彼との出会い

 今日も一日、異空間での開店。時に迷いこの店にたどり着く素敵なお客様方。

ここは「スノーラビリンス」雪の迷宮の中にある店。

国の一角に位置する場所である。

しかしこの店にたどり着く人物はなかなかいない。おかげで僕はこの店で人に会うことがほとんどない。しかし今日は違った。

カランコロンとベルが鳴り店の扉が開かれる。

「ごめんください。」

と一人の青年が入ってくる。僕は店の奥から顔を出し、青年のことを眺める。

青年の身長は高く、顔も整っていていかにも女子のに好かれそうな顔をしている。

しかし、青年の放つオーラは近寄りがたく、

高嶺の花として、遠巻きから眺められているのだろう。

とても近寄りがたい雰囲気と醸し出している。

「誰かいないの?ってかここどこ?」

そう青年は吐きながら店の奥まで足を運ぶ。

さすがに青年の前に姿を現さなければと思い足を踏み出す。

しかし、その場にあった本の山に足を取られ、つまずいてしまう。

「いてて」と体を起こそうとする。

急に手が差し出され、数秒間固まってしまった。

「早く立ってくんない?」

と頭上から冷たい声が降り注ぐ。僕はその手をつかみ態勢を立て直した。

「すみません。御見苦しいところを見せましたね」

そういって青年の目を見ようとする。しかし青年の目線はこちらにはなく、

別の方向を向いていた。

「どうしました?」

青年の目線の先が気になり聞いてみるが返事はない。

数秒くらいか過ぎたくらいに僕が声をかけたことに気が付いたようで、

冷たい声で「何?」と聞き返された。

僕はその冷たい声に驚く。まるで人の体温など有していないような、

触ってしまった瞬間に人が凍ってしまうのではないかというほど冷たい声をしていた。しかし「何?」と聞かれたため、口を開く。

「いや、特に何もないのですが、、、、なにを見ていたのですか?」

青年の目を見て答えるが、やはり青年はほかの方を見ている。

「あぁ。ここはどこか導き出そうとしてんの。俺だって行く場所とこあるし、ここで時間食うことはできないわけ。わかる?」

やっと目を合わせたかと思えば、人を見下すような笑顔を浮かべて彼は答える。

「そ、そうなんですね。それは申し訳ない。しかし、ここに来た以上、君はこの店に呼ばれたということです。何か悩みなどはないのですか?」

僕は恐る恐る聞いてみる。青年は腕を組み悩む様子を見せている。

数分その格好で悩んだ後、きっぱりと「ない」と答える。

「っていうかあんた誰?今更だけど。」

と今更ながらのことに青年は気が付き、当たり前のことを求めてきた。

僕自身人と出会うことがないため、

自己紹介をするということ自体忘れていたのだが、、、

「僕はこのスノーラビリンスの店主です。よろしくお願いします。」

僕は深々とお辞儀をする。

「そうなんだ。で、名前は?」

当然かのように聞いてくる。

「え?」

僕は固まってしまった。名前なんて聞かれたことがないし、そもそも名前などあの日あの時に手放してしまったものだから。

「え?じゃなくて、名前。あるでしょ?俺そっちの方が聞きたかったんだけど。」

彼は心底呆れたように言う。

あたふたする僕に青年は、

「何?名前聞いてるだけなんだけど?」

といらつき混じりに声をかける。

「あ、あの。僕に名前がない場合って、、、、」

「はぁ?」

と驚きを隠せない青年。僕はその声に申し訳なさを抱き、

「すみません」と声をかける。

「まぁいいや。俺の名前は、千花だ。よろしく。」

                                                                                                                                                                ーここから僕らの物語が始まった。


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スノーラビリンス @Mitoka0429

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