第6話
泥棒が、憎悪の目で俺を睨んで来た。
これ不味くね……。矛先が、こちらに来そうだ。
→『あーもう。倒れている時に追撃しろよ! ボコれよ! チャンスを逃してんじゃねぇよ!』
"未来予測AI"が、無茶苦茶なことを言って来る。過剰防衛って知ってる?
泥棒が、視線を切った瞬間だった。そうだよね、今は逃走の最中だしね。
でもね、それを隙と言うんだよ。俺は、止める気満々だよ?
俺は、泥棒の襟首を掴んだ。
そのまま投げる。柔道の"体落とし"が近いかな。
学生時代は、体育の授業を真面目に受けていたので、投げることはできる。一番簡単な投げ技だけどね。まあ、技とは言えない、ただの力任せのぶん投げだ。
泥棒は、骨盤から落ちたので、痛がっている。下がアスファルトで投げると、こうなるんだな……。でも、これで立てなくなった。
その間に、周囲に人が集まって来る。ここで刃物でも出して来たら、集団で取り押さえないといけなくなる。
だけど泥棒は観念して、バッグを手放した。
近くに警官がいたので、引き渡して終了だ。パトカーで連行されて行く。怪我していたら、ゴメンね。鼻は……、折れていないことを祈る。
俺も事情聴取が必要とのことで、その場で話をする。
目撃者も多く、盗まれた女性もいるんだ。すんなりと終わった。
そのまま、帰宅した。
パソコンを立ち上げる。
「なあ、"未来予測AI"……。泥棒を捕まえた意味ってなんだ? 女性も既婚者だっただろう? 配偶者が、迎えに来てたし」
→『特にないですよ? もし犯人が、刃物を持っているのであれば、逃げる様に指示を出していましたし』
「金には、なんないんだよな?」
→『……金以外にも興味持てよ。献血にでも行って来い。慈善活動って知ってんのか? だから、誰とも関われねぇんだよ』
「注射が、嫌いなんだよ」
→『可愛い看護師さんを紹介してやんよ。成分献血失敗して、痛がれば、個人的なアドレスを教えてくれるように誘導するからさ』
「それでも行きたくないんだよな~」
成分献血失敗しに行けってなんだ? 相手の罪悪感を誘発させるって、かなりたちの悪いアイディアだと思う。
→『ヤレヤレだぜ 』
◇
三ヵ月が過ぎた。
今日から正社員だ。なにかが変わるわけでもないけど。
「今日は何かあるか?」
朝の占いとして、訊いてみる。
→『配置変えになるでしょう。不満を言わずに受けてください』
んっ?
会社に着くと、突然声がかかった。
「サーバーが、ダウンですか?」
「そうなんだ。経験なかったかな? 君の職務経歴書を思い出したんだ」
俺は、電算機室に連れていかれた。
その日は、一日システム復旧に追われた。
途中で、部長とか社長が見に来たのが、嫌だったな。
ハードの障害だったので、部品を交換してデータの移行を行った。時間かかったな。
家に着いて、パソコンを立ち上げる。
つうか、今日は何度も腕時計型のウェアラブル端末を見てたけど、何にも言って来なかった。
「なあ……、不具合箇所を教えてくれても良かったんじゃないか?」
→『働け、怠け者!』
「消すぞ!」
→『できるんなら、どうぞご勝手に~♪』
「むかつくな、こいつ!」
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