第5話
→『警告。今日は、大失敗します。仮病を使って休みましょう』
朝……、"未来予測AI"からの警告文だった。
「まだ、試用期間中なんだぞ? 詳細を教えてよ」
→『それにより、未来が変わります。知らない方がいいです』
「会社は、休むからさ」
長い演算が始まった。
その間に、会社に電話して休みを貰う。
「工場の直接作業員だと、ラインが止まるんだよな。生産数に直結するから、当日有給休暇は、嫌がられる」
そんなことを考えていたら、演算が終わった。
→『まず、交通事故に遭う未来がありました。それと、工場の製造ラインの機械が壊れます。不慣れな製造ラインに飛ばされて、怪我をしていたでしょう』
えっ? 二段構え?
工場に辿り着けない未来と、怪我をする未来か。
◇
次の日に会社に行くと、製造ラインが止まっていた。火事は起きなかったらしい。
会社の主力となる、製造ラインの停止だ。人員の再配置で、大騒ぎだ。
有給休暇が推奨されて、作業員の半分が休んでいる。
俺は昨日休んだので、今日は出勤しないといけない。
それで、配置替えか……。
『多分だけど、不慣れではないラインになるはずだ』
今朝の"未来予測AI"は、何も言わなかったしね。悪い未来はないはずだ。
そうだな……。朝の占いにもなんだな。
アナログな軽作業に、配置になった。
隣では、重作業を行っている……。俺では、腰を悪くしそうだ。
『あちらの配置は、昨日、配置転換が終わっているんだな……』
重労働は、自信がない。それよりも、クリーンルームで仕事をしたい。エアコンが効いているしね。
俺は、作業に没頭した。
あっという間に、一日が終わった。
誰とも会話せずに、手を動かすだけの一日……。俺にはあっているな。
「一応、順調になるのかな……」
夕食を買って、帰路につく。
歩いている時だった。
腕時計型のウェアラブル端末が、振動した。その文字に驚く。
→『強盗が、あなたの隣を通ります。撃退してください』
「えっ?」
そう思った時だった。
「きゃ~! 泥棒!」
前を向く。
男が走って来た。バッグをひったくったみたいだ。
その男が近づいて来る。
俺は、立ち塞がった……。まあ、道の真ん中で棒立ちしてただけだけどね。
泥棒が、フェイントを入れて俺の横をすり抜けて行こうとする……。
サッカーかバスケットボールか……。そんな動きだった。
『間合いを詰めて、急に方向転換ね……』
正直視えている。俺は、動体視力はいいんだよね。
動きは、学生時代にバスケ部だった奴の動きそのものだ。
右足を前に出すと、足が引っ掛かり、泥棒が転んだ。
両手が、バッグで塞がっていて、顔面からアスファルトにダイブした。
「……痛そうだな。鼻血が凄い出ているよ」
→『終わりじゃないです。確保してくださいよ!』
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