「友への弔い」
数日後、佐山静江は家族に看取られながら亡くなった。
私は娘さんに家族だけの葬儀に招待された。
棺桶のなかで眠っていた彼女は笑っていたが、私に微笑みかけてくれた笑顔とは違っていた。もう、彼女に会えないことを痛感してしまう。
葬儀後、娘さんが私に近寄り頭を下げた。
「今日は、ありがとうございます。こないだはすみませんでした。失礼なことを言ってしまって」
私は頭を横にふる。
「母を救ってくれて、取り戻してくれて。とても感謝しています。」
「ありがとうございました」
とまた頭を下げた。
「母の、苗字が変わっていなかったのは離婚したからなんです。数年前に。」
私はその言葉に納得する。確かに。彼女の名前は私が知る名前だった。
「私はこの出来事はただの不幸なことに過ぎないと思ってました。」
「このためだったんですね。」
私をみて涙を流しながら笑う娘さんは、最高に幸せそうに見えた。
式場を後にし、家に向かう。家には夫が待っていた。
「おかえり。お疲れ様」
その言葉に私は胸が暖かくなる。
今日は友達の佐山静江に弔いの気持ちを込めて。
私は、彼女の分まで生きる。
彼女の意思を受け継ぐものとして。
「友達」 まつりごと @kaku1019
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