第10話 プロキア連邦共和国・・・ハルトマンの演説②

 では次に、今お話しした2つの柱について、どのように進めていくのか、具体的な方策をお話しします。

 まずは、農業政策についてですが、凍土が溶けた土地は、ほぼ国有地です。民間地は、ほとんどありません。よって、これらの土地の開拓は、農業が軌道に乗るまでは、国が管理・運営を行っていきます。

 しかし、軌道に乗り始めたら、民間へ農地の払い出しを行います。この際、財閥(ロヒンゴ)等、ごく一部のお金持ちが、土地を買い占める事のなきよう、明瞭・公正な受け渡しをします。ただし、10分の1は、国営農地として残しますが。

 このような方策をとるのには、2つの理由があります。

第一に、民間のパワーを利用する事は、成長のスピードを速めることに繋がると思います。働いても働いても、利益は国の物になってしまうのでは、更なる高見を目指そうとは、思わなくなってしまいます。

 逆に、民間企業経営となり、頑張って働いて、生産性が高くなり、利益が生まれ、それにより、自己の収入がアップしたらどうでしょうか?

 どんどん新しい事に取り込もうという意欲が沸きます。それは更なる農業改革が進む事に繋がって行くのではないでしょうか


 第二に、広大な土地を、国が管理する事のデメリットについてです。

国ってなんでしょうか。表現が適切ではないのかもしれませんが、実態があって、無いようなもの。責任があって、無いようなもの。と私は思ってしまいます。

 国の担当者は、どんどん変わっていきます。自分が担当しているその時が良ければ、それで良い。というような考え方も生まれがちです。どうしても長期的なビジョンに基づく計画が出来にくくなってしまうと思いませんか。

 個人ならば、破綻すれば、責任を負わなければなりませんが国の場合、国が責任をとる事はまれです。特に我が国のような管理社会においては、ほとんど皆無と言っていい状態でした。今までは。

 民間経営後も、国による指導・管理というものは入りますが、それは諸外国でも同様です。全くの野放し状態では、国の発展のための農業推進には、なっていかないでしょうから。


 軌道に乗ったら、民間への農地払い出しをすると言いましたが、民間経営となって、収入が上がれば、それに応じて税収もアップします。

 なにせ広大な土地です。地球温暖化は直ぐには改善されないと思いますので、今後も、永久凍土は猛烈なスピードで、少なくなっていくでしょう。たかが農業と思うなかれ。たかが税収と思うなかれ。です。


 先にも述べましたが、わが国の農業発展は、自国食糧の安定供給をもたらすばかりでなく、諸外国の食糧安定確保にも、寄与します。

農・畜産物の輸出により、莫大な利益を生む事が出来れば、戦争賠償・戦後補償そして我が国の復興が果たせるのではないでしょうか。

 更に言えば、戦争が起こる理由として、ほとんどが領土問題です。領土=資源 です。資源が欲しいがために、人は戦争を起こすのです。資源には、地下資源・食料資源・海洋資源・エネルギー資源などがありますが、その内の、食料資源について、わが国が、農業大国となり、世界の食糧事情に安定をもたらす事が出来るようになれば、これはもう世界貢献です。戦争を繰り返し起こして来た国としての、反省の意味も込めて、真に実現させたいと思っています。


 そして、もう一つの柱、観光産業の発展についてです。

皆さんは、海外旅行をする時、何を基準に、旅先を決められますか?

素晴らしい観光名所がある

おいしい食べ物が一杯ある

行きやすい。(交通の便が良い・旅費が安い)

治安が良い

などを考えると思います。


 それらを踏まえて、みなさんが、外国人だったとして、現在の我が国へ、観光をしたいと思うでしょうか。

 プロキア上空の飛行は、まだ諸外国との契約が進んでいないため、航空機の乗り入れが、正常化していません。

 治安も悪化しています。諸外国との貿易が途絶え、海外企業の引き上げにより、多くの人々が失業者となり、貧困が進んでいます。貧困は、犯罪を生み出します。

それを取り締まる警察力も弱体化しており、そんな危険な国に観光に来ようとする人はいないでしょう。

 

 そこで、まず、国内治安の安定化に取り組みます。軍の縮小化により、職を失った元軍人に警察機構に就職してもらい、警察力向上につなげます。勿論、採用に関しては戦犯者を除外する事は、言うまでもありませんが。

 警察機構に、汚職がはびこっていたのは承知しています。ですから、まずは汚職等に対して、厳しい罰則を設けます。具体的に何を行うのかと言うと、法律の改正です。汚職を含む犯罪に対しては、厳格な処罰を実施します。


 法律改正に関連しての事ですが、外国人保護のための法律も早期に制定します。

これは、観光・就労などの目的で訪れる外国人に対して、危害を加えるなどの犯罪を犯した者に対しては、プロキア国民に対して行った同等の犯罪人処罰よりも、数段重い処罰を下すといった内容の法律を作ります。

 これにより、外国人を保護し、観光客を増やし、海外へ流出した人材を取り戻し、更には、諸外国企業の誘致にまで繋げて行けたら幸いです。

 なにも、自国民と、外国人との差別化を図ろうという物ではありません。命の重さは一緒ですし、同じ人権を持っています。しかし、今のままでは、外国から人は来ません。ですから、より強固に、外国人を保護する必要があるのです。

 逆に、例えば麻薬の持込・販売など外国人による犯罪については、厳しい罰則を設け対処していきます。これは当然ですね。

 

 観光者を守る という観点から、もう一つ。

現在、わが国には、国民・国内を監視するために、無数の監視カメラが設置されています。これを、国民の監視目的ではなく、治安の維持に特化した目的で使用する、政府組織・システムを作り上げていきます。監視カメラについては、諸外国でも、設置が増加する一方です。要は、その使い方により、善にも悪にもなりうる物です。

 透明性を持って運用をしていくため、第三者機関による監査機能を持たせます。


 治安の次は、交通網の整備です。

鉄道の全ての路線は、首都、モロコアを起点として敷設されています。路線が集中しすぎていて、時折混乱をきたしているのが現状です。更に、大規模な自然災害が首都近辺で起こった時、国中の交通網が麻痺してしまう危険性もあります。

 それらを回避するために、鉄道の拠点地域を、国の東西南北そして中央の5か所に作り、それらの拠点駅を結ぶ新たな鉄道網の構築を図ります。

鉄道拠点に隣接して、国際空港をも整備し、直近の港湾へのアクセスも整える事により、人、物流のスムーズな流れを作っていきます。

 拠点を分散する事は、観光面においても有益かと考えています。

旅行者は、モロコアを介する事無く、気軽に全国各地におもむく事ができるようになります。


 道路網の整備として、凍土の溶けた土地を東西に横断する幹線道路をまずは整備し、そこから、地方道路を新設していきます。こうする事で、収穫した農・畜産物の運搬もスムーズになり、新たな観光地へのアクセスも格段に良くなります。


 国際空港の再開も急がねばなりません。まずは、諸外国の飛行機を差し押さえてしまった賠償責任を果たさなければなりませんが、残念ながら、その財力がありません。そこで、わが国に乗り入れしてくれる航空会社については、燃料の提供を行い、賠償金に充てると同時に、新たな国の航空機乗り入れを呼び込みます。


 港湾については、不凍港をほぼ持たないわが国の弱点を補う方法として、隣接する他国と、港湾利用契約を結び、鉄道・道路網を整備して、物流を良くします。

港湾利用料は、天然資源の提供をもって行います。

 

 交通網の整備と同時に、観光地の整備、開拓もすすめます。

観光地開拓は、民間パワーに頼る所が大きいかと思います。地方地方で、アイデアを出し、開拓を進めた方が、その土地の特色が出ると考えています。


 世界に向けた、観光地のアピールは、政府を中心に行いますが、今はSNSが発達した時代。個々の方でも、簡単に世界に向けて、情報発信が出来ます。

かえって、その土地の良さを熟知している方々からの、観光地アピールの方が、世界の人々の心に響くかもしれません。


 首都モロコアには、数多くの美しいモスクがありますが、町全体を見渡すと、決して綺麗な街とは、いえません。

 そこで、ゴミ収集の強化を図るとともに、ゴミ捨ての罰則強化、国民意識の改善を図り、観光者に好印象を持ってもらえるような街づくりをすすめます。これは、首都モロコアに限らず、全国展開する施策です。


 宿泊所の新設にも力を入れ、民泊という諸外国で、はやりのスタイルも取り入れていきます。

 外国のホテル企業には、ホテル建設地の無償貸与を行い、観光会社については、主要都市、空港、鉄道拠点に、観光会社専用のビルを用意し、そこに、諸外国も含めた観光会社に入居してもらいます。勿論、無償提供です。

 そうする事で、各国の観光会社間の連携も良くなるでしょう。それは、観光客を呼び込むための大きな力になると信じています。


 国内の大型ホテル整備については、ロヒンゴの皆さんの力により推し進めます。

長らく続いた経済制裁により、近代的な建物をなかなか建てる事ができず、ホテルもかなり老朽化した物が多くなってしまいました。

 そこで早期に近代的なホテルの建設が必要となる訳ですが、それには多額のお金を必要とします。そこで、ロヒンゴの財力に期待しよう思います。

(何かと国民から叩かれるロヒンゴではあったが、ハルトマンはロヒンゴは必要であると考えていた。ロヒンゴが、その財力全てを諸外国に移してしまえば、国の復興に役立てる事が出来なくなる。それならば、観光面で、ロヒンゴに生き残る道を残しておけば、国に留まってくれるだろうし、予算の無い今、ロヒンゴの持つ財力は貴重で、それを生かさない手はないと考えたからである。

また、国力が弱まっている今、今まで主だった企業を総括していたロヒンゴを潰す事は、復興の速度を落としてしまう事に繋がり兼ねないとも考えたのである)


 以上が、農業・観光政策の概要ですが、問題はここからです。

 






 

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