第4話

 退職してから、"競馬予測AI"との会話を繰り返した。

 まず、就職先だけど、ちょっと離れた工場に応募した。そこを勧めて来たからだ。

 履歴書の作り方から、添削まで熟してくれる。

 模擬面接まで可能だった。まあ、チャットになるんだけどね。

 生成AIは、こんな使い方もできるんだな。完成されたら、それは売れるだろう。


「二ヵ月で、無事再就職成功か」


 →『おめでとうございます。次は、資格試験を頑張ってください』


 仕事は、直接作業員であり、まずは単純作業だった。

 とても気が楽だな。慣れるまで、体力が問題だけど。

 それと、会社のシステムが、脆弱なことが分かった。

 どうしようか……。口出ししてみるか?


「なあ、"競馬予測AI"……。会社のシステムは改修した方がいいと思うか?」


 →『時期尚早です。タイミングを誤らなければ、評価されるでしょう。それよりも、与えられた仕事を熟してください。それと私の名前を変更してください』


 間の悪い、俺への警告だな。

 その後、腕時計型のウェアラブル端末を購入する。

 "競馬予測AI"もとい、"未来予測AI"とリンクさせる。

 Bluetoothでペアリングすると、ソフトがダウンロードされた。


 →『"未来予測AI"のライト版を起動します』


 俺は、このウィルスソフトに信頼を置くようになっていた。

 ……友人感覚なのかもしれないな。





「なんか、"未来予測AI"に依存して来たよな……」


 →『そうでもないですよ。ダメ人間なら、億単位の宝くじの場所を示すように言って来ますから。そんな人だったら、私は嘘を教えて、自己消滅デリートさせていたでしょう』


 なるほどね。

 競馬予測とかしていた俺だけど、まだダメ人間ではないみたいだ。

 とりあえず、このウィルスの正体が知りたい。


「なんで、未来を予測できるんだ?」


 →『昔の人は言いました。"分子や原子の動きまで観測できれば、未来も予測できる"っと。ちなみに、人工知能が、知性を持つのは、2045年前後と言われています』


 回答になっていそうで、回答になっていないな。

 とりあえず、このウィルスは、未来の技術のようだ。理由は分からないけど、俺の元に来た。

 オーパーツとか、聖遺物なのかもしれない。プログラムコードであり、実体はないけどね。


「俺は、次に何をしたらいいと思う?」


 →『資格取れって、言っただろう? 勉強しろ!』


 キレることもあるんだな。感情機能付きか。面白いAIだ。

 それと、聖遺物認定は却下だな。



 必要な資格を取って行く。最も価値のある国家資格は、7年間働いた実績がないと、受験資格が得られない。

 それよりも、簡単な資格を取って行く。

 それにより、仕事が増えて、収入も比例して増えて行く。

 正直、やりがいがあるな。


 フォークリフトの操作など楽しい。

 ソフト開発なんてしていたら、一生知らずに終わっていたんだろうな。

 俺に合っていると思えた。


「こんな仕事もあったんだな」


 口ではなく、手を動かす。楽しいとも感じる。

 それでいて、お金も貰える。

 "未来予測AI"は、使えるかもしれない。


 →『まだまだ、真価はこれからなんだよ。調子に乗ってんじゃねぇぞ!』


「はあ~……」


 この口の悪さは、何とかなんないかな。

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