しかしエピローグがまだ続く【肖像画】
すっかりと忘れていたことをフイに思い出した。妖怪濡れ女さんがわたしを描いたという『肖像画』。殿下のハートを射止めたというソレがどんなものか、未だにわたしは見ていなかった。
だから妖怪濡れ女さんを呼び出した。
「ぜひ見せて欲しい」とお願いしたら物は殿下のところにあるという。
「よく覚えていたね」と殿下に言われ、その肖像画を拝見した。それは油彩画だった。とうてい〝似顔絵〟と呼べるものではなかった。似顔絵ならもう少し美化して描く。かといって抽象絵画レベルにまで崩しているものでもない。そこまでやるともうどんな顔か分からなくなるし。
それはまるで美術品のような絵で、正直妖怪濡れ女さんの技量に驚嘆した。それは〝写実絵画〟と言って差し支えなく、わたしが現実世界にいた頃、鏡に映っていたいつも見ている顔そのままで、物憂げでどこか生気に欠けなにを見てなにを考えているのかまるで読み取れない女性の顔の絵だった。
……『絵』なのにまるでわたしの内面を写し取られたみたい…………
これでわたしを気に入ってくれたのか……。思考はここまで。頭は呆然。それっきり途切れてしまった。
(了)
わたし、昼間は『中央情報局長官』になります。 齋藤 龍彦 @TTT-SSS
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます