交換 3
人形の姿に戻って気がついた。
__彼女を助けるために体を交換したのに!
自分がつらくなったから、そんな理由でまた彼女と体を交換してしまった。ダメだ、彼女は絶対に死んでしまう。返しちゃダメだった。私はなんてことを……!
急いで彼女に声をかける。しかし、少しでも「生きたい」と思ってくれないと、私からの声は聞こえない。聞いてくれない。届かない声を何度も何度も発する。人間だったら声が枯れていたと思う。それくらい叫んだ。それでも。
彼女は、ゆっくりと私の目の前で倒れた。
あんなに優しくて、可愛くて、長く『友達』でいてくれた、大切な人が、私の目の前で息を引き取っていく。
付喪神とはいえ、不完全体な私では、大切な人を、たった一人だって、守れない。そして、いくら優しい神様でさえも、『二度目』は許さない。
私が上手くやれていれば。
こんな未来も、変えられたのだろうか。
彼女から飛び散った血液が、私の涙袋を赤く滲ませる。まるで、夢を見ているかのようだ。こんな思いをするくらいなら、まだ、殴られ、蹴られ、暴言に塗れていたあの日々に耐えた方が良かった。でも、そんなことさえもう遅い。失われていく温もりに怯えながら、私はただ、彼女に何もしてあげられないこの体を、ひどく憎んだ。
交換 葉月 陸公 @hazuki_riku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます