第6話
「おかえり、さくら。大会どうだった?」
「あぁ、うん。県出場決まったよ」
「ホント? すごいじゃん、よく頑張ったね」
あぁ、うん。頑張ったんだよ、私。
でもね、最近、射形崩し始めてるんだよ。
前は引けば中ったのに、今は、全然中らない。
まるで、的が私から逃げていくみたい。
あの子は──悠希は、「努力してる」って言っていたけど、本当は違う。私が今まで中てた矢は全部、努力じゃなくて、先天的な才能によるものなんだよ。悠希の言う通りなんだよ。
朝練は毎日行ってたけど、それは、一日でも弓を引かないと感覚を忘れるから。絶対に中る引きかたを、毎日毎日体に叩き込んでただけ。でも、その引きかたも最近は分からなくなってきた。
あぁ、あの子みたいに、努力が報われて、その分だけ実力を証明できたらなぁ。
羨望。羨望。羨望。
私はいつだって、上から誰かを見下ろして、その子のことを羨んでいるんだよ。
END
激情 夜海ルネ @yoru_hoshizaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます