第3話 ばーちゃんち

みーんみんみんみんみん


去年の夏。ばーちゃんがなくなった。

ばーちゃんは優しくて穏やかで、私は大好きだった。

昔ながらのガラス戸を開ける

今日はばーちゃんちに泊まりに来た。

ばーちゃんがいなくなってから、そのままにされた家に夏休み、私は必ず掃除しに泊まりに来る。

ばーちゃん。私高校生になったよ。

戸を開けると家に光が入る。

眩しい太陽が部屋を照らす。

片付けをしたら、お墓参りにいかなきゃ。

そう。今日はばーちゃんの命日だ。

ある程度ホコリを取って、廊下を雑巾がけした。お団子と、お茶と、あとばーちゃんの大好物のきんぴらごぼうをもって私はお墓に出かけた。

日差しが痛いくらいにさんさんで、お墓にかけた水もすぐ乾く。

かぁかぁ

カラスたちが集まってきた。きっとお供え物を狙ってるのだろう。

「カラスはね、ああも黒くて怖いけど、実は賢いから仏様達の使いなんね。だから、お供え物を見てんのよ。もってかないと使い主に怒られちゃうから」


なんて、おばーちゃんはいってたなぁ。

「からす、ちゃんとおばーちゃんにきんぴらごぼう届けてね。これ私作ったやつだから」

こっちを見つめるカラスに言伝をして、私はお墓を後にした。


荷物を片付けて、夕ご飯の準備をしていた。

コロン。

上から何か落ちた音がした。

床を探してみると、透き通った水のような色をしたとても綺麗な石が落ちていた。

「きれい」

ネズミかなにかいるのだろうか?

私はそれをポケットに入れた。


次の日。ばーちゃんちの近くにある神社にお参りしに行った。

子どもの頃はよくここで集まって遊んでいた。

ここで遊ぶと不思議と誰も怪我しなかったものだから、近所の人達はきっと子ども好きの神様がいるんだと噂していた。

少し色あせた鳥居をくぐり辺りを見回す。

足元になにかさわさやした感触があった。

「にゃあ」

真っ黒な猫だった。

人懐こいのか、私に何度もすり寄ってきた。

「かわいい」

頭を撫でようとした瞬間、さっと逃げた。

私はどうしても撫でたくて黒猫を追いかけた。


「あれ?いない」

追いかけてるうちに見失った。

ふと我に返った。神社の祠の裏側にきたようだ。

「ん?」

目の前にはぽっかりと大きな洞窟があった。

(あれ?こんなところあったっけ?)

と、疑問に思ったが。子供心の好奇心が騒いだ。この先に何かあるのかなと。

ドキドキしながら洞窟に入る。

「あ!!!!」

洞窟の中は大きな穴になっていた。

私は足を滑らせた。

そのまま穴の中へ落ちていった。


「い、たぁ」

どれくらい落ちたのか、でも怪我はなかった。

光が見えた。目の前に洞窟の出口があった。

もしや上と繋がっているのだろうか。


そっと外を見る。

そこは、知らない景色だった。


色んな草花が咲き誇り、美しい蝶が飛び遊んでいる。

美しさから一瞬ここは天国かと思った。

「うわ!」

ビックリして目が点になった。

そこには女の子が1人。お花集めをしていた。

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短い夏の物語たち 齋藤輪廻 @rene3132232

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