやかな主人公が人気を集めるようになったのだと言うことを。

 そのモデルとなった女性は、とある国のとある王妃。

 頭脳を武器にして夫である国王を支えながら国民から絶大な支持を得た人物だと囁かれる時には、残念ながら私は夫の隣で永遠の眠りに付いていたため知ることはありませんでした。


 ただ、私の曾孫にあたる王女が新たなヒロインのモデルにされるという不思議な現象が起きておりました。


 まさしく、時の流れとは不思議なものですね。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】酒は飲んでも飲まれるな~一夜を過ごした相手、それが問題だった~ つくも茄子 @yatuhasi2022

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ