不思議な五つの魔法の道具。もたらすのは富や幸福なのか、あるいは——?

 物語の楽しみ方というのは人それぞれ、また物語によっても変わるものかもしれません。

 ファンタジーといえば、皆さんはどんなものを想像するでしょうか? 魔法、竜やユニコーンといった不思議な生き物、それらをめぐる冒険。

 そして、そんな魔法の力を込めて作り出される不思議な道具。

 この物語は、魔法が当たり前のように存在する世界に生きる人やそうでない者たちのお話です。彼らは時に人のように悩み、人のように愛することを知っているけれど、どこかで決定的に違う。

 その違いはある人からは残酷にも見え、けれど何よりも深い愛を紡ぎ出すこともある。

 夜の魔術師の妖しく不穏な、けれど真っ直ぐな想いや、不穏な芸術の業により、人の世界からはみ出してしまっているように見える演奏家、そして時を司る魔術師を含めた世界の不思議なありようなど。

 それらを描き出す美しい文章にうっとりしつつ、何度も繰り返して読み耽り、いつまでもその世界に浸っていたいと感じさせてくれる物語でした。