人類終焉対策委員会

ちびまるフォイ

世界終焉を人の手で

「地球の有識者のみなさん。

 今日は世界終焉対策委員会にお越しくださりありがとうございます」


「それで、ここで一体何を話すんだ?」


「世界終焉を回避する方法です」


司会者の後ろのプロジェクターに人類のこれまでの成果が映し出された。


「我々、人間という知的生命体は宇宙でもめずらしい。

 仮になんらかのトラブルで世界終演となっても

 我々の種だけはけして絶やしてはなりません」


「それでどうするんだ?」


「ここでは、そういった世界終焉のシナリオを予想し

 それに対する打ち手を考えていきましょう」


「なるほど。それでこの有識者たちが集められたというわけか」


出席していた戦争評論家が手を上げた。


「やはり人類が終焉するとなれば核戦争だろう」


「たしかに……」


これには出席していたメンバーもうなづいた。


「いつ全世界の核戦争が起きるやもしれない。

 それが起きた後も人類を保護する方法を探すべきだ」


「地下の核シェルターを作りましょう!」


「ああそうしよう。人類を可能性を絶やしてはダメだ!」


次に、動物学者が手をあげた。


「待ってください。核シェルターだけでは不十分です」


「なんだって?」


「放射線が地表から消えるのにどれくらいかかると思っているんです?

 その間、地下の閉鎖されたシェルター生活を続けさせるには限界があります」


「十分な食料を用意すればいいではないか」


「問題はストレスです。

 我々は残念ながら地下で暮らし続けるようにはできてない」


「なるほど……。たしに何十年も地下生活というのは現実的ではないな」



「地下に大都市を作りましょう!!!」


「ええ!?」


有識者である世界でも有名な建築家がアイデアを出した。


「太陽も人工太陽を作るんです。

 そうすれば擬似的に地下でも地表と同じ暮らしができるでしょう?」


「し、しかし……そうなると一体どれほどの費用が……」


「出しましょう、その費用」


今度は世界で有数の大富豪が声をあげた。


「ふぉっふぉっふぉ。人工太陽、おもしろそうじゃないですか。

 私はお金が余り過ぎて、最近じゃお尻を吹くのにも使ってます」


「これで費用面も完璧だ! 核戦争が起きても人類が生き残る地下都市ができるぞ!」



「あのう、ひとことよろしいでしょうか」


今度は植物学者が手をあげた。


「人類が終焉する可能性はなにも戦争だけではありません」


「というと?」


「むしろ、疫病のほうがより身近でリアリティのある終焉になるでしょう」


「……え」


「我々人間はこれまで様々な遺伝子組換えをやっていきました。

 そして、それらがどういった疫病を作り出してしまうのか。

 我々はまだその可能性を考えきれていないのです」


「つまり……どこにどう影響するかわからないけど、

 遺伝子組換えはめっちゃ進めてるということか?」


「そうです。近い将来、人類が解決できない疫病がでる可能性もあります」


「ぐっ……そうなったら地下都市を作っても意味ないじゃないか……!」


「ですから、今からでも遅くない。

 疫病対策の薬を作りましょう!!」


「それだけでは不十分だ!

 いざというときに隔離できるよう、世界の大陸プレートを分断できる装置を作ろう!」


「人間が死滅しないようにクローン技術も導入しよう!!」


科学者たちは色めきたち、人類存続へと力を尽くしてくれることとなった。

けれど、そこに宇宙研究者が水を差す。


「君たち……本当に狭い視野でしか対策ができていない」


「なんだって? 我々はあらゆる可能性を考えているじゃないか」


「いいや不十分だ。なぜ君たちは地球という点にだけ縛られているのだ?」


「へ?」


「地球に隕石が落ちてきたら、疫病だの地下都市だの言う前に

 もっと直接的に人類は絶滅してしまうじゃないか」


「た、たしかに……」



「それなら、この作戦はどうでしょうか」


会議に参加していた宇宙飛行士が資料を見せた。


「地球全体を人工衛星で360度ぐるりと囲むんです」


「それで隕石の接近を見つけようってのか?

 見つけたところでどうしようもないから……」


「いいえ。そうではなく人工衛星をぶつけるんです」


「は?」


「隕石がもし近づいてきたら人工衛星をぶつけてドカン。

 隕石を細かくすることで地球へのダメージを最小限にするんです!」


「し、しかし……。人工衛星ひとつ作るのにいくらかかると……」


「なに言ってるんですか!!

 ここでケチって人類が滅亡するほうがいいんですか!?」


「たしかにそうだ。我々はおろかな一般人を守る義務がある!」


「隕石が落ちてきても大丈夫なように宇宙に壁を作ろう!!」


「まだ不十分だ! 宇宙が爆発する可能性も考えられる!!」

「「 対策しなくては!! 」」


有識者たちは寝る間も惜しんで人類終焉のシナリオを考えては、

それに対する打ち手を実行してあらゆる可能性をつぶしつづけた。


そして、地下都市は完成し、大陸プレートは分断され、地球の周囲にはバリアが張られた。



「これで完璧だ。我々のおかげで人類終焉は完全に防がれた! ……ん?」


完成に満足していた有識者たちだったが、

足元から感じたことのない大きな揺れを感じた。



その後、

地球周囲のバリアにより熱された太陽光で海が干上がり。

都市の建設でめちゃくちゃになった地下。

強引にねじまげられた大陸プレートがついに限界を迎えた。



人類がすべて全滅する大地震はこうして引き起こされた。

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