終わりゆく日本におはようを
しろくろ
第1話 開通
みんなは世界の終わりと聞いて何を思い浮かべるだろうか?
核戦争による人類滅亡?地球外生命体による侵攻?AIによるシンギュラリティの到来?
とまあ、おおよそ人類の滅亡=世界の終わり、と考えてることがほとんどだろう。
ただし人類を滅亡させる方法は数あれど、どれも机上の空論、実行するにはいささかハードルが高すぎる。
ただある一国、とりわけ島国である日本という国を亡ぼすのであればどうだろうか。
もちろん人類滅亡や日本滅亡なんて空想にすぎないし、正直そんなことは起こるはずがないと思っていた。
ただ…
『起こっちまったもんはしょうがない』
時間は巻き戻らない
目の前の現象は夢ではない
まぎれもない現実
「なんなんだよ…これ…」
そんな映画のような言葉も、つい口から漏れ出してしまうほどのありえない光景。
こんな世界はアニメやゲームの中だけで、実際にはありえないと思っていた。
少なくとも俺、
さっきまで、こんな超常現象とは無縁の普通の高校生だったはずだろ!
_______________________
ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!
けたたましい目覚ましの音で目が覚める。
時刻は朝の7時
「んん...起きるか...」
もぞもぞと布団から起き上がり、手早く布団をたたみ上げ、冷凍庫からパンを一枚トースターへ。
パンを焼いている間に歯を磨き顔を洗う。
これが一人暮らしの俺の、毎朝のモーニングルーティーンだ。
(今日の気分は…バターかな)
冷蔵庫からバターを取り出しパンに塗る。
気分で選べるよう、常に冷蔵庫にはバターか何かしらのジャムを常備している。
割とグルメの自覚はあるが、グルメのラインが低すぎるといわれれば、そうかもしれない。
そんなことを考えつつ、リビングの椅子につきぼーっと朝のテレビを眺める。
テレビからは連日にぎわっている企業の不祥事、芸能人のゴシップなどが目まぐるしく流れてくる。
正直興味はないが、朝のBGMにはちょうどいい。
朝ご飯を食べ終え、制服に着替えたところで…
ピン、ポーン…
慎ましめのチャイムが鳴り、今が7時45分であることを自覚する。
毎朝ぴったりの時間に家に来る奴といえば、俺が知る限り一人しかいない。
チャイムの音を聞き、自室からカバンを取り上げて、一人暮らしにちょうどいい1DKの部屋を縦断し玄関に向かう。
そして玄関のドアを開け、外に出た。
「おはよう、あやめ」
そこには俺の幼馴染で同級生の
紺のブレザーに白のブラウス、下も紺のスカートという学校指定の制服を見事に着こなし、見る限りシミもシワの1つもない完璧さ。
着ている服の完璧さよろしく、本人も髪の乱れ1つなく常に艶のある黒髪、まつげも整っており、目は少し釣り目、化粧も程よくナチュラルで、どこに出しても恥ずかしくない完璧さ。
誰が見ても美人、と言わざるを得ない雰囲気をまとい、所作も完璧な、いわゆる完璧美少女を地で行っているな。
「おはよう、のぶくん」
こいつは昔から俺のことをあだ名で呼ぶ。
そして小、中、高とすべての学校が同じで家も近いため、寝坊しがちな俺たちを毎朝起こしつつ、一緒に学校に向かうというのがもはや恒例になっていた。
俺たち、というのは実はもう一人...
「やっべぇぇぇ!!!!寝坊した!!!!!!」
共用部にまで聞こえるほどの大きな声、ドタドタと響く大きな足音
「今日もギリギリかしらね…」
「ああ、たぶんそうだろうな」
と、お互い慣れたとでも言わんばかりに話し、二つ先にある部屋のチャイムを鳴らした。
ガチャ!バン!!!
壊れるんじゃないかと言わんばかりの勢いで部屋のドアが開く。
「おお!のぶ!!!あやめ!!!ちょっと待っててくれ!!部屋入ってていいから!!」
外で聞こえた声と寸分たがわぬ元気さで、部屋に招き入れられる。
「準備、まだかかりそうか?」
「おう!あと10分くらいだから、部屋で待っててくれ」
じゃあお言葉に甘えて...と言いながら家に入る。
朝から元気なこいつは俺たちのもう一人の幼馴染、
昔から寝坊癖があり、俺たちが三人で学校に向かう時も、大体はこいつが起きるのを待つのがもはや日課だった。
終わりゆく日本におはようを しろくろ @469698
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