最新話の11話まで読んでレビューをしています。
この作品は典型的なヒロイックファンタジーで、世界観がすばらしくて言うことなしです。といったらレビューが終わっちゃうので、そうもいかないのですがw
えっと、雰囲気は北欧神話をベースにしたヒロイックファンタジー。もちろんチートもハーレムもなしの正統派のヒロイックファンタジーです。そして、語り部に一工夫あって、それがヒロイックファンタジーにありがちな重すぎさを打ち消していて、非常に読みやすい一作になっています。というか、これ、普通に10万文字書いちゃえば、すぐに拾い上げあるんじゃないか? と思えるくらいの圧倒的な完成度を誇る小説です。
ただ、11話を上げてからしばらく更新がないのが残念なところではあるのですが、このクォリティなら執筆に時間がかかるのも納得の面もあるのですが、個人的には後進速度をあげてクォリティーをさげるなら、じっくり仕上げて欲しいと心から思える小説です。
もちろん、私は訓練された読者なので、いくらでも待ちます。それくらい出来の良いヒロイックファンタジーです。
2023年12月22日公開の「剣閃き魔法輝くヒロイックファンタジー!!」4選特集でこの作品を知りました。そこで解説されているように、ヒロイックファンタジーは一種の異世界ファンタジーではあるんですが、最近流行しているチート(もちろんこの作品のヒーローも強いんですが)やハーレム、ダンジョンなどはなく、悪役令嬢や聖女もいません。あえて言えば、ヒーローのシグルズが勇者、エルフの女王が魔王みたいな敵役かと言えるかもしれませんが、この作品はそんなテンプレに当てはまりません。
さらに何か仄暗い別の文明の薫りがするみたいな、なんというか表現が難しいのですが、北欧神話みたいな一種独特の雰囲気があります。中高生の頃によく読んだヒロイックファンタジーを思い出しました。そういう正統派ヒロイックファンタジーを小説投稿サイトで無料で読めるなんていい時代だなと感謝です。
それに加えて人語をしゃべる灰色猫ヨルムンガンドが語り部になるというのも独特で素晴らしいアイディアだと思います。
まだまだ英雄シグルズの冒険は序盤(現時点で10話)です。続きが楽しみな作品です。
ヴァナン公国はユグドラ大陸の覇権を握るがための切り札——南海の島国ムスペル公国の戦象を求めた。その交渉を担った全権大使こそは褐色の肌持つ巨漢、シグルズ・ヴォルスング。人語を繰る灰色猫ヨルムンガンドを供連れた彼は、友へは舌先、敵へは切先を振るって使命を果たしていく。それが冒険への第一歩、英雄譚の序幕と知らぬままに。
北欧神話の風情を匂わせるこの物語、入り口に政治を置く斬新さにまず目を惹かれるわけですが、注目点は相棒のヨルムンガンドさんを語り部に置いたことですね。物語自体の描写の濃やかさに比べ、シグルズさんを綴る彼の言には過ぎた装飾がありません。近しい存在だからこその距離感、この上なく生きているのです。
その上でシグルズさんの活躍ですよ。政治であれ戦であれ色恋であれ、彼は自らが立った場において強かに立ち回り、飄々と切り抜けていきます。これが相棒のさらりとした語りに乗せられることで逆に際立つのですよ!
極上の魅力を持つ男を猫が語る物語、その妙味をお楽しみください。
(「剣閃き魔法輝くヒロイックファンタジー!!」4選/文=高橋剛)