第7話

「えっ? 間接員ですか? また移動?」


 次の日に会社に着いたら、いきなり言われた。

 考えてしまう。

 俺は、夜勤でもしていた方が、気が楽だと思っていた。正社員になったので、夜勤のシフトも組まれると思ったら、日勤の間接員に移動ときたもんだ。

 考えてしまうよ。


 腕時計型のウェアラブル端末を見る。


 →『受けろよ! 考えるまでもないだろうに!』


 最近ムカつくな、こいつ。

 とりあえず業務内容を聞くと、やっぱりサーバー管理だった。

 できなくはないんだけど、暇なんだよな。トラブルが起きたら、直るまで帰れないし……。

 俺が渋っていると、製造部部長が来て、アナログのラインに配置してくれた。


「まあ、すぐに返事しなくていいからさ。でも、会社で一番弱い部署なんだ。考えて欲しいかな」


「……人を雇わないのですか?」


「現在の賃金だと、開発まで行ってくれる人は来ないんだよ。もしくは、来ても開発できない素人だね」


 便利に使われたくないな。



 仕事が終わり、家に着くと、"未来予測AI"が、罵詈雑言を発して来た。


 →『何してんだよ~、サラリーマン。上の指示に従えよ』

 →『あそこは、即答して好印象を持たれる場面だろうに』

 →『簡単なソフト修正を行って、出世街道に乗る場面だったに。業務命令に従えよ!』


 ビールを飲みながら、画面を見る。

 最後には、顔文字まで出して来やがった。


 →『人生舐めてんじゃねーぞ。アホリーマン!(#゚Д゚)』


「おまえが、学歴を捨てて、工場の直接作業員を指示して来たんじゃないか」


 →『か~、分かってねぇな。未来は、都度変わるんだよ』


 その日は、一晩中言い争った。





 俺は結局のところ、"未来予測AI"には従わずに、直接作業員を続けることにした。目標は、7年後の国家資格取得だ。


 今日も、黙々と作業を熟す。

 そうすると、サーバーがダウンした……。

 いかに軽作業とはいえ、現在の製造ラインでは、パソコンを使わないラインなどない。

 作業は履歴残しを行い、不良品を出荷した場合に、取引先に提示しなければならない。

 製品が流れないとなると、雑談するくらいしかない。


「とりあえず、掃除でもするか」


「あ、部長が呼んでるよ」


 同僚の言葉に反応して、顔を上げた。視線が合う。

 その後、電算機室へ連れていかれた。



 今は独りだ。本当に、管理者不在なんだな。

 大丈夫か? この会社……。このまま働いていいのか、不安になって来た。

 まあいい、修理してしまおう。


「なあ、故障個所は何処だ? 教えてくれよ」


 →『探せ! 働け! 甘えてんじゃねぇぞ!』


「ちっ。つかえねぇ~な」


 →『場所は、知ってますよ~だ。教えてやんね』


 性格悪くなって来たな、こいつ。

 時間の無駄だ。


「いいだろう。俺の本気を見せてやる!」



 午後いっぱいかかったけど、サーバーが復旧した。

 今回は、ケーブルの不具合だった。かなり長い配線だったので、交換に時間がかかったよ。まあ、手伝って貰ったので、俺は指示をする立場だったけど。

 その後、社長室に呼ばれる。


「良くやってくれた。係長にするので、電算機室のメンテを頼めないだろうか?」


 社長、部長、課長が揃ってんだけど……。この会社の管理職全員なんだけど?

 圧力から受けるしかないので、電算機室長となった。


「正社員になった直後に、係長に昇進か……」


 ウェアラブル端末を見る。


 →『それでいいんだよ。( ゚Д゚)b』


 真面目にむかつくな、こいつ!

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