竜石
葛西 秋
竜石
その先の崖の下に、昔は水が湧いていた。湧いた水は淵となって、そこから小さな川が集落に流れていた。
ある時、大きな地揺れがあった。その地揺れで崖の上の大木が倒れて淵の中に落ちてきた。これはいかんと村人総出で木を引き上げてみたところ、淵の底で大きな岩が割れていた。
それからその淵からは水が湧かなくなった。代わりにずうっと西の方の窪地で新たに水が湧くようになった。
地揺れがあった時、轟音とともに淵から何か長いものが空に飛び立って西の方へ飛んで行ったという。きっと岩の中に住んでいた竜が岩が割れて逃げ出したのだろう。竜がいなくなったから水が湧かなくなったのだ。
その割れた岩には竜石と名がつけられ、小さな祠が建てられた。その崖の下に川も井戸もないのに水神様が祀られているのは、そんな話があるからだ。
竜石 葛西 秋 @gonnozui0123
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
甑のまじない/葛西 秋
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 20話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます