第2話 青空の水遊び

「なーんで俺が!!掃除しなきゃなんねーんだァー!!」

そう。高校初めての夏休み。

高校生ってのは自由!!

海だって川だって!どこにだって行ける!!

予定はぎっしり詰めて、宿題は、、まぁ、最後の方に終わらせて!

エンジョイしてやるぞぉ!!

って思った夏休み1日目。

昨日の終業式終わりに担任に呼び出され、なぜかプール掃除を頼まれた。


え?俺だけ?誰も来ないんだけど。

1人寂しくプール掃除かよー!!!

項垂れるようにプールにねそべる。

空が青く澄んでいた。

まさに青春日和なのに。


「もうこーなったらピッカピカにしてやるよー!!」

と意気込んだ瞬間。

全身水浸しになった。誰かが水をかけたみたいだ。

「ぎゃはははははは!!かかった!かかったぁ!!」


俺に水をかけたのは、幼なじみのゆうすけだった。

「おい!なにしてくれてんじゃ!!俺着替えもってきてねーんだぞ!?」

「パンツで帰りゃいいじゃん」

「補導されるっての!!」

「まぁそんな怒んなって」

ゆうすけは、俺の大親友。

というより、腐れ縁友達。

なんやかんやで気付くと一緒にいる。

「今日だいせんがさーお前1人だけプール掃除可哀想だから手伝ってやれって」

だいせんは、だいすけ先生。俺たちの担任で、俺にプール掃除をお願いした張本人だ。

「最初からよんでくれよォてかなんで俺に頼んだんだ?」

「いえば断んなそうだからだって笑」

「おーい?だいせーん?」


ま、ぶっちゃけ。

どこまでも広がるあおい空の下、学校のプール掃除って青春っぽくない?


女の子いないのがなぁぁぁぁ


「早く終わらせよーぜ!」

ゆうすけはにやにやしながらそう言った。

「まーそうだな。」


気合い入れて擦りつつ、途中ホースで水掛け合いながらゴシゴシと綺麗にする。

真夏の氷も瞬殺で溶けそうな暑さだったが、水掛のおかげか結構涼めた。


「そーろそろいいかー?」


「や!終わったー?」




え。



「さやかー!なつかー!まってました!」

可愛い子がおる。しかも2人も。

「ど、、、どど?どゆこと?」

「あーなんかプール掃除するって言ったら差し入れしたいって来てくれた」

(ナイスぅぅぅぅ)

心でゆうすけに拍手を送った。

「アイスさー!氷のやつだけどいい?」

「いや!!ぜんっぜんいい!!いい!!」

「ふふっすごい嬉しそう〜そんなに食べたかったのー?」

「はい!!それはもうすごく!!」

さやかちゃんは黒髪ロングで、細っくて、可愛い子だ。

なつかちゃんはショートボブで、ちっこくて、

元気っ子のように焼けた肌が輝いて可愛い。

まぁ要するに。

女の子っていいね。

あ、でも。さやかちゃん。どタイプです。

4人プールサイドに並んで、溶けそうなアイスをほおばりながら、空を見上げた。

うるさいくらいのセミの声に、あおい空に浮かぶフカフカそうな大きい雲。夏の爽やかな匂い。

全身で夏を感じる。

今しかないこの青春。全身全霊で楽しまなきゃ勿体ない!!

そう!青春といえば!!

友情!!そして??

れん!!あいっ!!!

俺はさやかちゃんに一目惚れした。

暑いひと夏の爽やかに始まった、俺の初恋。


今年の夏は期待で胸が膨らむ。


「どーしよ?着替え持ってきたし私たちも手伝うよー!」

「あ!私もーー!」

サッとリュックからジャージを出した。


数分後ーーーー


皆びしょびしょに。

なつかが洗剤こぼして泡まみれになって、パニックになったゆうすけがホース全開にして水かけまくった。俺たちにもね。


あっわあわのびっしょびしょ。

制服が透けて見える。あ。インナー着てた。

まぁそれもいいねっ!!

「なにじろじろみてんのっ!!」

なつかが俺の頭を引っぱたいた。

「こらこらーあんま見んなよ。」

ゆうすけもニヤニヤしてる!

「こらー!着替えて来るっ!!」

2人は着替えにそそくさといった。

「うわ!もう夕方やん!もうさ、ここ後始末して俺達も帰ろーぜ?あ、俺着替えないやん。」

「俺二つ持ってきたから貸してやんよ」

ゆうすけはスチャッっとリュックからジャージを取り出した

「ありがとー!!神ーー!って先に言ってくれよ意地悪めー!!」



プールの後始末をしたあと着替えて、片付けて、プールの鍵かけて、俺たちは自転車置き場に向かった。

今日はなんやかんや楽しかったなぁー!

俺の初恋もできたし、、







「じゃ!俺たち!こっちから帰るから!!」


ゆうすけが急に、さやかの手を握った。

「え?」

「そゆこと〜またみんなで遊ぼーな!」


さやかは顔が真っ赤になった。

「ん?」

俺はきっと変な顔してただろうな。

手を繋ぐ2人の後ろ姿を眺めた。

脳が追いつかん。

「あれー?知らなかったのー?さやかとゆうすけ、付き合い始めたのよー」


えー。


えー。

、、、、、、。

ゆうすけ今度あったらボッコボコだどん。


俺の初恋は終わった。

儚いな。いや、儚すぎるんだけど。

なつかちゃんが俺の顔を覗く。

「もしや?さやかちゃんにほれた?」

「くっ!!一目惚れの初恋でした!!」


「そっかー残念だね。」





「私は。あおいくんのこと、かっこいいと思うけどなー」




「え?」

「え!あ!今のなし!ごめん!!じゃ!!また学校でねぇーー!!」




なつかは顔を真っ赤にして走り去っていった。

もう夕方だってのに、空はまだ透き通った水面のような色をしていた。

背中がじわっと濡れる感覚がする。

・・・。濡れた服からであろう水が染みてバックからぽたぽたと水滴が落ちていた。



そんなのお構いなしに、大きく息を吸った。





青く澄んだ空の下。

冷たいアイス。

濡れた服。

プール掃除。


きっとこれは大人になっても忘れない。

俺たちの、青い春。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る