おやすみリリー
金柑
一匹目:案内人の長話
おや。おやおや、いらっしゃいませ。
まさかこんな店にお客様がいらっしゃるとは。当店のご利用は初めェてでいらっしゃいますか?
左様ですか、いえ、無理もございません。何せこの世界の片隅も片隅、見つけていただいたのが奇跡にございます。イヌワシのような目ェをお持ちだ。…待ってください帰らないでください、ほメェているのですよ。…お客様?今度はチベットスナギツネのような目ェになっておいでですよ?…………冗談でございます。お客様?お客様ったら!お待ちになって!
—メェ、申し遅れました。
私メェ、この館の「支配人兼案内係かつ看板羊」をしております、「バトラー」と申します。
本名は「四辻」と申しますが読み方的に紛らわしいのでバトラーと名乗っております。この館を営む前は皆様の夢の中で飛び回っておりました。ええ、あれは私メェでございますよ。
「夢羊」という職にございます。
ふむ、立ち話もなんですしこちらへどうぞ。
さあおいでくださいませ、なあに取って食えやしませんよ、貴方が青草からできているのなら話は別ですがねェ。
さて、この館—と申しましても私メェの住まいでございますが。特にご料金の方は頂きません。いつ来ていただいても構いません。
私メェが勝手気ままにお喋り倒すだけにございます。
—メェ?何故夢羊を辞めたか?決まってるじゃあないですか、あれ疲れるんですよ。皆様がお眠りになるまで何回も何回も飛ばなければならないのです。お客様だってガムを噛み続けると顎が疲れますでしょう?味も無くなります。同じでございますよ。おかげであのウサギンボルトにも劣らぬ脚力を手に入れましたよ全く…いえ、こちらの話でございます。
—何はともあれ同じことを続けさせられるのは気が滅ェ入るということです。何より私メェ、こう見えて脚より口を動かす方が得意にございますから。
メェ?前置きが長い?さてそれでは何をお話ししましょうか…ふむ…そうだ、お客様はロバをご存知ですか?「🫏」これです。あの灰色の体にピンクのリボンのついた尻尾が常に取れてそうなあいつです。
それでは私メェの知り合いのロバの話を致しましょう。
—🐏
おやすみリリー 金柑 @regirl0614
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