第117話 苦難を乗り越え、水と月は最強へ……このまま続くと信じていた……

ーミナモ目線ー


 化け物との戦いから3カ月の月日が経過した。私と志木は『帝』が2人掛かりでも倒し切れなかった化け物を倒した事により、『帝候補』の称号を手にしていた。


 私は『泡沫うたかた』、志木は『月鬼げっき』。それぞれの二つ名を授かった。


 私としては、せっかく二つ名をもらえるのならもっとカッコいいのがほしかった……。


 『アクア・ホーリーナイト』、『クイーン・アクア』、『ブルー・エンペラー』、『スターアクア』、『ホリー・ナイトアクア』、『アクア・ジャスティス』みたいなカッコいい二つ名が良かった。


志木

「……ミナモ……。まさかとは思うけど……まだ二つ名が気に入らないとか子供のような事を思っているのかい?」


ミナモ

「だって気に入らないんだもん」


志木

「……本来は『水鬼すいき』になる予定だったのを君が『気に入らない』と言ったから私が考え妥当な二つ名にしたんじゃないか……。私が考えた『泡沫うたかた』というのは気に入らないのかい?」


ミナモ

「むぅ……そうじゃないんだけど……」


志木

「『泡沫』。私はとても綺麗で素敵だと思うけどね」


ミナモ

「むぅ……まぁ、そうかもしれないけど……。私としてはもっとカッコいいのが良かった……」


志木

「……そういえば『泡沫』という言葉には、水面にできる泡の他にも意味があるのを知っているかい?」


ミナモ

「確か、消えやすく儚いという意味があったね」


志木

「君が戦う相手は君の力ですぐさま倒され、悪人の野望は儚く消え去る……。そういう意味が込められていると考えたら少しはカッコいいと思えるんじゃないかい?」


ミナモ

「何それっ!! カッコイイッ!!」


志木

「……君って人は……本当に単純だね……。さすが残念美少女だよ……」


 私と志木はあの出来事からお互いに強くなろうと誓い、修業をさらに積み重ね、強くなっていった。


 学生でありながら戦闘員と同等以上の任務を行う事も増えてきた。


「そろそろ目的地に着くぞ。お前等、気を抜くんじゃねぇぞ」


 任務先にまで連れて来てくれた龍先生が私達に言う。


志木

「今回の任務は能力犯罪組織の壊滅とメンバーの確保でしたね」


「ああ。確保が無理だから殺しても構わねぇって上から言われている。能力犯罪組織といっても人数は15人から18人だが……どうも厄介な奴がいるらしい……」


ミナモ

「厄介な奴?」


「ああ。『ベェイニィ・ロッテンフルーツ』がいるのが調査班が確認している」


志木

「『ベェイニィ・ロッテンフルーツ』……。確か、北米で有名な連続殺人鬼でしたね……」


ミナモ

「誰? その人?」


志木

「北米を中心に殺人を繰り返す女だよ。夜に現れ、人を殺す。彼女は襲撃する場所を問わず、民間家庭、介護施設、病院、ホテルなど様々な場所で殺す。彼女の特徴としてはかならず1人は殺さず、自分の姿をしっかり見せつける」


ミナモ

「なんでそんな事をするの? 普通、自分の姿を見た者は生かしておいたらマズイんじゃない?」


志木

「さぁね。私は彼女じゃないからどうしてそんな事をするのかは知らない。おそらく、絶対に捕まらない自信でもあんじゃないかい?」


「俺もクソみたいな奴の考えは分からねぇ。いろんな組織が奴を追いかけているが、未だに捕まえられねぇでいる」


志木

「彼女の見た目は赤いロングコートに真っ赤な天狗の面をつけている。使用する武器は基本的には刃物が多いとされている。能力はまだ判明していない」


ミナモ

「へぇ……」


「そろそろ目的地だ。それで作戦の方だが……」


ミナモ

「私と志木で突撃。その後、私が建物の周囲に水の壁を作り出して敵を逃さないようにする。龍先生はもしも水の壁から出てきた奴がいたらその人達の対処だったよね」


 私達は街外れの廃ホテルに到着した。私は般若の面を志木は銀色の鬼の面をそれぞれつける。


「それじゃ……作戦開始だっ!!」


ミナモ

「『水壁・球状牢すいへき・きゅうじょうろう』っ!!」


 龍先生の合図とともに私と志木は廃ホテルに入り込むっ!! そして周囲を半球体の水の壁で包み込むっ!! 


敵1

「な、なんだっ!?」


敵2

「て、敵襲かっ!?」


敵3

「ま、まさかっ!? 『国の盾』に俺達の居場所がバレたのかっ!? くっそうっ!! 即戦力になる奴を仲間に加えてっ!! 俺達の悪名を広げて回ろうって時にぃっ!!」


ミナモ

「どうもっ!! 『水月コンビ』ですっ!!」


志木

「ミナモ、これから叩きのめす相手に自己紹介しても意味はないと思うよ」


敵4

「うっほぉっ!! スタイル抜群のええ女やないのっ!! くんくんくん……匂いだけで分かるっ!! あの女っ!! 絶対に美少女やっ!! 今っ!! おじさんが抱きしめてやるぞおおおおぉぉぉぉっ!!」


敵5

「ダメだっ!! 暇次郎ひまじろうっ!! 行くんじゃあないっ!!」


敵4

「抱きしめてチュッチュッしてやるぞおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」


 敵の1人が両腕を広げて私に襲いかかってきたっ!!


ミナモ

「ふんっ!!」


 私は躊躇うためらう事なく、その男の股間を蹴り上げるっ!!


『グチャッ』


敵4

「ほおぉんぎゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」


敵5

「暇次郎おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?」


 私に股間を蹴り上げられ、飛び上がった男の胸倉を志木が掴んだ。


志木

「すまないね、変態くん。君のような人はミナモに近付かないでもらいたいんだ。ミナモの教育に悪いからねっ!!」


 志木はその男の腹を殴って奥の壁まで吹っ飛ばすっ!! 


敵4

「ぐびぃぎゃっ!?!?」


敵5

「ひ、暇次郎おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?」


敵6

「女好きだがそれなりに強い暇次郎さんがやられたぞっ!?」


敵7

「ウッソだろうっ!? 女好きの変態だけどそれなりに強い暇次郎さんがっ!?」


敵8

「マァジィかよっ!? あの女湯覗きの常習犯の暇次郎さんがっ!?」


志木

「さぁ、ミナモ。さっさと片付けてしまおう」


 志木は使い魔のガマガエルから小太刀を出す。


ミナモ

「そうだねっ!! 『水獣・狼牙軍すいじゅう・ろうがぐん』っ!!」


志木

「『飛剣・五月雨三日月ひけん・さみだれみかづき』っ!!」


敵達

「「「「「「「「「「ギイイィィィヤァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッ!?!?」」」」」」」」」」


 私の作り出した水の狼の群れと志木の複数の流動力の斬撃が敵に襲いかかり、薙ぎ倒していくっ!!


ベェイニィ・ロッテンフルーツ

「なんなの? アタシ以外みんなやられちゃった感じ? ダッサイなぁ……。こんな感じじゃ悪名を轟かせるなんてできるわけないじゃん」


 赤いコートに天狗のお面をつけた女性が部屋の奥から出てきた。あの人が『ベェイニィ』とかいう人か。私と志木の攻撃を避けたのか。


志木

「君が『ベェイニィ・ロッテンフルーツ』でいいのかな? 悪いが捕らえて、連行させてもらうよ。言っておくが抵抗しない方がいい。君程度が私達に勝てるわけがないからね」


ベェイニィ・ロッテンフルーツ

「あんな雑魚共を倒したくらいで調子に乗るのはどうかとアタシは思うけどね。アタシは倒れている奴等とは違うからね」


志木

「まったく、これだから強気の奴は困るよ。自分と相手の力量すら理解できていないのだから」


 私は赤い奴の背後に回り込みながら水の剣を作り出し、背後から切り掛かるっ!! 奴は私の攻撃に気が付き、懐から包丁を取り出し防ぐっ!!


ベェイニィ・ロッテンフルーツ

「あっぶなっ!! けどっ!! 残念だったね。今ので倒せなかったのはアンタにとっては……」


ミナモ

「いや、貴女はなんも分かっていないね」


ベェイニィ・ロッテンフルーツ

「はぁ?」


ミナモ

「私はおとり


志木

「本命は私だよ」


 志木の回し蹴りが彼女の首に炸裂して彼女は倒れて気を失った。


ミナモ

「首に回し蹴りって……相変わらず容赦ないね」


志木

「敵に手加減はしないものさ。それが誰であってもね」


 敵を全員捕らえ、連行して任務を達成した。


志木

「今回の任務は呆気なかったね……。もう少し歯応えがあると思ったのだがね……」


ミナモ

「そりゃそうだよ。だって私達『水月コンビ』は最強だからね」


志木

「ふっ……。そうだね。私達は最強だったね……。改めてこれからもよろしく頼むよ」


ミナモ

「もちろん」


 こんな関係が永遠に続いていく。私はそう信じて疑わなかった。


ーミナモ目線終了ー

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碧き春は想い出とともに ~泡沫の鬼神は過ぎ去りし冬の夢を見るのか?~ 白桜 @tetuya3

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