第3話
今日は、休日の朝だ。
俺は、歩いて近くのスーパーに向かった。昨日のウイルス入りの"競馬予想AI"がとても気になったからだ。若干の期待はある。
誰かの
「まだ、9時45分……」
なんだろう、この期待感は……。
宝くじ売り場で待っていると、カーテンが開いた。
「いらっしゃいませ。くじの種類はどうしますか?」
「スクラッチで……」
店員が、箱ごと見せて来た。
「何枚購入しますか?」
「左下の10枚をください」
左右を間違えないように、指をさす。
三千円を支払って、購入した。
その場で削る……。当然、狙っていた一番隅にあったスクラッチくじをだ。
「当たったよ……」
◇
一週間後に、百万円が振り込まれた。
薄給の俺には、とてつもなく大きな臨時収入だ。
この後、一週間をかけて、"競馬予測AI"の解析を行った。
だけど、ウィルスと思われる部分が、ブラックボックスになっており、詳細が分からない。
スタンドアロン(ネットワークや他の機器に接続しない)で動かしているのだけど、正常に動いているし。
何を学習して、どんな演算を行っているのか……。データベースもバグっている。
ディープラーニングで、何を学んだのかが解析できない。暗号化されているのかもしれないな。これを作った奴は、相当高度なハッカーなのかもしれない。
「まあいいか、また動作させてみるか……」
何と言うか、期待させてくれるソフトだった。こんなソフトが売れるのかもしれない。
→『どんな未来を予測したいですか?』
「俺は、どうしたら幸せになれるか」
占いでのタブーだ。『生まれて来た理由』と『個人の幸せ』は聞いてはいけない。
これで、このウィルスの真価が分かるだろう。
しばらくすると、演算が終わった。
→『まず、現在の会社では、将来はありません。転職を勧めます。あなたは、学歴は高いのですが、工場の直接作業員が向いています。その内向的な性格と向き合いましょう。資格を取れば、現在の給料より多くの賃金を得ることもできるでしょう。それと、友人と恋人が必要です。趣味を持ち、交流を増やしましょう』
「……」
普段なら、「やかましい」と言って、
椅子に座って、考える。
その日は、考えが纏まらずに何も手につかなかった。
◇
次の出勤日に、会社に辞表を出した。
「……お世話になりました」
「いきなりなんだな」
「請け負った仕事なんですけど、なにも作れませんでした」
「うん、いいよ。部長以下、誰も成果を期待してないと思うしね」
社長の暴走だったのか。
何人辞めさせるんだよ。
その後、簡単な引き継ぎを行って、会社を後にした。
パソコンの返却手続きが面倒なだけだったな。
私物は少なかったので、俺は軽い鞄を背に帰路に着いた。
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