最後の一文に唸りました。

主人公が気だるげな様子で授業を受ける場面から始まる当作品。
個人的にはどっちでもいいのですが、この界隈には会話文から物語を始めさせることに敏感な方々もいるので「セリフスタートかぁ……」と変な感情を抱いて読んでいました。

まず目に留まったのは『月が落ちてくる』という設定。
その話題が登場するまでただの青春群像劇と思いながら読み進めていましたので、かなり度肝を抜かれました。
毎晩見ているものだけれど、ずっと遠くにあるものという身近でありながらミステリアスな月の雰囲気をうまく使った設定だと思いました。
ここでラストシーンのアレに気が付けば、私の先読み能力も信用できるものになるのですが……。

地球に衝突するという危機的状況の中で、二人だけの時間が流れていく。
そこの描写がもう少し深掘りされていると、なおラストへの衝撃が強まるかなと思いもしましたが、案外あっさり済ませるところにも魅了があるのかもしれませんね。

そして最終局面へと物語は向かいます。
目の前に迫る月、隣には最愛の人物、もう死んでしまうことはわかっているけれど、この想いだけは伝えておきたい。
「月が綺麗ですね」

「ここで夏目漱石やー!」と自分も若干興奮気味。
このセリフで最序盤の授業の件が伏線だとわかりましたし、すっと腑に落ちました。本当にここで一気にボルテージが跳ね上がりましたね。

非常に面白かったです。
これからも頑張ってください!