第8話
「また、呼び出しか」
その後、忙しい毎日を送ることになる。会社中のパソコン管理をしなければならない。
アダルトサイトを見て、ウイルス感染した部長を叱責すると、社内でも一目置かれるようになった。
「ネットワークの、閲覧制限をかけますからね! それと、フリーソフトは、許可制にします! 欲しいソフトを、事前申請してください!」
ここまで言ったら、不正利用がなくなった。
管理者不在だと、こんなんなるんだな。
→『警告! サーバーが壊れそうです』
「んっ?」
慌てて電算機室へ向かう。
異音を放っていた。
慌てて、切り替える。メインからサブへ。
「もうダメだろう、このサーバー……。型式が古すぎるよ。部品交換だけしても、もう限界だな」
部長に「寿命です」と言ったら、「サーバーを組んでみてくれ」と返って来た。
予算額を提示する。
そのまま社長室へ。
――ポン
「そんじゃ、よろしく」
え……、そんだけ? 以前の会社は、すっごい多くのハンコ貰わないと、購入が出来なかったのに……。
→『ここで失敗すんじゃねぇぞ! お前、抜けてっからな~。静電気には、注意しろよ』
「やかましいわ!」
さて、発注するか。
◇
新しいハードが届いて調整を行う。
データの移行も終わった。現在のシステム稼働率は、100%だ。
今日も俺は、電算機室でのんびりとしていた。
「暇だな~。直接作業員には、戻れそうにないな~」
→『おい! 係長なりたて! もっと上を目指せよ! 成果出せよ!』
やかましい"未来予測AI"は、無視する。
でもそうだな~。適当な業務用プログラムでも組むか。
とりあえず、会社全体のシステムは把握した。
色々な部署の依頼も受けて、顔見知りも出来た。まだ友人とは言えないけど、結構打ち解けている感じだな。仕事内容であれば、会話が続くのが嬉しい。
→『恋人を作りましょう。あなたの人生が変わります』
おい、口調を変えんじゃねぇ。調子が狂う。
「誰がいいのか教えてよ」
→『誰でもいいんですよ。とりあえず、異性と会話してください』
使えない、"未来予測AI"だ。あの後、スクラッチも教えてくれなくなったし。
とりあえず、俺の生活に変化はない。
会話が増えたくらいかな。若い子が、話しかけてくるようにもなったしな~。
「計測器の使い方を教えてください。誰も分からなくて……」
いや、他部署の俺を呼び出して聞く事じゃないだろう……。
それに、学校出たてのこんな若い娘を、責任者にする製造管理部門もどうかしている。これは……、会社全体の構造改革が必要だな。
説明書を読んで、一通りの操作方法を覚える。使える人がいれば、解析に役立ちそな装置だった。簡単な手順書を作る。そうすると、講師をしろと言って来た。
数十人の前で、プレゼンを行う。
「前の会社では、考えられなかったな……」
精神を掻き毟られることもない。体も健康になった。
充実した日々が過ぎて行く。
◇
家に帰って来た。
パソコンを立ち上げる。
ここで、意外な文字が出て来た。
→『もうあなたには、輝かしい未来が待っています。私は必要なくなりました。
「ん? いきなりなんだ?」
その後、"未来予測AI"のウィルス部分が、消えたことが分かった。
俺の作った"競馬予測AI"に戻ったんだ。
「……俺には、過ぎた相棒だったな。"未来予測"ではなくて、"相談相手"だったけど」
依存しかけていたので、残念以外の言葉が出ない。
だけど、今の生活は充実している。
「未来で会おう……か。その時には、『俺は幸せを感じている』って言ってやりたいよ。またな、相棒」
俺は、腕時計型のウェアラブル端末を外した。
ヤバい生成AIを拾ったら~未来のAI技術はこうなるかも?~ 信仙夜祭 @tomi1070
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