妖華町 1出会いはゴンと衝撃的に


どこまでも青い空白い雲!

……本当は今曇り空で全然青くなくて、灰色の空だけど。

新しい町の景色!

「お嬢ちゃん今トンネルの中だから窓開けないでね。虫とか入ってきちゃうよ。いやそれよりもなんで開けようとしたんだい。なにか思い悩んでいることがあるのかい?もうすぐ最終駅に着くからそこで話をしよう。おじさんに話をしなさい、なんでも力になるから!」

駅の乗組員さんにとんでもない勘違いをされたし、トンネルの中真っ暗で外見えないけど。(※窓をあけて景色を見ようとしただけ)

……ふふふふふふ。私はいつもこうだ。やることなすことついていない。さっき外の景色を見ようとしただけなのに窓から飛び出されると勘違いされたし、風景を確認しようとした瞬間にトンネルに入って顔に汚れがつくし。

あああ、私は世界一不幸な女子高生よ!

ふふふふふふ……。


「えっとお嬢ちゃん。どうしたのかな?急にぶつぶつ言い出して。き、聞こえているかな。おーい」

困惑する電車の乗組員さん。

「ママ、あのお姉ちゃんどうしたの?」

「坊やあのお姉ちゃんの姿をよく見ておくのよ。ぶつぶつ言うことで自分の中にある悪いものを吐き出しているのよ」

「そうなんだ、すごいね」

「いいえ、すごくないわ。これだけは覚えておいて。絶対に他の人がいるところでしてはダメよ」

「え、なんで?」

「いいから覚えておいて。絶対にしてはいけないということを……」

過去の失敗を繰り返さないように、同じことをしている少女を手本として子どもに教える母親。

「な、なんということじゃ!あの女の子に危険なものがついておるぞ。皆のもの、念仏を唱えよ!」

ぶつぶつ言っている彼女と同じように突然小さい声でゴニョゴニョと言うご老人の集団。

電車内はまさに混沌と化した。

女子高生のぶつぶつ声から始まった理由の分からない空気を、誰も変えることができないまま電車は終着駅へと着くのであった。

(※ちなみに混沌は英語でchaosと書きます)




「ヨウカ駅、ヨウカ駅に到着です。降りる時は荷物を忘れないよう…」

アナウンスの声を聞いて、私は我に返る。

え、もう目的地に着いたの?

一体どれぐらいあのモードになっていたのだろう。いや今はそんなことどうでもいい。急いで降りないと!

確かヨウカ駅はどこかの線の途中駅。初めて来たんだ。乗り過ごして戻ってくるなんて……。

面倒くさくて嫌!

「お客様に連絡します。ただ今市内全域に落チュン(※らくちゃんと読む)警報が出ております。解除されるまで……」

こんなところからつますぐわけにはいかない。

前を向くのよ、あたし!

今こそ変わる時よ、あたし!

さあ、その一歩目を踏み出す時よ……。

そう思い私は駅のホームへと降りた。

その時。


「チューン……」



ゴンッッッ!



頭にボーリングが落ちてきてあたったのではないかという衝撃と、低く鈍い音が辺りに響きわたる。

ああ、どこまでついてないんだろ私……。

世界はちょっとずつ暗くなり、やがて暗闇に覆われた。




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桜の町の流れ星ヒカリさん 素良碧 @adgjm1

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