花とトンネル【朗読OK】
久永綴和
第1話
夏休みになり暇を持て余していた大学生の篤人(あつと)はある噂を耳にする。
その噂とは車を一時間ほど走らせた場所にあるトンネルで幽霊が出るというものだ。
内容はそこへ入ると事故で亡くなった人たちの魂があちら側へと引き込みに襲い来るというものである。
篤人は特段、こういったものが好きというわけではないが暇つぶしにはもってこいだと言うことで親友の蓮を呼び出し、深夜に噂のトンネルへと車を走らせた。
目的地に到着し、車から降りて徒歩でトンネルへと向かう二人。
随分と昔に出来たもののようで劣化した部分の方が目立つ。それが恐怖心を掻き立たせるのだが二人はそんなことなど気にすることなく、懐中電灯片手に奥へと突き進む。
この付近は噂のせいなのか車の通りがほとんどなく、人の気配はまるでない。
他愛もない会話で気を紛らわせながら長いトンネルを歩く。そして三分ほど歩いたところで篤人はある物を見つける。
このトンネルで亡くなったものたちを弔うための花だ。これは噂を裏付けるもので篤人は軽率に来るべきではなかったかもしれないと思ったところ蓮はそれに気づかず、その花を踏みつけてしまう。
しかもズカズカとそのまま奥へ奥へと突き進む。まるで何かに取り憑かれたかのように。
篤人は踏まれて潰れてしまった花を綺麗に片付けて一礼し、念のためにと持って来ていた花をお供えしてもう一度親友の粗相に対して謝罪をする。
直後、トンネル内に悲鳴が鳴り響く。
悲鳴がした方を向くと壁一面に赤い手形が突如として現れた。
怖くなった篤人は来た道を全速力で戻り、トンネルから抜け出した。
蓮はその後、行方不明となり誰もその姿を見ることはなかった。
しかし、あの後トンネルの噂に新しいものが追加された。
それは男性の声で誰かを呼ぶ声がするというもの。篤人はこの話を聞いて以降、そのトンネルに行くことはなかった。
花とトンネル【朗読OK】 久永綴和 @hisanagatoa
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