地獄の罰。
生前の罪の重さで行き先が変わり、様々な苦しみが用意されているのが地獄。
墜ちるとしてもどれも恐ろしいので、なるべく楽なものをと考えてしまうのも人の性でしょう。
主人公はタクシーの運転手。三途の川に架けられた橋を走り、客を向こう岸へ渡すだけの楽な地獄です。
今日一番のお客は女性。とても美人な女性。彼女の口から語られるのは生前の話で…
運転手と乗客。車に乗ればすぐに物語が展開される明快な状況が短編という文章量にピッタリで、冒頭からすんなりと物語の世界へ入ることが出来ました。
岸から岸は決して長い距離ではないのでしょう。長いともっと掘り下げられるが、沈黙の時間も長くなり、短いと身の上話を振り返る余裕すらなく、橋渡りという事務的な作業に没頭してしまうでしょう。ここは地獄です。主人公はただの運転手ではありません。この距離だからこその会話量、雰囲気が絶妙だと思いました。
果たして本当にここは楽な地獄であるのか。
是非、お確かめください。
素晴らしい作品をありがとうございました。