ヒトは怪奇に直面した時、しばしば本当の自分を曝け出す場面があります。
大抵は醜い部分や、自分の隠していた部分が出るものかと思うのですが、今回の物語は少し毛色が異なります。
怪異に直面し、いざ自分が死の危険に直面したその時に、大切なものに気づく。
そんなこともあるのだなと考えさせられました。
怖い話に出てくる怪異は白か黒かで言えば黒寄りのものが多い(そのほうが成立しやすい)のですが、本作に出てくるモノはニュートラルな立場から自分の心を試す存在であるように感じました。
試される勇気のある方。試される結果を受け入れる胆力のある方。
この深みを是非とも堪能していただきたいです♪
僕は物語の導入ってすごく大事だと思います。
どんなに大切な事も、どんなに素晴らしい事も、どんなに聞いて欲しい事も、物語であるならば、読者をまず「没入」させなければ読んでもらえません。物語ではそこがとても大事なのだと思います。
もちろん「没入」後は、飽きさせず、さらに面白さを深化させ、こちらの予測や思惑を上回る必要があります。良作とはそういうモノだと思います。
そこで、この物語は僕を一気に引き込み、そして興味を膨らませ、気がつけばあっという間に読み終わっていました。それはとても凄い事だと思います。
自主企画参加作品としてお題の消化も完璧で、物語の世界観も満点だと思います。作者様の筆力、その構成力、そしてオリジナリティに僕は脱帽です。
この素晴らしい物語をお勧めさせて下さい。
きっと心に素敵な何かが残ると思います。僕の感じた暖かいものを皆様にも。
宜しくお願い致します( ;∀;)