エグゼキューション
「お前の顔は何か引っかかるんだよ」
「だからって、こんな状況で怯えないとか意味わかんねえんだよ」
僕はあの後、やつに誘導されて一番奥の部屋まで来た。
そして椅子に縛り付けられ、包丁を向けられている。周りには血の跡。そして……
家族の生首が飾られていた――。
「いつだって俺はお前のことを殺せる。今だって殺してやりてえよ」
「じゃあなんですぐ殺さない?」
「お前なら見破ってくれるかもしれないと思った。俺の正体を」
正体? どういうこと? まあ、なんか引っかかるところがあるってことは、正体を見破るのは可能なんだろうけどよ。
「正体を見破ったら解放してくれるのか?」
「いや、そういうことじゃない」
「……どういうことだよ」
こいつの言動は意味分からない。何がしたいのか分からなすぎる。
「あと一分以内に答えを言え。さもなければこれになるだろう」
彼は僕の兄貴の生首を突き出してきた。でも僕は動じなかった。なぜかって?この部屋に入った時からずっと視界に入っているからだ。そんなんだけで動じなくなっている自分が少し怖くなってくるが、覚悟を付けてきたからだろうと自分に思い込ませた。
一分後
「さあ答えを言ってみろ」
僕は一か八か言ってみることにした。
「あんた、僕の……弟だろ」
僕の家族は母、父、兄、姉、僕、妹、弟、の……七人だ。
最初に言ったとおりにね。
「ふっふっ、よくぞ分かったな。俺はお前の弟だ。流石兄貴だな」
「で、解放してくれるか?」
「そんなんで開放しない。俺の正体を見破ったところで俺に何も特がないだろ。俺になんか言うことないのか?」
「弟、見捨ててしまったことに深く謝罪をお詫び申し上げる。誠に申し訳ございませんでした。だからと言ってこんなことをするのはダメだと思うぞ、弟。あと、解放してくれますでしょうか?」
「は?」
最後の二言がいらなかったようだ。
「お前が謝ったって俺には何も特ねえだろ。全部お前のエゴだろ」
最初の一言もいらなかった。
「俺は一歳の時に、家族のお前らが置いて言ったせいでこんな目に合ってるんだ。そんな謝罪で何にも変わりやしない。お前らは俺が離れて行って迷子になったとかいうんだろ。そんなの嘘じゃねえかよ」
僕はそれを聞いていることしかできなかった。目の前の包丁が近づいてくる時までは。
「何してるんだよ」
「お前を殺そうとしている」
「やめてくれ。じゃああんたは何を求めていた?」
「さあ。一緒にもう一度暮らせるようにしてくれたりとかすればよかったんじゃないか?」
「じゃあ一緒に暮らすか?」
「マジか?」
「マジ」
僕は提案した。こんなことしてるやつとは暮らしたくないが、まあ、生きるための道だ。
「よかった。こんなに怒ってごめんな。今思えば謝罪もお前が一番誠意がこもってたし、一緒に暮らしていけるならいいさ。殺しはしない」
「ありがとう、弟」
「そういえば兄貴、今日来てもらったのにはほかにも理由がある」
なんか嫌な予感がする。あんなに態度一瞬で変わったし、逃げる準備はしておこう。
「兄貴の周りには悪霊がいるから、退治してやるよ」
良かった、もう大丈夫だろう。そう思ったのが駄目だったみたいだ。
弟は包丁を僕の周りで振り始めた。そして……
「兄貴、終わったよ。……ちょっと待って、後ろにもう一体いた。」
僕の後ろにいる悪霊を退散させるふりをして、僕の首を切った――。
「兄貴、一緒に暮らすわけねえだろ。この馬鹿。……まあ、聞こえてないようだけど」
僕は最後の力を振り絞って聞いていた。
だけど時が来たようだ。僕はそこで死んだ。
僕はここまでのことを
***
「兄貴のスマホの連絡先、色々あるなあ。こいつに決めた」
『森の中にある板。失踪。自分の意思じゃない。』
「さてと、次の客を待ちますか。次に殺されるのはだーれだ?」
行方不明の板の中(旧) 塔架 絵富 @238f_peng
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