最終回 第5話 哲平の旅立ち
「可愛い姪っ子に何もなくて良かった。ところでルナ、笛はどうした?」
「首にかけてる。吹くの出来なかった」
「そうか、それどころじゃなかったんだな」
哲平はルナの頭を優しく撫でたあと、一平に訊いた。
「ガクを追いかけ回していた二人組だったんだろ」
「ああ、大麻の栽培に販売、車の中から覚せい剤まで出てきて、おまけにビルの1室に、不法就労の女の子が3人監禁されていた。まだ余罪がありそうで、当分出てこられない。いや、無期懲役くらうかもしれん」
「じゃあ、外出するとき、もうビクビクしなくていいんですね」
ガクの晴れやかな顔を久々に見た。
ガクが失明したときの加害者の仲間が逆恨みして、執拗にガクを探していた。
だから、近所に買い物に行くのさえ憚られていた。
その二人組がガレージで大麻の栽培をしていて、シャッターを下ろしたときに飛んだ葉の1枚をルナが拾って持ち帰った。手には荷物がいっぱいであとで拾おうと思っていたが、なくなっていた。
ルナが持ち去ったと気付いた二人組は、ルナを拉致しようとした。
それから先の筋書きは考えてていなかったようだったが、それだけに恐ろしい。
「おい、肉が焼けたぞ。野菜も焼こうぜ」
「ヒーローのヨッシー、いっぱい食え。一之介と背丈変わらんのじゃね」
「僕、1年で一番大きいんです」
「ルナはヨッシーから離れろ。そんなにくっついていたらヨッシーが食われんだろ」
ルナはヨッシーの手を一度離したが、またくっついた。
「ルナちゃん、肉食べる?」
「うん」
ヨッシーに口に入れてもらうと、ルナはニコニコといつまでも肉を噛んでいた。
それをオトが見上げていた。
「オトちゃもいるの?」
「うん」
ヨッシーに口に入れてもらうと、オトは満面の笑みを浮かべた。
「最近、ノコちゃんとは一緒に帰らないの?」
「ううん、帰ってるよ」
するとルナがポケットから取り出して見せた。
「ほら、ノコちゃ」
それは以前、ルナの誕生日のプレゼントに、ヨッシーがクレーンゲームで取ったハムスターの縫いぐるみだった。
「えーっと発表があります。俺、哲平は休暇を取ろうと思います。仕事を抜けて申し訳ないけど、みんなも休んでくれたらいい。1年分の給料は口座に振り込んであるし、それで足りなければナオさんにお金を預けてある」
「哲兄、旅行でもするの?」
「レイ、長い旅になるかもしれない」
「えっ、帰って来ないつもり?」
「うーん、わからん。雑念を捨てに、八十八か所巡りでもして来るかな」
ナオが声を放った。
「それ流行りなん? 顔なしさんも同じようなこと言うとった」
バーベキューをする屋上に、春だというのに冷たい風が吹き抜けていった。
【了】
🏠この回はここで終わりです。
最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
どちらかというとルナの危機の回でしたが、またすぐにお逢いしましょう🎵👧🎒
続きまして
『🏠瑠璃子の休日』
よろしくお付き合いください。
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330663672585798/episodes/16817330663675833001
9🏡哲平の煩悩💓 オカン🐷 @magarikado
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