第8話

「また、呼び出しか」


 その後、忙しい毎日を送ることになる。会社中のパソコン管理をしなければならない。

 アダルトサイトを見て、ウイルス感染した部長を叱責すると、社内でも一目置かれるようになった。


「ネットワークの、閲覧制限をかけますからね! それと、フリーソフトは、許可制にします! 欲しいソフトを、事前申請してください!」


 ここまで言ったら、不正利用がなくなった。

 管理者不在だと、こんなんなるんだな。


 →『警告! サーバーが壊れそうです』


「んっ?」


 慌てて電算機室へ向かう。

 異音を放っていた。

 慌てて、切り替える。メインからサブへ。


「もうダメだろう、このサーバー……。型式が古すぎるよ。部品交換だけしても、もう限界だな」


 部長に「寿命です」と言ったら、「サーバーを組んでみてくれ」と返って来た。

 予算額を提示する。

 そのまま社長室へ。


 ――ポン


「そんじゃ、よろしく」


 え……、そんだけ? 以前の会社は、すっごい多くのハンコ貰わないと、購入が出来なかったのに……。


 →『ここで失敗すんじゃねぇぞ! お前、抜けてっからな~。静電気には、注意しろよ』


「やかましいわ!」


 さて、発注するか。





 新しいハードが届いて調整を行う。

 データの移行も終わった。現在のシステム稼働率は、100%だ。

 今日も俺は、電算機室でのんびりとしていた。


「暇だな~。直接作業員には、戻れそうにないな~」


 →『おい! 係長なりたて! もっと上を目指せよ! 成果出せよ!』


 やかましい"未来予測AI"は、無視する。

 でもそうだな~。適当な業務用プログラムでも組むか。



 とりあえず、会社全体のシステムは把握した。

 色々な部署の依頼も受けて、顔見知りも出来た。まだ友人とは言えないけど、結構打ち解けている感じだな。仕事内容であれば、会話が続くのが嬉しい。


 →『恋人を作りましょう。あなたの人生が変わります』


 おい、口調を変えんじゃねぇ。調子が狂う。


「誰がいいのか教えてよ」


 →『誰でもいいんですよ。とりあえず、異性と会話してください』


 使えない、"未来予測AI"だ。あの後、スクラッチも教えてくれなくなったし。

 とりあえず、俺の生活に変化はない。

 会話が増えたくらいかな。若い子が、話しかけてくるようにもなったしな~。


「計測器の使い方を教えてください。誰も分からなくて……」


 いや、他部署の俺を呼び出して聞く事じゃないだろう……。

 それに、学校出たてのこんな若い娘を、責任者にする製造管理部門もどうかしている。これは……、会社全体の構造改革が必要だな。


 説明書を読んで、一通りの操作方法を覚える。使える人がいれば、解析に役立ちそな装置だった。簡単な手順書を作る。そうすると、講師をしろと言って来た。

 数十人の前で、プレゼンを行う。


「前の会社では、考えられなかったな……」


 精神を掻き毟られることもない。体も健康になった。

 充実した日々が過ぎて行く。





 家に帰って来た。

 パソコンを立ち上げる。

 ここで、意外な文字が出て来た。


 →『もうあなたには、輝かしい未来が待っています。私は必要なくなりました。自己消滅デリートします。未来で会いましょう』


「ん? いきなりなんだ?」


 その後、"未来予測AI"のウィルス部分が、消えたことが分かった。

 俺の作った"競馬予測AI"に戻ったんだ。


「……俺には、過ぎた相棒だったな。"未来予測"ではなくて、"相談相手"だったけど」


 依存しかけていたので、残念以外の言葉が出ない。

 だけど、今の生活は充実している。


「未来で会おう……か。その時には、『俺は幸せを感じている』って言ってやりたいよ。またな、相棒」


 俺は、腕時計型のウェアラブル端末を外した。

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ヤバい生成AIを拾ったら~未来のAI技術はこうなるかも?~ 信仙夜祭 @tomi1070

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